2026年9月3日、東京高等裁判所は、茨城県神栖市長選挙で「まんじゅうや」「だんごさん」と記載された2票を無効とした県選挙管理委員会の裁決をめぐり、木内敏之市長による裁決取り消し請求を棄却した。
木内市長は判決について「大変残念で遺憾」と述べたものの、上告するかどうかは明言せず、弁護士と相談して判断する考えを示した。
一方、対立候補だった前市長の石田進氏は「順当な結果」と評価している。判決は現時点で確定しておらず、木内市長は引き続き市長職にある。
東京高裁が木内市長の請求を棄却
2025年11月9日に投開票された茨城県神栖市長選挙をめぐり、東京高裁は2026年9月3日、木内敏之市長が茨城県選挙管理委員会に求めていた裁決の取り消しを認めなかった。
争点となったのは、投票用紙に候補者名ではなく、
- 「まんじゅうや」
- 「だんごさん」
と記載された2票の有効性だった。
茨城県選管は、これらの記載だけでは木内氏への投票意思が明確とはいえないとして無効と判断。木内氏の当選を無効とする裁決を出していた。
東京高裁も県選管の判断を支持し、2票を無効と認定した。
「まんじゅうや」は候補者本人を示す通称といえるのか
木内市長側は、木内氏の実家が地元の老舗和菓子店であり、市民から「まんじゅうや」「だんごさん」などと呼ばれていたとして、2票は木内氏への投票であると主張していた。
しかし東京高裁は、通称による投票が有効と認められるには、開票区内でその呼び名が広く慣習的に使われ、特定の候補者を指すことが明らかである必要があると指摘した。
そのうえで、「まんじゅうや」「だんごさん」は食品や飲食店などを表す一般的な言葉にとどまり、木内氏本人を指す通称として明確とはいえないと判断した。
神栖市内には和菓子店が少なくとも9軒あることも、候補者を一人に特定できない理由の一つとされた。
神栖市長選は1万6724票で完全同数だった
神栖市が公表した当初の開票結果では、無所属新人だった木内氏と、当時現職だった石田氏が、いずれも1万6724票を獲得した。
得票数が完全に同じだったため、公職選挙法第95条第2項に基づくくじ引きが行われ、木内氏が当選人となった。
当日の投票総数は3万3667票、投票率は44.22%だった。
しかし、石田氏側から異議申し立てがあり、その後、全投票用紙が再点検された。
県選管による審査では、木内氏の票として扱われていた2票と、石田氏の票とされていた1票が、それぞれ無効と判断された。
木内敏之氏
当初:1万6724票
裁決後:1万6722票
石田進氏
当初:1万6724票
裁決後:1万6723票
この結果、石田氏が木内氏を1票上回った。
石田氏側の8票は有効と判断
訴訟では「まんじゅうや」「だんごさん」の2票だけでなく、石田氏の得票として扱われた8票の有効性についても争われた。
この中には、投票欄外への記載がある票や、「田」の一文字が書かれた票などが含まれていた。
東京高裁は、これらについては投票者が石田氏へ投票する意思を読み取ることができるとして、いずれも有効と判断。県選管による票の判定は妥当だと結論付けた。
木内市長「大変残念で遺憾」上告は明言せず
判決後、木内市長は、自身の主張が認められなかったことについて「大変残念で遺憾」と表明した。
木内氏は、和菓子店の息子として生まれ、市民の多くから「団子屋」などと呼ばれてきたと改めて説明。その呼び名が自身への投票と認められなかったことに落胆を示した。
今後、最高裁に上告するかどうかについては、「弁護士と相談し、判決内容を見てから検討する」としており、9月3日の時点では明言していない。
石田氏は「順当な結果」と評価
一方、石田氏は東京高裁の判決について「順当な結果」と評価し、県選管の判断と同じ結論になったことを受け止めた。
木内氏が上告する可能性については、これ以上争いが長期化することへの否定的な考えも示している。
ただし、上告するかどうかを決める権利は木内氏側にある。現段階で手続きが終了したわけではなく、判決確定前に石田氏の当選が最終確定したと断定することはできない。
木内敏之市長はすぐに失職するのか
9月3日の東京高裁判決だけで、木内市長が直ちに失職するわけではない。
木内氏側が上告する可能性を残しているため、判決はまだ確定していない。木内氏は当面、市長職を続けることになる。
今後の焦点は、木内氏側が最高裁に上告するかどうかだ。上告せず東京高裁判決が確定するか、上告後に木内氏側の主張が最終的に退けられた場合、県選管による当選無効の裁決が確定し、木内氏は市長職を失うことになる。
この場合、県選管の裁決では石田氏が1票上回っているため、単純に市長選挙をやり直すケースとは異なる点にも注意が必要だ。
なぜ候補者名以外でも有効票になることがある?
選挙の投票用紙は、候補者の氏名を正確に書くことが原則だが、漢字の誤りやひらがな表記、通称などが直ちに無効になるとは限らない。
投票者が誰に投票しようとしたのかを客観的に判断でき、ほかの候補者と混同する可能性が低い場合には、有効と認められることがある。
一方、「まんじゅうや」のように複数の人物や店舗を連想できる一般的な言葉は、候補者本人を指すと断定できない可能性がある。今回の判決は、地域で一定程度知られた呼び名であっても、投票上の「通称」として認められるには高い明確性が必要であることを示した。
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