【独自・愛知・豊橋】葦毛湿原でサギソウ持ち込み繰り返す 2026年は約230株除去、豊橋市担当者「やめる気配がない」

約50年前には「2000球を入れた」が美談だった

今回の取材で特に印象的だったのが、自然保護に対する考え方の変化だ。

担当者によると、昭和40年代ごろには、葦毛湿原周辺の中学校の生徒らが湿原で作業を行い、その中でサギソウの球根約2000球を入れたことが新聞で肯定的に紹介された例があったという。

当時は「希少な植物を増やすこと」が自然保護につながるという考え方が現在より強かった。

しかし約50年が経過し、研究は進んだ。

現在では単に個体数を増やすのではなく、その地域で長期間維持されてきた遺伝的特徴まで含めて生態系を守ることが重要視されている。

担当者は、

「世の中は大きく変わった」

と説明する。

かつて善意として行われていた行為が、現在の科学的知見では自然環境を損なう行為になり得る。


「善意かもしれない。でも、やめてほしい」

一連の持ち込みを行っている人物が誰なのかは分かっていない。

目的も確認されていない。

担当者は、過去にこうした行為が肯定的に扱われていた歴史を踏まえ、現在も「サギソウを増やしてあげたい」という善意から行っている人物がいる可能性についても言及した。

しかし、その善意が葦毛湿原の固有の自然を失わせる可能性がある。

市側が訴えているのは明確だ。

外部から植物を持ち込まないでほしい。

花を増やすことと、自然を守ることは同じではない。

葦毛湿原のサギソウを守るために必要なのは、外からサギソウを足すことではなく、そこに存在してきた生態系をそのまま次世代へ残すことだ。


Q葦毛湿原ではサギソウを植えること自体が禁止されているのですか?
Aはい。葦毛湿原は国指定天然記念物で、市担当者によると、許可なく外部から植物や球根を持ち込む行為は、文化財保護法上の無断の現状変更に当たるとされています。希少な植物を増やす目的であっても、自由に植えることはできません。
Q園芸店で購入したサギソウなら、同じ種類なので問題ないのでは?
A問題になる可能性があります。同じ「サギソウ」に見えても、葦毛湿原で長く維持されてきた個体群とは遺伝的な特徴が異なる可能性があります。外部由来の個体と交雑すれば、地域固有の遺伝的特徴が失われる恐れがあります。
Q持ち込まれたサギソウを見つけた場合、自分で抜いてもいいですか?
A勝手に抜かず、管理する行政などへ連絡することが重要です。見た目だけでは外部から持ち込まれた個体と在来の個体を判別することが難しく、善意で抜いた結果、守るべき植物を傷つける可能性があります。
Qサギソウ以外の植物なら葦毛湿原へ持ち込んでもいいですか?
Aいいえ。問題の本質はサギソウだけではありません。国指定天然記念物の環境に外部から植物などを持ち込めば、本来の植生や生態系に影響を与える可能性があります。「自然を豊かにするため」という目的でも持ち込まないことが基本です。
Q昔は植物を増やす活動が行われていたのに、なぜ今は禁止されるのですか?
A自然保護の考え方が変化したためです。かつては希少植物の「数を増やす」ことが保護につながると考えられることもありましたが、現在はDNAなどの研究が進み、その土地固有の遺伝的多様性まで含めて守ることが重視されています。
Q葦毛湿原で不審な植物の持ち込みを目撃したらどうすればいいですか?
Aその場で相手とトラブルになるような対応は避け、日時、場所、状況などを可能な範囲で記録したうえで、豊橋市など管理者へ情報提供するのが適切です。植物を自分で移動・除去することも避けた方がよいでしょう。
Q今後また持ち込まれたサギソウが見つかる可能性はありますか?
Aあります。今回、明らかに不自然な状態のものは除去されていますが、外部由来かどうかを外見だけで完全に判断することは難しく、市担当者も今後再び確認される可能性を否定していません。継続的な観察が重要になります。

特記事項

今回の取材で、市担当者からは同一人物による行為の可能性や、善意で行われている可能性について説明がありましたが、いずれも行為者が特定されたものではなく、市側の推測を含みます。

週刊TAKAPIでは、確認されていない人物を行為者と断定することはせず、豊橋市などによって確認された事実と取材で得た説明を区別して掲載しています。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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