田原市内で、いまどこに「盛土」があり、誰が工事を進めているのか。
田原市は9月17日、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に基づく許可・届出情報を更新した。
公開されたのは、盛土規制法に基づいて市が把握している宅地造成や特定盛土などの工事に関する資料だ。そこには工事主の氏名または名称などが記載され、市民も許可・届出の状況を確認できる。
週刊TAKAPIは今回の公表を受け、田原市内で進む盛土について、場所や規模、工事主、施工業者、周辺住民への周知がどのように行われているのかを検証する。
9月17日に「許可・届出」を公表
田原市の新着更新情報には17日、「盛土規制法に基づく許可・届出を公表します」と掲載された。
市の公表ページには、盛土規制法第12条第1項による許可、第16条第1項による許可、第21条第1項による届出について、それぞれ整理票が掲載されている。
第12条第1項による許可は2026年8月31日時点、第16条第1項による許可は2026年3月31日時点、第21条第1項による届出は2025年7月31日時点の情報となっている。
市は第12条の許可について、法律の規定に基づき「工事主の氏名又は名称等を公表します」と説明している。
つまり今回の資料は、単に「盛土の許可が出ている」という件数だけを見るものではない。
どこで、誰が盛土などの工事を行おうとしているのか。
その実態を市民側から確認するための資料でもある。
規制対象は「宅地造成」だけではない
「盛土」と聞けば、住宅地を造成するために土を積み上げる工事を思い浮かべるかもしれない。
しかし、盛土規制法が対象とする工事はそれだけではない。
田原市は具体例として、宅地造成に伴う盛土・切土のほか、残土処分場における盛土・切土、太陽光発電施設を設置するための盛土・切土を挙げている。
さらに、一定規模以上の「一時的な土石の堆積」も対象となり、土石のストックヤードでの仮置きなどが例示されている。
そのため、公表された案件を検証する際には、「盛土がある」という事実だけでは足りない。
何のために土を動かしているのか。その土地が最終的にどのように利用されるのか。周辺に住宅や農地、道路、河川などがあるのか。
個々の案件ごとに確認する必要がある。
田原市全域が規制区域に
田原市では2025年5月9日から、市内全域が盛土規制法に基づく「宅地造成等工事規制区域」に指定された。
一定規模以上の盛土や切土、土石の堆積などを行う場合には、原則として工事着手前に市長の許可を受ける必要がある。
ただし、道路や公園、河川などの公共施設用地で行われる工事や、法令で定められた一部の工事などは許可の対象外となる場合がある。
このため、市の公表一覧だけを見て「田原市内に存在するすべての盛土」と捉えることはできない。
あくまで盛土規制法上、公表対象となっている許可・届出を確認する資料として見る必要がある。
工事主の名前も公表対象に
今回、特に注目したいのが「誰が工事を行うのか」という点だ。
田原市は許可・届出について、工事主の氏名または名称などを公表するとしている。
法人が工事主となっている案件であれば、法人名が公表情報から確認できる場合がある。
一方で、「工事主」と実際に工事を施工する「工事施行者」は同じとは限らない。
田原市が示している工事現場の標識様式には、工事主だけでなく、工事施行者などを記載する欄も設けられている。
したがって、公開資料から工事主を確認した上で、現地に掲示された標識や市への取材などを通じ、実際の施工業者まで確認することが今後の検証ポイントになる。
周辺住民への「事前周知」も
もう一つ見逃せないのが、周辺住民への説明だ。
田原市は盛土規制法の周知資料で、規制対象となる盛土等に対する措置として、市による許可地一覧の公表、工事主による周辺住民への事前周知、工事現場への標識掲示を示している。
市の申請関係書類にも「住民への周知措置を講じたことを証する書類」が用意されている。
つまり、許可を得て工事を始めればそれで終わりではない。
周辺住民に対し、どの範囲まで、いつ、どのような方法で工事内容を知らせたのか。
特に大規模な盛土や残土処分場などの案件では、実際の周知状況を確認することも重要になる。
現場には標識の掲示が必要
許可を受けた工事については、現場での情報公開も求められている。
田原市は許可後の手続きについて、許可を受けた者は工事場所の見やすい位置に標識を設置する必要があるとしている。
標識には工事に関する情報が記載されるため、公表資料と現地を照合する手掛かりになる。
「一覧には掲載されているが、実際の現場はどうなっているのか」。
公開された行政資料だけで終わらせず、現地で標識や工事状況を確認することで、許可後の状況まで追うことができる。
一定規模以上なら中間検査・定期報告も
盛土規制法では、大規模な工事について許可を出した後のチェックも設けられている。
田原市によると、一定規模以上の工事では中間検査が必要となり、さらに対象となる工事では3カ月ごとの定期報告が求められる。
工事が完了した際にも、宅地造成・特定盛土等では完了検査、一時的な土石の堆積では確認の手続きが必要となる。
ここで重要になるのは、「許可を出したか」から「許可通り工事が進んでいるか」へ視点を移すことだ。
公表された案件の中に中間検査や定期報告の対象となる規模の工事があるのか。
対象案件について市は実際にいつ確認し、問題は確認されていないのか。
これも今後、市側に確認すべきポイントとなる。
「大規模盛土造成地マップ」とは別物
田原市には以前から「大規模盛土造成地マップ」が存在する。
過去の調査では、市内で谷埋め型29カ所、腹付け型2カ所の大規模盛土造成地が抽出された。その後の調査で、このうち8カ所については農地開発などによる造成であることが確認され、対象から除外されている。
ただし、この「大規模盛土造成地」と今回公表された盛土規制法上の許可・届出案件は別のものだ。
市も、大規模盛土造成地としてマップに掲載されていること自体が、その土地の危険性を示すものではないと説明している。
過去に造成された土地を把握する資料と、現在の盛土規制法に基づく許可・届出を混同してはならない。
「どこで、誰が、何のために」を追う
盛土規制法によって、許可制度だけでなく、公表、住民への周知、現場への標識掲示、検査や定期報告といった仕組みが整備された。
だが、制度が存在することと、個々の現場で実際にどう運用されているかは別の問題だ。
今回、田原市が公開した許可・届出情報は、その実態を検証する出発点になる。
週刊TAKAPIでは今後、公開資料について、所在地、工事主、工事規模、工事目的などを確認するとともに、必要に応じて施工業者、周辺住民への事前周知、現地標識、市による中間検査・定期報告の状況についても取材を進める。
田原市内のどこで、誰が、何のために土を動かしているのか。
そして行政は、その工事を許可した後、どこまで確認しているのか。
公表された一覧から、田原市の「盛土」の現在地を追う。
何があった?
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