【沖縄県知事選2026・検証】玉城デニー氏公式Xに「自民と下地氏が裏取引」投稿、数時間後に削除 本人「不確かな情報」「手違い」と謝罪

9月13日投開票の沖縄県知事選を巡り、現職の玉城デニー氏(66)の公式Xに9月1日、自民党本部と、告示直前に立候補を取りやめた元衆院議員・下地幹郎氏が「裏取引をした」と断定する内容が投稿され、その数時間後に削除されていたことが分かった。

玉城氏は2日、投稿についてSNS担当者によるものだったと説明し、「不確かな情報」を拡散する意図はなかったとして「手違いということで申し訳ございませんでした」と謝罪した。支援組織側は「裏取引」という表現について、政策協定が結ばれた背景が表に出ていないことを指したもので、「密約」を意味するものではないと説明している。

週刊TAKAPIが9月3日夜までに公開資料、党側の会見記録、下地氏の会見内容などを照合したところ、自民党と下地氏が政策協定を結んだ事実は確認できる一方、「裏取引」があったことを裏付ける一次資料は確認できなかった。

9月1日午後6時48分ごろ 公式Xに「裏取引」

削除された投稿では、自民党本部が知事選で「第3極」の候補となる予定だった下地氏と「裏取引をした」とする内容が掲載された。

さらに、自民党本部による対応を「令和の琉球処分」のようだと表現し、沖縄の自治への介入だと批判する内容が続いていた。投稿時刻は9月1日午後6時48分ごろと確認されている。

しかし、投稿は数時間後に削除された。

発言元は高良沙哉・選対本部長

問題となった文章は、玉城氏本人が新たに作成したものではなく、玉城陣営の選対本部長を務める高良沙哉参院議員が、知事選告示日の8月27日夕、那覇市内で行った応援演説の内容を文字起こししたものだった。

高良氏は演説で自民党本部と下地氏の「裏取引」があったと主張していた。

当時、玉城氏も同じ選挙カー上にいたとされる。報道では、高良氏の「裏取引」発言を聞いた玉城氏がスタッフ側へ話しかける場面があった一方、その後は高良氏の演説に拍手を送っていたとされている。

玉城氏「不確かな情報」 2日に謝罪

玉城氏は2日、報道陣の取材に対し、問題の投稿はSNS担当者が発信したもので、自身は2日午前に内容を知ったと説明した。

そのうえで、

「不確かな情報に対しては積極的にそれを拡散しようという意図はまったくありません」

と述べ、「手違い」として謝罪した。

同日夜には玉城氏の公式Xでも事務所スタッフ名義の説明が掲載され、「誤って本人アカウントで投稿をしたため削除した」としたうえで、今後は表現や発言への責任を自覚し、慎重に行動すると説明している。

ここで重要なのは、削除理由と内容の真偽は別問題だ。

事務所側の説明は「本人アカウントに誤って投稿した」というものだが、玉城氏自身は投稿内容について「不確かな情報」と表現している。

選対側「密約という意味ではない」

選対担当者は、その後の取材に「裏取引」という表現の意味について説明している。

それによると、自民党本部と下地氏が政策協定を結んだ経緯や背景が十分に表に出ていないことを「裏取引」と表現したもので、金銭や将来の地位などを含む「密約」があったという意味ではないとしている。

また、玉城氏本人の公式アカウントは本人の人柄や政策を発信する場所であり、今回の内容はなじまないと判断して削除したとしている。

実際にあったのは「自民党本部と下地氏の政策協定」

では、確認されている事実は何なのか。

下地氏は8月25日、告示を2日後に控え、自民党本部との政策協定締結を理由に知事選への立候補を取りやめると発表した。

協定では主に、

  • 子どもの貧困対策への予算確保
  • 沖縄本島の鉄軌道実現に向けた着工
  • 2030年のG7サミット誘致
  • 普天間飛行場の返還期日の設定

の4項目で合意した。

自民党の西村康稔選対委員長も同日、下地氏と政策合意したことを公に認め、「ともに取り組んでいく」と説明している。

したがって、政策協定そのものは秘密ではなく、双方が公表している確認済みの事実だ。

下地氏「当選するまでの広がりが見えなかった」

下地氏は翌26日に記者会見し、不出馬に至った理由を説明した。

自身の選挙運動について「当選するレベルまでの広がりが見えない」と判断し、選挙を続けて票を獲得することよりも、政策を実現する道を選んだと説明。

その後、自民党などが推薦する古謝玄太氏を支援する考えを明確にした。

また、政策協議については自民党側から話が持ち掛けられたと説明する一方、合意した政策自体は自身の提案だったと主張している。

「国政選挙の公認との交換では」と質問も 双方は否定

下地氏の出馬取りやめが突然だったこともあり、会見では「今後の国政選挙での公認などとの交換条件があったのではないか」といった趣旨の質問も出た。

しかし、現在までに報じられている範囲では、自民党本部と下地氏はいずれも、こうした意味での「裏取引」を否定している。

週刊TAKAPIが確認した範囲でも、政策4項目とは別に、公認やポスト、金銭などを条件とした密約が存在したことを裏付ける一次資料は確認できない。

したがって、現段階で「裏取引があった」と事実として断定することはできない。

一方、自民党県連との調整を巡っては実際に波紋

ただし、「何も問題がなかった」と単純化することもできない。

自民党本部の公式会見記録では、政策協定について地元の党県連に事前説明がなかったとの指摘や、県選出国会議員から「頭越しの決定」と反発する声が上がったことについて質問が出ている。

これに対し党幹事長は、「意図があって頭越しにしたということではない」と否定し、選挙準備では以前から県連側とも協議してきたと説明。政策協定に至った経緯については今後説明し、理解を得たいとしている。

つまり、

「党本部と下地氏の政策協定」=確認済み
「県連との調整を巡る摩擦」=実際に表面化
「密約・裏取引があった」=確認されていない

という3点を分ける必要がある。

なぜ「裏取引」という表現が問題になったのか

今回の投稿では、単に「政策協定の経緯が不透明だ」と疑問を呈したのではなく、「裏取引をした」と断定する文章になっていた。

しかも発信元は選挙期間中の現職候補者の公式アカウントだ。

玉城氏自身がその後「不確かな情報」と認めたことからも、少なくとも投稿時点で「裏取引」を客観的事実として断定できる根拠が示されていたとは確認できない。

一方で、政策協定の経緯について政治的に疑問を呈したり、党本部と県連の意思決定過程を批判したりすること自体とは区別して考える必要がある。

時系列で整理

日付確認された動き
8月25日下地氏が自民党本部との政策協定を公表し、不出馬を表明
8月26日下地氏が会見、古謝玄太氏の支援を表明
8月27日知事選告示。高良沙哉選対本部長が演説で「裏取引」と発言
9月1日玉城氏公式Xに「裏取引」とする投稿
同日数時間後に投稿を削除
9月2日玉城氏が「不確かな情報」「手違い」と説明し謝罪
同日夜公式Xで事務所スタッフが経緯を説明
9月3日複数の地元報道などが一連の経緯を報道

沖縄知事選は接戦 SNS発信の正確性も焦点に

沖縄県知事選は8月27日に告示され、9月13日に投開票される。沖縄県選挙管理委員会も選挙日程と候補者情報を公開している。

選挙戦では、古謝氏と玉城氏が最新情勢調査で「横一線」と分析されるなど、激しい競り合いとなっている。

その中で候補者陣営の公式SNSから、事実関係が確認されていない内容が断定的に発信されたことは、単なる投稿ミスだけではなく、選挙期間中の情報発信をどのように管理するかという問題も残した。

編集部まとめ

確認できる事実は、自民党本部と下地幹郎氏が政策協定を結び、下地氏が知事選から撤退して古謝玄太氏の支援に回ったことだ。一方で、玉城陣営が使用した「裏取引」という表現を裏付ける密約などの事実は、9月3日時点で確認されておらず、自民党側と下地氏側も否定している。

玉城氏自身も投稿内容を「不確かな情報」と位置付け、「手違い」として謝罪した。今後は、なぜ確認が取れていない表現が選対本部長の演説で使われ、さらに公式アカウントから発信されるに至ったのか、陣営側の説明が焦点となる。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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