京都市の合同会社クリアースカイが展開していた「サーバー投資」をめぐり、契約者側の弁護団が同社経営陣らの刑事責任を追及する動きに出ている。
弁護団や破産申立代理人側の説明によると、契約者は全国で約5000人、買い戻し金などの未払いは約250億円規模に上る可能性がある。4月の破産申立時点で確認されていた負債は、債権者205人に対する約28億1806万円だったが、その後に把握された契約を含めると、最終的な規模は大幅に膨らむとみられている。約250億円は、捜査機関や裁判所が認定した確定被害額ではない。
愛知県東三河でも影響は深刻だ。
破産申立書などに基づく地域報道では、東三河に関係する未償還残高は約16億7370万円と推計されている。この金額は豊橋市だけの数字ではなく、東三河全体に関係するものだ。
一方、豊橋市内にはクリアースカイの特別代理店が拠点を置き、別の地元企業も代理店として契約紹介に関与していたことを公表している。三遠ネオフェニックスとのパートナー契約、Web3関連イベント、地域団体への寄付など、複数の接点も確認されている。
それぞれの関係だけで、不正への関与を判断することはできない。ただ、東三河で契約が広がった経路と、契約者が何を判断材料にしていたのかは、地域側でも検証すべき問題となっている。
1口約110万円 短期間で10%上乗せして買い戻すと説明
クリアースカイが販売していたのは、データの保存や分散管理に使用するとされたサーバー機器の所有権だった。
契約者が1口約110万円でサーバーを購入し、同社側が企業などへ貸し出して運用。一定期間が過ぎると、購入代金に利益を加えた金額で買い戻す仕組みだと説明されていた。
勧誘時には「3カ月後に10%を上乗せして買い戻す」といった条件が示されていたとされる。単純に年換算すれば約40%に相当する。
同社は全国で対面やオンラインによるセミナーを開き、既存の契約者が新たな契約者を紹介すると報酬を受け取れる制度も設けていた。
営業活動では特別代理店が中心となり、各地でセミナーへの集客や契約紹介を行っていたとされる。東京商工リサーチは、全国で約10社の特別代理店が確認されていると報じている。
2月ごろから支払い停滞 京都地裁に破産申し立て
2026年2月ごろから、契約者への買い戻し金などの支払いが滞り、経営陣と連絡が取れないとの訴えが相次いだ。
4月7日には契約者らが京都地裁へ破産を申し立てた。被害者弁護団はその後、販売預託商法に当たる疑いがあるとして、消費者庁に行政処分を求める申し入れも行った。
7月8日には、同社経営陣や勧誘関係者らについて、東京地検特捜部への刑事告訴に向けた手続きが進められたと報じられている。
告訴内容が正式に受理され、捜査がどのように進むかは今後の焦点となる。現段階では、詐欺などの犯罪事実や関係者の刑事責任が確定したわけではない。
問われるサーバーの実在性と運用実績
問題の中心にあるのは、販売されたとするサーバーがどの程度存在し、実際に第三者へ貸し出されていたのかという点だ。
クリアースカイ側は、顧客が所有する多数のサーバーを保管会社などで管理していると説明していた。
一方、弁護団側は、サーバーの保管先や所有関係、貸し出し実績、運用収益を確認できる資料が不足しているとして、事業の実態に重大な疑義があると主張している。
ただし、すべてのサーバーが存在しなかったことや、全契約が架空だったことが司法手続きで認定されたわけではない。
今後は、契約者ごとのサーバーの製造番号、所有権を示す書類、保管場所、貸し出し先、利用料の入金記録などを確認する必要がある。
3カ月で10%という利益を継続的に支払える事業だったのか。その判断には、勧誘時の説明ではなく、収益を裏付ける契約書や会計資料が欠かせない。
新たな契約金を既存契約者への支払いに充てた疑い
過去に勧誘へ関わった人物からは、新たな契約者から集めた資金を、既存契約者への買い戻し金などに回していた趣旨の証言も出ている。
弁護団側は、実際のサーバー運用収益ではなく、新規契約者の資金を以前の契約者への支払いに充てる、ポンジ・スキームに類似した構造だった疑いがあると指摘している。
資金の流れは、現段階では確定していない。
集められた資金のうち、サーバーの購入や運用に使われた金額はどの程度だったのか。既存契約者への支払いに、いくら充てられたのか。経営陣や代理店関係者がその実態をどこまで把握していたのか。
破産手続きによる資産調査と、捜査機関による資金追跡が待たれる。
東三河で約16億7370万円が未償還
東愛知新聞は、破産申立書などを基に、東三河に関係する未償還残高が約16億7370万円に上ると報じている。
地域では、豊橋市に拠点を置く株式会社ミキコーポレーションが、クリアースカイの特別代理店として活動していた。
この約16億7370万円は、ミキコーポレーション自身の債務ではない。
同社代表は地域報道に対し、未償還金はクリアースカイ側が返還すべき債務であり、返還などを弁護士を通じて追及するとの立場を示している。
一方、返還債務を誰が負うのかという問題と、代理店がどのような説明で契約を紹介したのかは切り分けて考える必要がある。
サーバーの所在や貸し出し実績を確認していたのか。高い買い戻し益を支払える根拠として、どのような資料を提示されたのか。支払いの遅れを把握した後、契約者へどのような説明を行ったのか。
代理店関係者の責任は、それぞれの認識や説明内容、契約への関与の程度によって判断される。
元豊橋市議会議長の会社も代理店契約を公表
元豊橋市議会議長の近藤喜典氏が代表取締役を務める株式会社たくとカンパニーも、クリアースカイとの代理店契約を結んでいたことを公表している。
同社は2026年5月21日付の声明で、クリアースカイを関係者に紹介し、契約に関与したことを明らかにした。
声明によると、同社はクリアースカイから示された事業資料や説明のほか、外部の信用調査情報などを確認し、一定の信用性と事業継続性があると判断したとしている。
問題発覚後は、同社を通じて契約した関係者の事情を確認し、自主的な支援対応を行ったと説明。一方、その対応はクリアースカイの債務や法的責任を引き継ぐものではないとしている。
ここで確認できるのは、たくとカンパニーが代理店として紹介と契約に関与した事実だ。
近藤氏や同社が、事業上の問題を認識しながら契約を紹介したと確認されたわけではない。今後問われるのは、代理店契約前に何を確認し、契約希望者へどのような説明を行ったのかという点になる。
三遠ネオフェニックス、両社との契約を解除
Bリーグの三遠ネオフェニックスを運営する株式会社フェニックスは、2025年10月にクリアースカイ、2026年1月にミキコーポレーションとのパートナー契約を始めていた。
問題が表面化した後、クラブはクリアースカイとの契約を4月21日付で解除。ミキコーポレーションとは翌22日付で合意解除し、4月30日に経緯を公表した。
クラブは、両社から受け取ったパートナー料について、法的義務の有無にかかわらず返金対応を進めるとしている。
また、契約締結時点では、後に報じられた問題を確認できる状況ではなかったと説明した。
スポーツチームとの契約は、パートナー企業が扱う金融商品や投資案件の安全性を保証するものではない。
それでも、地域を代表するクラブとの関係が、企業を判断する材料の一つとして受け止められることはあり得る。クラブ側には、今回の経緯を踏まえ、今後のパートナー審査をどのように見直すかが問われる。
豊橋市内で開かれたWeb3関連イベント
2024年には、豊橋市内でJapanWEB3協会などが関係するWeb3関連の催しが開かれた。
当時の地域報道では、NFTやVR、AIなどの技術活用を取り上げ、豊橋の将来について意見を交わす内容だったとされる。
元豊橋市議会議長の近藤氏は、自身もパネリストとして参加したことを公表している。
近藤氏によると、JapanWEB3協会の代表者はクリアースカイの役員も務めていた。一方、催しではクリアースカイのサーバー事業や投資、出資の勧誘はなかったとしている。
確認できた当時の報道にも、サーバー投資への勧誘が行われたとの記載はない。
このため、催しをクリアースカイの投資勧誘会と位置づけることはできない。事業者と地域関係者の接点として確認することと、催し自体の目的を混同してはならない。
豊橋市の後援名義 正式資料による確認が必要
Web3関連の催しをめぐっては、豊橋市の後援名義が付されていたとの指摘も出ている。
ただし、本記事の確認時点では、市が発行した後援承認通知、申請書、決裁文書などの行政資料を確認できていない。
そのため、「豊橋市がクリアースカイの投資事業を後援した」と書くことはできない。
仮に後援が正式に確認された場合でも、対象となるのはWeb3技術や地域づくりを扱った催しであり、サーバー投資そのものではない。
確認すべきなのは、後援の有無と対象となった催しの正式名称、申請した団体、市に提出された企画書や団体資料、承認の判断基準、名義の使用範囲だ。
市の後援は、主催団体の関連事業や投資商品の安全性を保証する制度ではない。一方、市名が付された催しが参加者に一定の安心感を与え得る以上、市側には審査経緯を資料に基づいて説明することが求められる。
地域団体への20万円寄付
近藤氏は、自身が関わる一般社団法人東三河kids未来クラブが、クリアースカイから20万円の寄付を受けたことも公表している。
近藤氏は、子どものスポーツ活動を支援する目的で受領し、適切に処理したと説明している。その上で、寄付金が不正に集められた資金だったと明らかになった場合には、返還などを検討するとしている。
寄付を受けたことだけで、近藤氏や地域団体がサーバー投資の実態を認識していた、または不正に関与していたと判断することはできない。
一方、近藤氏が代表を務める会社の代理店契約、Web3関連イベントへの参加、地域団体への寄付は、それぞれの時期と内容を分けた上で整理する必要がある。
それぞれに異なる説明責任
今後の刑事手続きで問われるのは、クリアースカイの経営陣らが、サーバーの実在性や収益構造について事実と異なる説明を行い、契約者から資金を集めたかどうかだ。
代理店関係者についても、事業の実態をどこまで認識し、どのような説明で契約を紹介したのかが焦点となる。
一方、三遠ネオフェニックス、地域団体、イベント関係者、豊橋市について、不正な資金集めへの関与が確認されたわけではない。
それぞれに確認すべき内容は異なる。
代理店には契約紹介時の説明と確認内容、スポーツチームにはパートナー審査、地域団体には寄付の受領経緯、豊橋市には後援の有無と審査過程が問われる。
複数の関係者を一括して扱うのではなく、契約書、申請書、会計資料、勧誘資料などを基に、個別に検証することが必要だ。
編集部まとめ
クリアースカイをめぐるサーバー投資問題は、全国で約5000人、未払いが約250億円規模に上る可能性がある大型案件に発展している。
東三河に関係する未償還残高は、約16億7370万円と推計されている。この数字は豊橋市単独ではなく、東三河全体に関係する金額だ。
一方、豊橋市には特別代理店の拠点があり、元豊橋市議会議長が代表を務める会社も、クリアースカイの紹介と契約に関与したことを公表している。
三遠ネオフェニックスとのパートナー契約、Web3関連イベント、地域団体への寄付など、複数の接点も確認された。
これらの事実だけで、関係者や団体が不正を認識していたと断定することはできない。問われるのは、誰が何を確認し、どのような説明を受け、どのような判断で契約や関係を結んだのかだ。
豊橋市の後援名義については、正式な行政文書を確認できていない。市議会が扱う場合には、後援申請書、承認通知、決裁文書、添付資料、名義の使用状況を確認する必要がある。
刑事手続きと破産手続きが進むなか、東三河で契約が広がった経緯と、豊橋で確認された複数の接点が契約者の判断にどう影響したのか。週刊TAKAPIは、当事者の説明と資料を基に検証を続ける。
週刊TAKAPI編集部/松本
特記事項:本記事は、被害者弁護団や破産申立代理人の説明、企業・団体の公表内容、関係者本人の説明、地域報道を照合して構成しています。全国約5000人、約250億円、東三河約16億7370万円はいずれも現段階の集計または推計です。詐欺などの犯罪事実、経営陣や代理店関係者の刑事・民事責任、各団体と契約被害との因果関係は確定していません。豊橋市の後援名義については行政文書を確認できていないため、指摘されている論点として記載しています。
東三河で広がった契約と豊橋の接点
クリアースカイのサーバー投資問題では、全国約5000人、未払いが約250億円規模に上る可能性があるとされている。東三河に関係する未償還残高は約16億7370万円と推計され、豊橋市内ではミキコーポレーションが特別代理店として活動していた。たくとカンパニーも代理店として紹介と契約に関与したことを公表している。三遠ネオフェニックスとのパートナー契約、Web3関連イベント、地域団体への寄付なども確認されているが、これらの接点だけで関係者や団体の不正関与を判断することはできない。今後は、サーバーの実在性、運用収益、集められた資金の流れ、各代理店の説明内容、豊橋市の後援名義の有無と審査過程が焦点となる。
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