豊橋市議会議員は、普段何をしているのか。
選挙の時には候補者の名前や公約を見る。しかし当選後、「議会で何を質問したのか」「市政のどんな問題を追ってきたのか」「税金を原資とする政務活動費を何に使っているのか」まで追い続ける市民は多くないだろう。
週刊TAKAPIの連載「豊橋市議を読む」では、一般質問、所属委員会、重要政策、政務活動費など、誰でも確認できる公開資料をもとに豊橋市議会議員を一人ずつ読み解いていく。
第4回は、公明党豊橋市議団の井上豪史(いのうえ・たけし)市議。
本人へのインタビューによる人物評ではない。
豊橋市議会が公開している記録から、井上市議が何を問題として取り上げ、議員としてどんな活動をしてきたのかを見ていく。
井上豪史市議とは?現在1期目
豊橋市議会の2026年7月27日現在の名簿によると、井上氏は1974年生まれ、潮崎町在住。
公明党豊橋市議団に所属し、現在1期目だ。
常任委員会は環境経済委員会。
さらに現在は、新アリーナ問題などを扱う「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」等に関する調査特別委員会にも所属している。
市議会に掲載されている抱負は、
「小さな声に耳を傾け、寄り添い、より住みやすい街に!」
1期目の市議は実際に、どんな「小さな声」を議会へ持ち込んできたのか。
一般質問を追うと、一定の特徴が見えてくる。
2026年6月「不適切保育」を一般質問
直近となる2026年6月定例会で井上市議が最初に取り上げたのが、
「本市で発生した不適切保育について」
だった。
さらに、戦後80年を経た豊橋空襲についても一般質問している。
不適切保育は、子どもの安全や保護者からの信頼に直結する問題だ。
そして井上市議が保育を取り上げたのは、これが初めてではない。
初当選後の2023年6月定例会でも、
「安心して預けられる保育環境について」
を質問。
同年9月にも、
「本市における誰でも受け入れられる保育環境について」
を取り上げている。
つまり公開された質問記録を見る限り、保育は2026年に突然取り上げたテーマではない。
初当選した2023年から継続して議会で扱ってきた政策分野の一つと見ることができる。
教職員の「不適切行為」も追及
2025年9月定例会では、
「本市における教職員の不適切行為について」
を一般質問した。
同じ定例会では、豊橋総合動植物公園、いわゆる「のんほいパーク」の持続可能性についても質問している。
さらに2025年6月には、
「学校に行きづらさを感じている子どもたちの学びの場」
を取り上げた。
このテーマにも継続性がある。
2023年12月にも、
「学校に行きづらさを感じている子どもたちの居場所について」
を質問していた。
2025年12月になると、さらに具体的に、
「中学校における校内教育支援センターの現状について」
を質問している。
質問項目だけを時系列で並べても、
「居場所」→「学びの場」→「校内教育支援センター」
と、学校に行きづらさを抱える子どもへの支援を複数年にわたって取り上げていることが確認できる。
これは井上市議の議会活動を分析する上で、一つの明確な軸だ。
ただ「質問した」だけでは成果とは言えない
一方で、この連載では「何度も質問している=実績」と単純には評価しない。
重要なのは、その先だ。
学校に行きづらい子どもの居場所は実際にどう改善されたのか。
校内教育支援センターはどこまで整備されたのか。
井上市議の質問や提言によって、市側が変更した制度はあるのか。
不適切保育への質問を受け、再発防止策に何らかの変化があったのか。
「問題を取り上げたこと」と「問題を解決したこと」は同じではない。
ここは他の市議と同じ基準で見る必要がある。
防災も初当選時から繰り返し質問
井上市議のもう一つの特徴が防災だ。
2026年3月定例会では、
「環境問題について」
とともに、
「防災力の向上について」
を一般質問している。
しかし、防災も2026年に初めて扱ったテーマではない。
2023年9月には「本市における防災力の強化」。
2024年6月には文化財の防災と災害時の対応。
2024年9月には再び「本市における防災の取り組み」。
2025年3月には「本市の災害時と災害を想定した平時の取り組み」。
そして2026年3月には「防災力の向上」を取り上げている。
初当選後から複数年度にわたり、防災を一般質問で扱っていることになる。
保育・教育と並び、井上市議が継続して追っている政策テーマと言ってよさそうだ。
障がい者支援、投票、犯罪被害者支援も
井上市議の質問テーマは教育と防災だけではない。
2025年12月定例会では、
障がい者支援 投票に関する支援 犯罪被害者等支援 中学校の不登校支援
の4項目を取り上げた。
障がい者支援では、視覚障がい者・聴覚障がい者の情報アクセシビリティを質問。
投票については、投票所のバリアフリー化や投票しやすい環境整備を取り上げている。
2025年6月には「共生社会の実現に向けた取り組み」も質問しており、公開記録からは、社会の中で困難を抱えやすい人への支援を複数の角度から取り上げていることが見えてくる。
高齢者、ひきこもり、動物愛護、観光まで
質問範囲はさらに広い。
2024年6月には高齢者が外出しやすい環境整備。
2024年12月には、
豊橋観光案内所、コンテンツツーリズム、動物愛護、ひきこもりの現状と課題を取り上げた。
2025年3月にはマイナンバーカード、のんほいパーク、災害対応。
同年9月には教職員の不適切行為とのんほいパーク。
2026年3月には環境問題と防災。
2026年6月には不適切保育と豊橋空襲。
こうして並べると、井上市議は1期目ながら、かなり広い分野を一般質問で扱っている。
一方で「広く扱っている」ことと「政策成果を上げている」ことは分けて考える必要がある。
新アリーナを扱う調査特別委員会にも所属
現在の井上市議は、新アリーナ問題と無関係ではない。
2026年7月27日現在、「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」等に関する調査特別委員会の委員を務めている。
この特別委員会には、これまで「豊橋市議を読む」で取り上げた坂柳泰光市議、豊田八千代市議らも所属している。
ただし、井上市議については一般質問一覧だけから、新アリーナへの立場を単純に「賛成」「反対」と断定することはしない。
見るべきなのは、特別委員会で何を質問し、関連議案でどのような判断をし、その理由をどう説明してきたのかだ。
井上市議の政務活動費 令和7年度は3分冊を公開
次に、政務活動費を見る。
豊橋市では政務活動費を議員1人につき月額9万円交付しており、年度ごとに精算し、残余額がある場合は市へ返還する制度となっている。
令和7年度、つまり2025年4月から2026年3月までについて、井上市議は政務活動費の収支報告書・収支内訳書・収支一覧と根拠資料を3分冊で公開している。
豊橋市議会では令和6年度から、支出伝票に関する根拠資料もすべてウェブ上で公開している。
ここからは、「政務活動費を使った」というだけではなく、何に使ったのかを見る必要がある。
通信費は私用分を分け「2分の1」を計上する例
井上市議の公開された支出伝票からは、経費の扱い方が具体的に確認できる。
固定電話・FAX代、インターネット接続料について、ある支出伝票では合計4,048円に対し、
「4,048円/2=2,024円」
として、2,024円を調査研究費に計上している。
伝票には、インターネット3,410円、電話1,474円、割引836円との内訳も記載されている。
つまり、少なくともこの支出については全額ではなく、2分の1を政務活動費として処理していることが資料から確認できる。
按分しているという事実と、その割合が適切かどうかという評価は別問題だが、支出方法を確認する材料にはなる。
新聞は中日・東愛知・東日の3紙
資料購入費についても具体的な支出が確認できる。
公開された伝票では、新聞購読料として月額8,670円を計上。
内訳は、
中日新聞 3,400円 東愛知新聞 2,770円 東日新聞 2,500円
となっている。
全国・県域紙だけではなく、豊橋・東三河の地域情報を扱う地元紙を含めて3紙を購読している構成だ。
井上市議は一般質問で保育、学校教育、防災、観光、のんほいパークなど地域性の強いテーマを数多く扱っている。
新聞購読そのものを「成果」と評価することはできないが、地域課題を把握するための情報収集に政務活動費を使っている一例として見ることができる。
政務活動費は「使った=問題」ではない
ここは、この連載で全議員に共通する基準だ。
政務活動費を使ったこと自体は問題ではない。
豊橋市も、政務活動費について、市政に関する調査研究その他の活動に必要な経費の一部を補助し、議員の政策形成能力等の向上を目的とする制度だと説明している。
だから見るべきなのは、
いくら使ったのか。
では終わらない。
何に使ったのか。
なぜ必要だったのか。
その調査や資料が議会質問にどう結びついたのか。
そして、市民にどんな成果として還元されたのか。
そこまで見て初めて、政務活動費を評価する材料になる。
1期目の井上市議 公開資料から見える特徴
ここまで公開資料を追うと、井上市議の1期目にはいくつかの特徴が見えてくる。
まず、保育・教育。
2023年の初当選後から保育環境を取り上げ、学校に行きづらい子どもの居場所・学びの場・校内教育支援センターについて継続して質問している。
次に、防災。
2023年から2026年まで、一般的な防災だけでなく文化財防災、平時からの災害対策など、切り口を変えながら繰り返し取り上げている。
さらに障がい者の情報アクセシビリティ、投票所のバリアフリー、犯罪被害者支援、高齢者の移動、ひきこもりなども質問している。
一方、2026年7月からは環境経済委員会に所属し、新アリーナを扱う調査特別委員会にも加わっている。
つまり今後は、これまで多かった福祉・教育・防災だけではなく、環境・経済・大型公共事業に対してどんな議員活動をするのかも見るポイントになりそうだ。
「質問の多さ」だけでは評価しない
井上市議は1期目ながら、定例会で継続的に一般質問を行っていることが議会記録から確認できる。
しかし、この連載では一般質問の回数をそのまま議員の点数にはしない。
議員には一般質問以外にも、委員会審査、議案への賛否、行政との政策協議、地域からの相談対応などさまざまな仕事がある。
逆に、何度質問していても政策が何も変わっていないのであれば、その理由も検証する必要がある。
井上市議についても同じだ。
次に問われるのは「何を実現したか」
保育環境を繰り返し取り上げた。
不登校・学校に行きづらい子どもの支援を継続して質問した。
防災について複数年度にわたって行政へ問いかけた。
障がい者支援や犯罪被害者支援も取り上げた。
これらは公開資料から確認できる「何をしてきたか」だ。
しかし市民が知りたいのは、さらにその先ではないだろうか。
不登校支援はどう変わったのか。
保育現場の改善につながったものはあるのか。
防災施策に具体的に採用された提案はあるのか。
障がい者の情報アクセシビリティや投票環境は改善されたのか。
そして、
井上市議自身の提言によって実現した政策は何なのか。
ここまで確認して初めて、1期4年間の評価につながっていく。
市議を評価するのは市民 同じ物差しで読み続ける
第1回・坂柳泰光市議。
第2回・古池もも市議。
第3回・豊田八千代市議。
そして第4回・井上豪史市議。
所属会派も、当選回数も、政策テーマも違う。
それでも、この連載で見る物差しは変えない。
何を質問したのか。何に政務活動費を使ったのか。重要政策にどう向き合ったのか。そして、その結果として何を実現したのか。
週刊TAKAPIが議員を「良い」「悪い」と決めるための連載ではない。
市議会議員を最終的に評価するのは、有権者である市民だ。
だからこそ、選挙公報だけでは見えにくい4年間の活動を、公開資料から読み解く。
井上豪史市議は現在1期目。
2027年の次の市議選を前に、市民が判断できる材料はこれからさらに増えていく。
「この市議は、豊橋市議会で何をしてきたのか」
週刊TAKAPIでは今後も、同じ基準で豊橋市議会議員一人ひとりを検証していく。
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