2026年7月28日、熊本県嘉島町のイオンモール熊本で発生した大規模爆発をめぐり、死亡したテナント従業員2人が、地震後にいったん屋外へ避難した後、売上金を金庫へ移すため、勤務先の会社から館内へ戻るよう指示されていたことが分かりました。
2人が勤務していた雑貨店の運営会社「ハビタ」の幹部が8月2日、報道陣の取材に明らかにしました。
爆発では2人を含む計7人が死亡しています。施設側が避難後の再入館を認めない方針を示していたなか、なぜ従業員を館内へ戻す指示が出されたのか。会社側の判断と安全管理の経緯が重大な焦点となっています。
「店の指示なので」引き留められても館内へ
亡くなった1人は、熊本市南区の大竹玖瑠美さん(22)です。
親族によると、大竹さんらは地震発生後、来店客を誘導した後、館外へ避難しました。その後、上司から「店舗の売上金を金庫に入れてほしい」と連絡があり、同僚女性とともに2階の店舗へ戻ったということです。
避難先の駐車場では、大竹さんが偶然会ったおばやいとこに「店内に戻る」と伝えていました。親族が引き留めたものの、大竹さんは「店の指示なので」と話し、同僚女性と館内へ向かったとされています。
その後間もなく、モール内で大規模な爆発が発生しました。
2人は連絡が取れなくなり、翌29日、勤務先店舗の前で遺体で発見されました。
イオン側は「避難後は戻らない」と説明
イオン側は29日の記者会見で、二次被害を防ぐため、屋外へ避難した従業員は館内へ戻らないことを社内ルールとしていたと説明しています。
テナント従業員についても、同様の対応を取るよう求めていたということです。
一方、ハビタ側は、売上金を金庫へ移すため、2人に館内へ戻るよう指示したことを認めています。
施設全体の避難方針と、テナント運営会社の業務指示が一致していなかった可能性があり、イオン側の方針が各店舗へどのように共有されていたのかも確認が必要です。
「責任感が強い子だった」
大竹さんの通夜は8月2日、熊本市内で営まれました。
親族によると、大竹さんは高校時代にバレーボール部で競技に打ち込み、明るく誰とでも親しくなれる性格だったといいます。
3人きょうだいの長女で、3年前に父親を亡くしてからは母親を支えていました。勤務先の雑貨店の仕事も気に入っており、地震のおよそ20日前に別の店舗からイオンモール熊本へ異動したばかりだったということです。
親族は「昔から責任感が強い子だったから、指示に従ったのだと思う」と話しました。
会社側から謝罪を受けた母親は、「娘は帰ってこないんですよ」と涙ながらに訴えたとされています。
また、大竹さんとともに館内へ戻った同僚女性の葬儀も2日、熊本市南区で営まれました。熊本日日新聞によると、祭壇には女性が好きだったヒマワリが飾られていました。
会社の判断で確認すべき4つの点
現段階で、会社側の法的責任を断定することはできません。
今後、特に確認が必要なのは次の4点です。
- 誰が、どのような手段で館内へ戻るよう指示したのか
- 指示前に建物や館内の安全確認が行われていたのか
- イオン側の「避難後は戻らない」という方針を把握していたのか
- 従業員が業務上の指示を断れる状況だったのか
最大震度7の地震後で、余震や建物損傷、火災などの危険が残るなか、売上金を保全する業務を優先する必要があったのかが問われています。
爆発を具体的に予測できたかどうかだけでなく、大規模災害の直後に従業員を再び建物内へ向かわせた判断そのものについて、会社側には詳細な説明が求められます。
編集部所感 命と売上金、優先すべきものは何だったのか
ここからは、確認された事実を踏まえた編集部の見解です。
売上金や商品に損失が生じた場合、保険や補償、事業再建の方法を検討することはできます。しかし、失われた命を取り戻すことはできません。
大竹さんは「店の指示なので」と話し、館内へ戻ったとされています。責任感の強い従業員が、上司や会社からの指示を現実に拒否できたのか。その点も含め、指示を出す側の判断が検証される必要があります。
今回問われているのは、爆発を予測できたかだけではありません。
地震直後の危険な状況で、売上金の保全と従業員の安全のどちらを優先したのか。会社側には、判断の経緯を遺族と社会へ具体的に説明する責任があります。
企業には今回の事案を通じて、命の重みとお金の重みを改めて考えてほしい。それが、亡くなった2人と遺族に対して果たすべき最低限の責任ではないでしょうか。
編集部まとめ
避難後は館内へ戻らないという施設側の方針があるなか、2人は売上金を金庫へ移すため、勤務先の指示で館内へ戻ったとされています。
今後は、指示を出した人物と判断根拠、安全確認の有無、従業員が指示を拒否できる状況だったのかが焦点となります。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項:本記事は共同通信、熊本日日新聞の報道内容および会社側の説明を基に構成しています。爆発原因や会社側の法的責任は確定しておらず、安全配慮義務違反などを断定するものではありません。「編集部所感」は事実報道部分と区別した編集部の見解です。
サイト訪問者数

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。