「うまい鰻を腹いっぱい!」を掲げ、全国で急速に店舗を増やしてきた鰻の成瀬。
愛知県豊橋市にも2024年2月10日、「鰻の成瀬 豊橋店」がオープンした。場所は豊橋市駅前大通1丁目61。豊橋駅から徒歩圏に位置する店舗で、現在も公式サイトに掲載されている。
では、全国各地への出店を進めていた鰻の成瀬は、なぜ東三河で豊橋を選んだのだろうか。
運営側から「豊橋を選んだ理由」が詳細に公表されているわけではない。そのため本稿では、同社が公表してきた出店戦略、豊橋店の立地、豊橋市の商圏規模などから、その背景を考察する。
鰻の成瀬が豊橋に出店したのは2024年2月
豊橋店がオープンしたのは2024年2月10日。
出店当時、運営側は豊橋市への初出店について「多くの方に鰻を食べていただきたい」と説明していた。
当時の鰻の成瀬は、ブランド開始から約1年5カ月で約90店舗まで拡大。まさに全国出店を加速させていた時期だった。
つまり豊橋店は、現在の店舗網だけを見て出店された店舗ではない。
「鰻の成瀬が全国の地方都市へ一気に店舗網を広げようとしていた成長期」
に誕生した店舗として見る必要がある。
なぜ豊橋だった? 最大の理由として考えられる「東三河の商圏」
豊橋市だけで約36万人
第一に考えられるのが、豊橋そのものの市場規模だ。
豊橋市の住民基本台帳人口は2026年9月1日時点で36万1,307人、16万7,998世帯。人口減少は続いているものの、単独の自治体として依然大きな人口規模を持っている。
さらに豊橋は、豊川市や田原市などを含む東三河地域の交通・商業の中心の一つでもある。
全国展開を目指す外食チェーンから見れば、名古屋だけに集中するのではなく、
「愛知県東部を押さえる拠点」
として豊橋は候補になりやすい都市だったと考えられる。
「名古屋ではなく豊橋」が全国チェーンには重要だった可能性
全国チェーンの愛知県進出というと、名古屋市を中心に考えがちだ。
しかし全国規模で店舗数を増やす段階になると、名古屋だけでは愛知県全域をカバーできない。
尾張、三河、西三河、東三河と商圏を細分化すれば、東三河最大級の都市である豊橋は無視しにくい。
鰻の成瀬が全国展開を急速に進めていた2024年当時なら、
名古屋圏とは別の商圏として豊橋を押さえる
という判断には一定の合理性があったと考えられる。
理由② 実は「成瀬らしい立地」と少し違う豊橋店
ここが豊橋店を考える上で興味深い。
鰻の成瀬は当時、一般的な飲食店が重視する主要駅前などの一等地ではなく、住宅街を中心に出店していると説明していた。
山本昌弘代表も、うなぎはわざわざ食べに行く「目的食」なので、二等地・三等地でも成立すると説明している。
一等地を避ければ家賃や初期投資を抑えられ、物件取得競争も少なくなる。これが急速な出店を可能にした一因だった。
ところが豊橋店は、
豊橋市駅前大通1丁目61。
駅前大通駅から近く、豊橋駅も徒歩圏という中心市街地型の店舗だ。
しかも公式店舗情報では駐車場なし・19席となっている。
これは「郊外+大型駐車場」で車を呼び込むロードサイド飲食店とは明らかに違う。
理由③ 豊橋駅前でも「超一等地」から少し外した立地だった?
そこで考えられるのが、
「豊橋駅商圏の集客力を使いながら、駅真正面の一等地からは少し外す」
という考え方だ。
店舗は駅前大通にありながら、豊橋駅の改札前に直接店舗を構えるわけではない。
これは「目的食だから多少歩いても来店してもらえる」という鰻の成瀬の考え方とも一定程度整合する。
うなぎを食べようと決めている客なら、駅から数分歩くことへの抵抗は、ファストフードやコンビニほど大きくない。
一方で完全な住宅街に出すよりも、
豊橋駅利用者+中心市街地勤務者+周辺住民
という複数の需要を狙える。
豊橋店は、成瀬の「一等地にこだわらない」という考え方を、地方都市の駅前商圏に合わせた店舗だった可能性がある。
理由④ 「高級料理だったうなぎ」を日常価格へ近づける余地
鰻の成瀬の最大の特徴は、単純な「安いうなぎ店」ではない。
従来のうなぎ専門店で必要だった職人への依存度を下げ、専用設備などによって調理工程を標準化した。
テレビ東京「カンブリア宮殿」でも、一等地を避けた物件取得、少人数運営、職人技術に依存しない調理などによってコストを抑えるモデルが紹介されている。
これによって、
「うなぎ=特別な日に老舗で食べるもの」
だけではなく、
「今日は少し良いものを食べたい」
という需要まで対象を広げた。
豊橋には昔からうなぎ文化があり、専門店も存在する。
だからこそ「うなぎを食べる習慣がない街」に市場を一から作るのではなく、すでに存在する需要に対して価格と提供スピードという別の選択肢を提示することができる。
これも豊橋出店との相性が良かった可能性がある。
理由⑤ テイクアウトとの相性も良かった
成瀬は調理工程の効率化によって、従来20~30分ほどかかっていた提供時間を約10分まで短縮できるとしていた。
その結果、テイクアウトにも対応しやすくなった。
豊橋店は19席と比較的小規模だ。
大規模店舗で大量の客席を埋めるのではなく、
店内飲食+持ち帰り
を組み合わせることで売上を作ることができれば、大型物件を確保する必要もなくなる。
これも出店スピードを重視した当時の成瀬のビジネスモデルと一致する。
それでも「豊橋だから成功する」とは限らない
ただし重要なのは、
豊橋に出店した理由と、豊橋で長期間成功できる理由は別
という点だ。
鰻の成瀬は短期間で全国へ店舗網を拡大した。
急拡大できた最大の強みだった「標準化」「低コスト出店」「FC展開」は、出店時には大きな武器になる。
一方、店舗数が増えれば次の段階では、
「一度行ってみたい」
という新店需要から、
「もう一度食べに行きたい」
というリピート需要への転換が必要になる。
特に豊橋のように昔からうなぎ専門店が存在する地域では、価格だけでなく、味、量、立地、接客、老舗への信頼など複数の軸で比較される。
ここからが本当の勝負ともいえる。
「豊橋駅前×うなぎ」は実験的な意味もあったのか
豊橋店を改めて見ると興味深い。
人口約36万人の地方中核都市。 豊橋駅という広域交通拠点。 うなぎを食べる文化が存在する地域。 小規模店舗。 駅徒歩圏。 テイクアウト対応。
これらを組み合わせれば、全国展開を進めていた鰻の成瀬にとって、地方都市での店舗モデルを展開する条件はそろっていたと考えられる。
特に2024年2月という開業時期を考えれば、
「豊橋だけを特別視した」というより、全国に成瀬の店舗網を構築していく過程で、東三河の中核都市・豊橋が有力な空白商圏だった
と見る方が自然だろう。
週刊TAKAPI編集部の考察
鰻の成瀬が豊橋に進出した最大の理由は、一つではないと考える。
編集部では、
①東三河の中核となる人口・商圏規模 ②豊橋駅周辺という広域集客力 ③「うなぎ」という目的来店型商品 ④小規模・少人数でも営業できる成瀬の店舗モデル ⑤愛知県内の店舗網を広げる上での東三河拠点
この5つが重なった結果ではないかとみている。
特に重要なのは「豊橋に人が多いから」という単純な理由だけでは説明できない点だ。
鰻の成瀬そのものが、従来のうなぎ専門店とは異なる仕組みで急成長していた。
職人型から標準化へ。 高価格から手の届きやすい価格へ。 一等地依存から目的来店型へ。
そのビジネスモデルを全国へ広げる過程で、東三河最大の都市である豊橋が選ばれた——。
豊橋店は、鰻の成瀬が最も勢いよく全国展開していた時期を象徴する店舗の一つとして見ることもできそうだ。
一方、外食チェーンは「出店できる場所」と「長期間利益を出せる場所」が必ずしも一致しない。
今後、豊橋店が地域に定着していくのか。
その答えを見るには、オープン時の集客力ではなく、数年後のリピーターをどこまで確保できているかを見る必要がある。
店舗情報
店舗名: 鰻の成瀬 豊橋店
住所: 愛知県豊橋市駅前大通1丁目61
開業日: 2024年2月10日
営業時間: 11:00~14:00/17:00~20:00
座席: 19席
駐車場: なし
※店舗情報は鰻の成瀬公式サイト掲載内容を基にしています。最新情報は公式サイトをご確認ください。
特記事項
本記事の「出店理由」に関する部分は、鰻の成瀬の公式発表、運営会社の出店戦略、豊橋市の人口・商業データなどを基に週刊TAKAPI編集部が独自に考察したものです。運営会社が豊橋出店の個別の意思決定理由を詳細に公表したものではなく、一部に推測を含みます。最新情報は公式発表をご確認ください。
週刊TAKAPI編集部:黒木
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