「アルバイト代から月5000円を積み立てても、本当に意味があるのか」
NISAに関心を持つ大学生が最初に迷うのは、銘柄よりも投資額だ。少額では資産形成にならない気がする一方、積立額を増やせば食費や交際費、就職活動費を圧迫する。
大学生のNISAで重要なのは、大きな金額を投じることではない。生活を崩さず、相場が下落しても継続できる金額を決めることだ。
金融庁の年代別分析では、大学生を含む「20代以下」のNISA口座数は、2023年12月末から2024年9月末までに1.30倍へ増加し、全世代で最も高い伸びを示した。2024年にNISAで商品を購入した20代以下では、つみたて投資枠を利用した人の割合が91.6%に達している。
統計は大学生だけを切り分けたものではないが、若年層ほど一括投資より積立型の運用を選ぶ傾向が鮮明になっている。
大学生でも18歳からNISAを利用できる
NISAは、株式や投資信託から得た売却益や配当、分配金が非課税になる制度だ。
通常、投資による利益には約20%の税金がかかるが、NISA口座で購入した対象商品の利益には課税されない。
その年の1月1日時点で18歳以上の国内居住者であれば、大学生でも口座を開設できる。現在の制度では、年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円。両方を合わせて年間最大360万円、生涯では1800万円まで非課税で保有できる。
ただし、収入が安定しない大学生が上限額を意識する必要はない。見るべき数字は「いくらまで投資できるか」ではなく、「毎月いくらなら生活を変えずに続けられるか」だ。
月5000円でも始める意味はある
月5000円を1年間積み立てると、元本は6万円。大学4年間では24万円になる。月1万円なら48万円だ。
短期間で大きな利益を生む金額ではない。しかし、毎月の収支を把握し、自動積立を続け、値上がりと値下がりの両方を経験する意味は大きい。
早く始める最大の利点は、短期的なリターンではなく、運用に使える時間を確保できることにある。
一方、学費、就職活動費、資格取得費、卒業後の引っ越し費用など、数年以内に使う予定のお金は投資に回さない方がいい。必要な時期に価格が下落していれば、損失を抱えたまま売却することになる。
大学生が陥りやすい3つの落とし穴
SNSで話題の銘柄に集中する
SNSや動画で急浮上した個別株、半導体株、仮想通貨関連株などへ資金をまとめて投入するケースがある。
注目を集めている時点で、価格がすでに大きく上昇している可能性もある。人気が冷えれば、短期間で含み損が膨らむ。
NISAは運用益を非課税にする制度であり、値下がりを防ぐ仕組みではない。
積立額を上げすぎる
アルバイト代が入るたびに多額を積み立て、食費や交通費が不足する状態では継続できない。
現金が必要になれば、相場が下がっている時期でも売却せざるを得ない。積立額を決める際は、月収の割合ではなく、固定費と予備費を差し引いた後の余裕資金を見る必要がある。
商品数だけを増やす
分散投資を意識して、投資信託を3本、5本と購入する人もいる。
しかし、全世界株式型とS&P500連動型を同時に保有すると、米国企業への投資部分が重複する。銘柄数が増えても、実際の投資先が似ていれば分散効果は限定的だ。
確認すべきなのは本数ではなく、国、地域、業種、資産の偏りである。
初心者は「つみたて投資枠」から検討
投資経験が少ない大学生は、つみたて投資枠から考えやすい。
対象商品は、長期の積立・分散投資に適するとして、金融庁の基準を満たした投資信託などに限定されている。個別株を自由に売買できる成長投資枠より、候補を絞りやすい。
金融経済教育推進機構のJ-FLECは大学生向け教材で、資産形成には「長期・積立・分散」の視点が重要だと説明している。一度に購入せず定期的に一定額を積み立てることで、急騰や急落の影響を和らげられるとしている。
同時に、J-FLECは「上がっても下がっても焦らず、長く続けること」を積立型運用のポイントに挙げる。少額でも継続できる仕組みを先に作るべきだ、という専門家側の考え方が示されている。
全世界株式とS&P500は何が違うのか
大学生向けのNISA情報で頻繁に紹介されるのが、全世界株式型とS&P500連動型だ。
全世界株式型は、日本を含む世界各国の企業へ幅広く投資する。S&P500連動型は、米国を代表する大型企業を中心に組み入れる。
全世界株式型にも米国株が多く含まれるため、両方を購入すれば自動的に分散効果が高まるわけではない。
商品を比較する際は、少なくとも次の項目を確認したい。
- 投資対象となる国や地域
- 信託報酬などの保有コスト
- 米国市場への集中度
- 為替変動の影響
- 大幅に下落しても保有を続けられるか
人気ランキングや直近の運用成績だけでなく、「何に投資する商品かを自分の言葉で説明できるか」が判断基準になる。
証券会社はポイント還元だけで決めない
NISA口座を開設する金融機関は、ポイント還元率だけでなく、取り扱う投資信託、最低積立額、クレジットカード積立、アプリの使いやすさ、問い合わせ体制まで比較したい。
ポイント制度や還元条件は変更されることがある。一時的なキャンペーンだけで選ぶと、長期利用の途中で使いにくさが目立つ場合もある。
NISA口座は原則として1人1口座だ。金融機関の変更は可能だが、手続きが必要になるため、数年間継続して使えるかを確認する必要がある。
投資より優先すべき支出もある
生活費が不足している、リボ払いやカードローンの残高がある、卒業までにまとまった支出を予定している場合は、NISAより現金確保や返済を優先すべきだ。
大学生にとっては、資格、語学、専門知識、健康、就職活動への支出が、将来の収入を高める自己投資になることもある。
NISAは資産形成に使える制度だが、学業や生活を犠牲にしてまで利用するものではない。
今日からできる3つの準備
最初に、直近3カ月の銀行口座、クレジットカード、スマートフォン決済の履歴を確認し、1カ月に必要な生活費を出す。
次に、学費、就職活動費、資格取得費、引っ越し費用など、卒業までに使うお金を現金で確保する。
最後に、残った余裕資金から月1000円、3000円、5000円など、相場が下落しても積立を止めずに済む金額を決める。
家計を確認する。近く使うお金を分ける。少額の自動積立を設定する。
大学生が今日やるべきことは、値上がりしそうな銘柄を探すことではない。この3つを終わらせ、無理なく続けられる投資額を確定することだ。
本記事は、金融庁および金融経済教育推進機構が公表しているNISA制度、利用状況、大学生向け金融教育資料を基に構成しています。特定の金融商品や証券会社への投資、口座開設を推奨するものではありません。株式や投資信託には価格変動があり、元本を下回る可能性があります。
週刊TAKAPI編集部/成田
編集部まとめ
金融庁の分析では、大学生を含む20代以下のNISA口座数は、2023年12月末から2024年9月末までに1.30倍へ増加した。若年層では、つみたて投資枠を利用した人の割合も91.6%と高い。
大学生がNISAを始める際は、商品を選ぶ前に、生活費と卒業までに必要な資金を確保する必要がある。全世界株式やS&P500を検討する場合も、投資対象、保有コスト、米国への集中度、為替リスクの確認が欠かせない。
最初の行動は、口座開設ではない。直近3カ月の支出を確認し、必要資金を現金で分け、継続可能な積立額を決めることである。
大学生でもNISA口座を開設できますか?
その年の1月1日時点で18歳以上の国内居住者であれば、大学生でもNISA口座を開設できます。
大学生のNISAは月5000円でも意味がありますか?
月5000円でも、長期間継続すれば資産形成の習慣につながります。ただし、生活費や学費、就職活動費を確保した余裕資金で始めることが前提です。
大学生はつみたて投資枠と成長投資枠のどちらを選ぶべきですか?
投資経験が少ない場合は、対象商品が一定の基準を満たした投資信託などに限定される、つみたて投資枠から検討しやすいといえます。
全世界株式とS&P500はどちらが大学生向けですか?
全世界株式は複数の国や地域へ分散し、S&P500は米国の大型企業を中心に投資します。どちらが適しているかは、地域の集中度や値下がりへの許容度によって異なります。
NISAなら元本割れしませんか?
NISAは運用益を非課税にする制度であり、元本保証ではありません。株式や投資信託の価格が下落すれば、投資額を下回る可能性があります。
大学生のNISAで押さえるポイント
大学生を含む20代以下で、NISAを使った資産形成が広がっている。大学生が始める場合は、生活費や学費、就職活動費を確保したうえで、月1000円から5000円程度の無理のない積立額を設定することが基本となる。初心者は、つみたて投資枠を中心に、全世界株式やS&P500連動型などの投資対象、信託報酬、為替リスクを比較したい。NISAは運用益が非課税になる制度だが、元本保証ではなく、価格下落による損失の可能性がある。
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