袴田事件、再審無罪後に残された問い 60年経っても消えない被害者遺族の思い

1966年6月、静岡県清水市、現在の静岡市清水区で起きた一家4人殺害事件は、6月30日で発生から60年を迎えます。

この事件では、みそ製造会社専務だった橋本藤雄さん=当時41歳=と、妻、次女、長男の一家4人が犠牲になりました。

一方で、犯人として死刑判決を受けた袴田巌さんは、長い年月を経て再審で無罪となり、2024年10月に無罪が確定しました。

事件は「袴田事件」として、戦後の刑事司法や再審制度を考える上で、いまも大きな意味を持っています。

ただ、60年という時間の中で忘れてはならないのは、冤罪によって人生を大きく奪われた人がいる一方、事件で命を奪われた被害者と、残された家族もいるということです。

1966年に起きた一家4人殺害事件

事件が起きたのは1966年6月30日未明です。

静岡県清水市の、みそ製造会社専務宅で火災が発生し、橋本藤雄さんとその家族4人が犠牲になりました。

当時19歳だった長女は、親類宅にいたため難を逃れました。

事件後、現場近くにあったみそ工場などは姿を変え、周辺には新しい住宅も建つようになりました。

現場付近に住む高齢の男性は、事件を直接知る世代が少なくなっていると話しています。

60年という時間は、事件の記憶そのものを地域から少しずつ遠ざけています。

袴田巌さんは再審無罪が確定

袴田巌さんは、この事件の犯人として逮捕され、その後、死刑判決を受けました。

しかし、長年にわたり再審を求める活動が続き、2024年には再審で無罪判決が言い渡されました。

検察側が控訴しなかったことで、2024年10月、袴田さんの無罪が確定しました。

この再審無罪は、日本の刑事司法における大きな節目となりました。

死刑が確定した人が、再審で無罪となる重み。
そして、証拠の扱いや捜査のあり方、再審制度の壁。

袴田事件は、いまも司法制度に重い問いを投げかけています。

「誰が本当の犯人か分からない」遺族の複雑な思い

事件で難を逃れた長女は、その後、焼失した自宅を建て直し、長年その場所で暮らしました。

しかし、2014年3月、病気のため67歳で亡くなっています。

長女の息子にあたる男性は、母が家族を奪われた苦しみを抱えながら生きてきたことに思いを寄せています。

男性は、真犯人につながるものがないかと、事件資料を何度も確認した時期もあったといいます。

そのうえで、今となっては誰が本当の犯人なのか分からないと、やり場のない心境を語っています。

再審無罪によって、袴田さんが犯人ではないと法的に確定した一方で、事件で奪われた命の重さや、遺族の時間が戻るわけではありません。

冤罪救済と被害者の記憶は、対立するものではない

袴田事件を考える時、冤罪救済の重要性は避けて通れません。

無実の人が長く死刑囚として扱われた可能性があることは、刑事司法にとって極めて重い問題です。

同時に、事件の被害者がいたこと、そして遺族が長い年月を抱えてきたことも忘れてはならない視点です。

冤罪を正すことと、被害者を悼むことは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。

むしろ、事件の真相が十分に明らかにならないまま時間だけが過ぎていくことこそ、袴田さんにとっても、被害者遺族にとっても、重い現実として残っています。

ミニ解説|袴田事件とは

Q. 袴田事件とは何ですか?

A. 1966年6月、静岡県清水市、現在の静岡市清水区で、みそ製造会社専務宅が放火され、一家4人が犠牲になった事件です。袴田巌さんが犯人として死刑判決を受けましたが、後に再審で無罪となりました。

Q. 袴田巌さんはどうなったのですか?

A. 袴田巌さんは再審で無罪判決を受け、2024年10月に無罪が確定しました。

Q. 事件から何年が経ったのですか?

A. 2026年6月30日で事件発生から60年となります。

Q. 被害者は誰ですか?

A. 事件では、みそ製造会社専務だった橋本藤雄さんと、妻、次女、長男の一家4人が犠牲になりました。当時19歳だった長女は親類宅にいて無事でした。

Q. 今も何が問われているのですか?

A. 再審制度や証拠の扱い、捜査のあり方に加え、事件の被害者をどう記憶し続けるかも問われています。

60年後も残る問い

事件を知る世代は少なくなり、現場周辺の風景も変わりました。

それでも、袴田事件が社会に残した問いは消えていません。

無実の人を罰してはならない。
被害者の命を忘れてはならない。
そして、真実にたどり着けなかった時間の重さを、社会としてどう受け止めるのか。

発生から60年を迎えるいま、袴田事件は「過去の事件」ではなく、刑事司法と被害者支援の両方を考えるための現在進行形のテーマでもあります。

本記事は、事件に関する各社報道およびこれまでの公的情報を基に構成しています。今後、関係者の発言や資料公開などにより、内容が更新される可能性があります。

担当記者:松本|週刊TAKAPI 記者

リアルタイムサイト訪問者数
33