【独自・愛知】あま市の地下水から基準超のふっ素 汚染源は特定できず、県内6市町で相次ぐ汚染公表

愛知県が2026年8月18日に公表した、あま市篠田の地下水汚染について、県が現在も汚染源の調査を続けていることが、週刊TAKAPIの取材で分かった。

検出されたのはふっ素で、濃度は環境基準の約1.2倍。県は周辺事業所への立ち入り調査や井戸の水質調査、井戸所有者への飲用指導を進める方針だが、調査地点数や結果がまとまる時期は明らかになっていない。

2026年度は、あま市のほか、日進市、愛西市、小牧市、武豊町、東海市でも地下水または土壌・地下水汚染が公表されている。ただし、原因物質や発覚の経緯は事案ごとに異なり、「県内で汚染そのものが増えている」と現段階で断定することはできない。


あま市篠田の地下水からふっ素 環境基準の1.2倍

愛知県の発表によると、地下水汚染が確認されたのはあま市篠田にある井戸だ。

県は水質汚濁防止法に基づく「2026年度地下水質測定計画」により、県内の地下水の状態を把握する概況調査、いわゆるメッシュ調査を実施している。

2026年7月14日に井戸水を採取して調べたところ、ふっ素が1リットル当たり0.94ミリグラム検出された。環境基準は同0.8ミリグラム以下で、基準の約1.2倍に当たる。

調査した井戸の用途は工業用とされている。愛知県の8月18日発表資料


あま市の地下水汚染、原因は特定できたのか

愛知県「現在も調査している段階」

週刊TAKAPIは、愛知県環境局環境政策部水大気環境課に、8月18日の公表後に汚染源が判明したか取材した。

原因について「今、調査を行っている段階」と説明。取材時点では、汚染源は特定されていない。

県は基準超過が確認された地点の周辺に、ふっ素を取り扱う工場などがあるか調べ、該当する事業所があれば立ち入りを行う。ふっ素の管理状況や、不適切な取り扱いがなかったかを確認するという。

工場などの人為的原因と自然由来の両方を調査

調査によって事業所で不適切な取り扱いが確認されれば、その事業所に由来する汚染の可能性が検討される。

一方、周辺の事業所に原因となる状況が見つからなければ、地質などによる自然由来の可能性もある。県によると、この地域では過去にも自然由来と考えられる事例があるという。

ただし、地下水は地中を移動するため、特定の事業所などを汚染源と断定することは簡単ではない。県からは、原因を特定できる見通しや調査終了時期について具体的な回答はなかった。


9月1日公表の土壌汚染との関連は「ない」

あま市では、県が8月18日の地下水汚染とは別に、9月1日にも企業敷地に関する土壌汚染事案を公表している。

週刊TAKAPIが2つの事案に関連性があるか確認したところ、県は、基準を超過した物質が異なるため関連性はないとの認識を示した。

8月18日に公表された地下水汚染の原因物質はふっ素。県は取材に対し、9月1日の事案とは「物質が全く違う」と説明しており、現時点では別事案として扱っている。


周辺井戸の追加調査は何地点で行うのか

井戸数と検査結果はまだ明らかにならず

県は今後、基準を超えた井戸の周辺で汚染の広がりを確認する。

一定の範囲内に井戸が存在し、採水できる状態であれば、水を採取して水質を検査する方針だ。

一方、取材時点では調査中で、次の情報は明らかになっていない。

  • 周辺で確認された井戸の総数
  • 実際に水質を調べた井戸の数
  • 新たに環境基準を超えた井戸の数
  • 調査対象とする具体的な範囲
  • 飲用に使用されている井戸の数
  • 追加調査で測定された最新のふっ素濃度

県の公表資料では、原因調査、周辺井戸の水質調査、井戸所有者への注意喚起を速やかに実施するとしている。


井戸水を飲まないよう、あま市と連携して注意喚起

県は、あま市と連携し、環境基準を超過した井戸と周辺の井戸の所有者に対して、井戸水を飲まないよう注意喚起する

県の説明では、井戸所有者に対する飲用指導は、直接の指導権限を持つあま市が中心となって進める。市が所有者へ知らせる際に、井戸水を実際に飲用しているかなども確認するとみられる。

ただし、取材時点では、基準を超えた井戸水を飲んでいた住民がいるか、水道への切り替えが行われたかは確認できていない。


あま市の地下水汚染による健康被害は確認されたのか

県水大気環境課は取材に対し、今回の地下水汚染に関連する健康相談について、現時点で受けていないと回答した。

県の資料によると、ふっ素を飲み水から継続的に体内へ取り込んだ場合、濃度によっては斑状歯などが発生することが報告されている。ただし、これは一般的な健康影響に関する情報であり、今回の事案で住民に健康被害が発生したことを意味するものではない。

今後、健康調査を行う予定があるか、どのような条件で必要性を判断するかは明らかになっていない。


汚染はいつから続いていたのか

今回の汚染がいつ始まったかについても、現時点では分かっていない。

県の概況調査は、県内を一定の範囲に分け、年度ごとに地点を選んで地下水を調べる仕組みだ。同じ井戸を毎年継続して測定する調査ではないため、今回の採水日が汚染の始まった時期を示すわけではない。

県によると、人為的な汚染であれば、原因となった工場がふっ素をいつから使用していたかなどが手掛かりになる。自然由来であれば地質に関係するため、開始時期を特定することはさらに難しくなる。

同じ地域で過去に行われた調査の時期や数値については、取材時に即答できる資料がなく、確認には至らなかった。


原因事業者が判明した場合、浄化費用は誰が負担するのか

県は、特定の工場が汚染源であることが明確になった場合、原因者側による対応が検討されるとの認識を示した。

しかし、現在は原因そのものが特定されていない。調査費用や浄化費用を誰が負担するかは、原因や適用される法令、土地の状況などを確認した後に判断されることになる。

原因者が廃業または倒産している場合の対応や、行政が支出した調査費を原因者へ請求する可能性については、今回の取材では確認できなかった。


愛知県で2026年度に6市町の汚染情報

愛知県の危機管理情報には、2026年度に入り、あま市を含む6市町の地下水または土壌・地下水汚染が掲載されている。愛知県「あいちの危機管理」

5月18日:東海市
地下水汚染

6月10日:武豊町
地下水汚染

6月15日:小牧市
土壌・地下水汚染

6月29日:愛西市
地下水汚染

6月29日:日進市
地下水汚染

8月18日:あま市
地下水汚染

このうち、日進市では井戸水から鉛0.015ミリグラム/リットルが検出され、環境基準の1.5倍だった。愛知県の日進市に関する発表

愛西市では砒素0.030ミリグラム/リットルが検出され、環境基準の3倍だった。県は、調査地点が地層・地質由来の砒素が地下水に溶け出しやすいとされる範囲内にあるとしている。愛知県の愛西市に関する発表

小牧市の事案は、事業者が旧工場跡地で調査した結果、土壌から六価クロム化合物、シアン化合物、鉛、ふっ素、ほう素、地下水からシアン化合物が基準を超えて検出されたものだ。愛知県の小牧市に関する発表

このように、検出物質も発覚経緯も一様ではない。


愛知県で地下水汚染は増えているのか

2026年度に県の危機管理情報へ6市町の事案が並んでいることだけで、愛知県内の地下水汚染が増加傾向にあるとは断定できない。

公表件数の増加には、実際の汚染発生だけでなく、定期調査で発見されたもの、土地の売却や再開発に伴う自主調査で判明したもの、法令に基づく調査・報告が増えたものなどが含まれる可能性がある。

県内で本当に増えているかを判断するには、少なくとも過去5年間の年度別件数を比較し、自然由来と人為由来、地下水調査と事業者調査を分けて検証する必要がある

今回の取材では、過去5年間の件数について県から即答は得られなかった。このため、「愛知県で地下水汚染が急増している」との表現は現時点では避けるべきだ。


今後の焦点は「汚染の広がり」と「飲用実態」

県が今後進める対応は、大きく3つある。

第一に、周辺事業所へ立ち入り、ふっ素の取り扱い状況を確認する原因調査。第二に、採水可能な周辺井戸を対象とした水質調査。第三に、あま市と連携した井戸所有者への飲用指導だ。

今後の記事化で重要になるのは、追加調査を行った井戸の数と結果、飲用井戸の有無、周辺事業所への立ち入り結果、そして汚染源を特定できたかどうかだ。

県から調査終了時期は示されておらず、週刊TAKAPIは引き続き状況を確認する。


Qあま市全域の水道水に問題があるのですか?
A今回、基準超過が確認されたのは、あま市篠田にある工業用井戸の地下水です。あま市全域の水道水で異常が確認されたとの発表ではありません。
Q井戸水は沸騰させれば飲めますか?
Aふっ素のような無機物は、一般的な煮沸によって安全に除去できるとは限りません。対象地域の井戸所有者は自己判断で飲用せず、県やあま市の案内に従う必要があります。
Q地下水の環境基準とは何ですか?
A環境基本法に基づき、人の健康を保護する上で維持することが望ましい水質として設定された基準です。県の資料では、地下水についてカドミウムをはじめ28項目が定められていると説明されています。
Q環境基準を超えたら、直ちに健康被害が起きますか?
A基準超過だけで、直ちに健康被害が発生したと判断されるものではありません。物質の濃度、摂取量、飲用期間などを踏まえる必要があります。ただし、基準を超えた井戸水は飲用せず、行政の注意喚起に従うことが重要です。
Q追加調査の結果はいつ公表されますか?
A取材時点で、公表時期は示されていません。周辺井戸の調査数や結果、汚染源の特定状況については、今後の県発表が焦点となります。

取材先:愛知県環境局環境政策部水大気環境課
取材:週刊TAKAPI 編集部/黒木

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