SNSで知り合った相手に性的な画像や動画を送った直後、「家族や学校にばらまく」と脅され、金銭を要求される被害が急増している。
性と脅迫を組み合わせた「セクストーション」と呼ばれる手口だ。支援団体への相談件数はここ数年で急増し、男子中高生を含む未成年の被害も目立つ。被害者は「自分が送ってしまった」と自責し、家族や学校に相談できないまま追い込まれるケースがある。
問題は、単なるSNSトラブルではない。性的画像を使った脅迫、海外の詐欺グループ、電子マネーや暗号資産による金銭要求、AI画像の悪用が重なる、現代型の性被害でありネット犯罪である。
深夜の相談電話 高校生は「人生が終わった」と思い込まされた
支援団体に寄せられた相談例では、高校生の少年が、SNSや言語交換アプリで知り合った「海外の女の子」と親しくなった。相手は趣味や語学の話で距離を縮め、やがて性的な動画を送るよう促した。
少年が応じた直後、相手の態度は変わった。
「この動画を学校の友達に送る」
「家族にばらまく」
「止めたければ金を払え」
少年は、学校生活も家庭生活もすべて終わると思い込み、深夜に相談窓口へ連絡した。相談員は、金銭を払わず、相手をブロックし、証拠を残すよう助言した。数日後、脅迫は止まったという。
こうした相談は一件ではない。性的画像をめぐる恐怖を使い、短時間で金を払わせる手口が、日本の若者に広がっている。
相談件数は3年で急増 2025年度は11月時点で2,200件超
NPO法人ぱっぷすなどの支援団体には、セクストーションに関する相談が急増している。報道によると、ぱっぷすへの相談件数は2022年度に131件、2023年度に528件、2024年度に1,864件、2025年度は11月26日時点で2,200件を超えた。
わずか数年で、相談件数は桁違いに増えた。
被害の特徴として、男性からの相談が多いことも指摘されている。従来、性的画像を使った脅迫は女性が被害に遭うものと見られがちだった。しかし、現在急増している金銭要求型のセクストーションでは、男子中高生や若い男性が標的になるケースが目立つ。
背景には、加害者側の計算がある。性的好奇心を利用して画像や動画を送らせ、その直後に「家族に送る」「学校に知らせる」と脅す。男子生徒は「男なのに被害に遭った」「自分が悪い」と感じ、相談が遅れる。加害者はその沈黙を狙う。
手口は「親密化」から始まる
典型的な流れは、SNSや言語交換アプリ、マッチングアプリ、オンラインゲーム、メッセージアプリでの接触から始まる。
最初の会話は、脅迫ではない。相手は同年代や異性を装い、語学、音楽、ゲーム、恋愛、学校生活などの話題で近づく。「かわいい」「かっこいい」「もっと話したい」といった言葉で警戒心を下げる。
その後、相手は性的な画像や動画の交換を求める。ビデオ通話に誘うこともある。被害者が応じると、画面録画やスクリーンショットを保存され、直後に脅迫が始まる。
「フォロワーに送る」
「学校に送る」
「家族に送る」
「拡散されたくなければ支払え」
支払い方法には、電子マネー、送金アプリ、暗号資産、ギフトカードなどが使われることがある。一度支払っても終わらない。加害者は追加の金銭、追加の画像、別アカウントへの連絡を求め、要求を続ける。
大阪府警や埼玉県警も、こうした性的脅迫の手口について注意を呼びかけている。IPAも過去に、中高生を主な対象として、SNSや不正アプリを使ったセクストーション被害に注意喚起していた。
実際に報じられた被害 男子中高生、小学生にもリスク
セクストーション被害は、単なる仮定ではない。
毎日新聞は、性的画像や動画を送った相手から脅される被害が急増し、2025年度の相談件数が11月時点で2,200件に達したと報じている。相談では男性被害が多く、18歳未満からの相談も目立つ。
宮崎県の報道では、IT子育て支援に関わる専門家が、中学生男子がアプリで知り合った人物に裸の写真を撮影され、金銭を要求された実話をもとに啓発用の絵本を制作した事例が紹介された。小学生や中高生がSNSを使う中で、被害が低年齢化している現実を伝えるための取り組みだった。
海外でも、同様の被害は深刻化している。オーストラリアでは、SNSで「女性」を名乗る人物に性的画像を送った16歳の少年が、その後に金銭を要求される被害に遭った事例が報じられ、子どものSNS利用規制をめぐる議論にもつながった。
日本でも、警察庁はSNSに起因する子どもの性被害が高水準で推移していると公表している。令和7年は、小学生の被害児童数が過去10年で最多となった。セクストーションは、その中でも家庭や学校が把握しづらい被害の一つである。
加害者は「拡散する」と言って恐怖を支配する
セクストーションで加害者が使う武器は、画像だけではない。時間制限と羞恥心である。
「あと10分で送る」
「今すぐ払え」
「ブロックしたら拡散する」
「学校の全員に送る」
こうした言葉で、被害者に考える時間を与えない。被害者は、家族に知られる恐怖、学校で広がる恐怖、友人関係が変わる恐怖に追い込まれる。
ここで金を払ってしまうと、加害者は「払う相手」と見て、さらに要求を重ねる。支払ったことで画像が消える保証はない。むしろ、要求が長引く危険がある。
支援団体が強調する初動は明確だ。
金を払わない。
追加の画像や動画を送らない。
相手との連絡を断つ。
やり取りの証拠を残す。
専門機関に相談する。
加害者と交渉する必要はない。必要なのは、恐怖で動かされる前に、連絡を断ち、外部につなぐことだ。
AI画像悪用で「送っていない人」も標的になる
近年は、AI画像やディープフェイクの悪用も問題になっている。
性的画像を実際に送っていなくても、SNSに掲載された顔写真を使って性的な画像を合成し、「ばらまく」と脅す手口が出ている。これにより、被害は「自分で画像を送った人」だけに限られなくなっている。
学校名、制服、部活動、友人関係、顔写真がSNS上にある場合、加害者はそれらを材料にして信ぴょう性を装う。被害者のフォロワー一覧や家族構成を調べ、「本当に送られるかもしれない」と思わせる。
これは若者だけの問題ではない。社会人も、学生も、保護者も、公開アカウントを持つ人は標的になり得る。
被害者を責めると、相談はさらに遅れる
家庭や学校で最も避けるべき対応は、被害者を責めることだ。
「なぜ送ったのか」
「何をしているんだ」
「自業自得だ」
こうした言葉は、次の被害者を黙らせる。実際に被害が起きた時、子どもは「怒られるから言えない」と考える。男子生徒の場合、「男なのに恥ずかしい」という思い込みが相談を遅らせる。
必要なのは、事前に伝えておくことだ。
性的画像を求められたら送らない。
送ってしまっても、すぐ相談すれば対応できる。
脅されたら払わない。
追加で送らない。
スクリーンショットを残す。
一人で相手に返事をしない。
家庭内では、「困った時は怒る前に一緒に止める」と約束しておくことが重要になる。これは甘やかしではない。被害を早く止めるための現実的な対策である。
学校に必要なのは情報モラルだけではない
学校での教育も変える必要がある。
従来の情報モラル教育では、「個人情報を載せない」「知らない人と会わない」という説明にとどまりがちだった。しかし、セクストーションは、性被害、詐欺、SNSトラブル、AI画像悪用が重なる犯罪である。
中学生、高校生には、具体的な手口を伝える必要がある。
SNSや言語交換アプリで近づいてくる相手が、同年代とは限らない。ビデオ通話は録画されることがある。画像交換を求める相手は、最初から脅迫目的の場合がある。脅されたら、支払わず、追加で送らず、証拠を残して相談する。
特に重要なのは、男子も被害者になると明確に伝えることだ。男子生徒が「これは自分にも起こる」と理解しなければ、注意喚起は届かない。
学校は、道徳や情報の授業だけでなく、保健教育、生活指導、保護者会でもこの問題を扱うべき段階に入っている。
相談先を知っておくことが被害拡大を防ぐ
被害に遭った時の相談先を、事前に知っておくことは重要だ。
NPO法人ぱっぷすは、デジタル性暴力や性的画像の拡散被害に関する相談を受け付けている。電話相談ダイヤルは050-3177-5432で、メール相談も可能としている。
警察に相談する場合は、警察相談専用電話#9110が使える。緊急性がある場合は110番通報になる。18歳未満で保護が必要な場合は児童相談所につながる189、強い不安や死にたい気持ちがある場合は、よりそいホットラインなどの相談窓口もある。
被害者は、完璧に説明できなくてもよい。
「性的画像で脅されている」
「学校や家族に送ると言われた」
「金を払えと言われた」
この3点を伝えれば、相談は始められる。
SNS事業者と行政にも対応が求められる
個人や家庭の注意だけでは限界がある。
SNS事業者やアプリ運営会社には、脅迫アカウントの迅速な凍結、通報対応、画像拡散防止、未成年ユーザーへの警告表示が求められる。海外アカウントや複数アカウントを使う加害者に対し、通報から対応までの時間が長ければ、被害者の恐怖は長くなる。
行政には、被害相談、画像削除支援、警察相談、心理支援を一つにつなげる窓口の整備が求められる。現在は、被害者がどこに相談すればよいか分からず、検索しながら複数の窓口を回る場合がある。
セクストーションは、スマホとSNSの利用が日常になった社会で、子どもと若者を狙う犯罪である。対策は、家庭だけに任せる段階ではない。
被害者は「終わった」と思わなくていい
セクストーションの加害者は、被害者に「人生が終わった」と思わせる。
だが、終わらせる必要はない。
被害者は悪くない。脅している側が悪い。金を要求し、拡散をほのめかし、恐怖で支配しようとしている側が犯罪をしている。
性的画像を送ってしまったとしても、相談してよい。男性でも、未成年でも、大人でも、恥じる必要はない。最初の対応を間違えなければ、被害を抑えられる可能性はある。
支払わない。
追加で送らない。
証拠を残す。
連絡を断つ。
相談する。
この5つを、家庭、学校、SNS利用者が共有しておく必要がある。
セクストーションは、被害者の弱さではない。加害者による脅迫である。
社会がその前提を共有できるかどうかが、次の被害を防ぐ分かれ目になる。
編集部まとめ
セクストーションは、SNSや言語交換アプリなどで親密さを装い、性的画像や動画を送らせた後、「家族や学校にばらまく」と脅して金銭を要求する犯罪です。ぱっぷすへの相談件数は2025年度に2,200件を超え、男性や未成年の被害も目立っています。被害に遭った場合は、金銭を支払わず、追加の画像を送らず、証拠を残し、連絡を断って、支援団体や警察に相談することが重要です。家庭、学校、SNS事業者、行政には、実例に基づく予防教育と迅速な相談対応が求められます。
報道・公表された主な事例
セクストーションは、実際に各地で被害や摘発が報じられている。相談件数の急増だけでなく、未成年を狙った手口、性的画像の送信強要、公開をほのめかす脅迫、金銭要求が確認されている。
| 時期 | 報道・公表内容 | 何が問題か |
|---|---|---|
| 2026年5月 | 兵庫県内でセクストーション被害が続発。性的画像の撮影や送信を強要し、公開をほのめかす手口が報じられた。 | 未成年や若年層が狙われ、画像送信後に脅迫へ移る流れが確認されている。 |
| 2026年5月 | 兵庫県警が2025年に摘発したサイバー犯罪の脅迫事件は91件。前年の3.6倍に急増したと報じられた。 | ネット上の脅迫が急増し、セクストーション被害の増加が背景にあるとみられている。 |
| 2025年 | 支援団体へのセクストーション相談が急増。男性や18歳未満からの相談が目立つと報じられた。 | 「男性は性被害に遭わない」という思い込みが、相談の遅れにつながる。 |
| 2025年 | SNSで性的画像を送った後、拡散をほのめかされ金銭を要求された男性被害が報じられた。 | 一度支払っても終わらず、追加要求に発展する危険がある。 |
| 警察庁公表資料 | SNSに起因する子どもの性的被害は中高生を中心に高水準。小学生の被害も増加傾向にある。 | 被害の低年齢化が進み、家庭と学校での具体的な予防教育が必要になっている。 |
被害の流れ
SNS・言語交換アプリ・ゲーム・DMで接触
↓
親密な会話で警戒心を下げる
↓
性的画像・動画・ビデオ通話を求める
↓
録画・保存したと告げる
↓
「家族に送る」「学校にばらまく」と脅す
↓
電子マネー・送金アプリ・暗号資産などで金銭要求
↓
支払うと追加要求に発展する危険
編集部が確認したポイント
・被害は女子だけではなく、男子中高生や若い男性にも広がっている。
・「自分で送ってしまった」と思わせ、被害者を黙らせる手口が使われている。
・実際には、加害者側が脅迫している犯罪であり、被害者を責めるべきではない。
・金銭を支払っても画像が消える保証はなく、要求が続く危険がある。
・学校、家庭、支援団体、警察へ早期につなぐことが被害拡大を防ぐ鍵になる。
この記事のポイントQ&A
Q. セクストーションとは何ですか。
A. 性的画像や動画をもとに相手を脅し、金銭や追加画像などを要求する犯罪です。
Q. どのような人が狙われていますか。
A. 中高生を含む若者、男性、SNSや言語交換アプリを利用する人が狙われています。女性も被害に遭います。
Q. 被害に遭ったら、まず何をすべきですか。
A. 金銭を支払わず、追加の画像を送らず、証拠を残し、相手をブロックして、支援団体や警察に相談してください。
Q. お金を払えば終わりますか。
A. 終わらない可能性が高いです。一度支払うと、さらに要求されることがあります。
Q. 相談先はどこですか。
A. NPO法人ぱっぷすの相談窓口、警察相談専用電話#9110、18歳未満で保護が必要な場合は児童相談所相談ダイヤル189、強い不安がある場合はよりそいホットラインなどがあります。

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