秋の味覚を代表する柿に、異変が起きている。
愛知県内で2026年秋、果実の汁を吸う「果樹カメムシ類」が大量発生し、柿の生産農家に深刻な影響を与えている。
被害を受けた柿は表面が黒ずみ、凹凸ができるなど、見た目が大きく変化。商品として出荷できなくなるケースも相次いでいる。
愛知県が9月下旬に実施した調査では、柿の被害果率が11.32%に達し、過去10年で最も高い水準を記録した。
特に影響が懸念されるのが、全国有数の柿の産地として知られる愛知県豊橋市だ。
豊橋市の特産品「次郎柿」も被害を受けており、一部の農園では収穫予定の柿の約7割に被害が確認されているという。
秋の収穫シーズンを迎える中、農家の収入や地域の農業経済への影響が懸念されている。
愛知県の柿被害は過去10年で最悪 平年の約3.6倍に
愛知県農業総合試験場は10月5日、県内全域を対象に果樹カメムシ類の発生に関する注意報を発表した。
県内11地点、22の柿栽培ほ場を対象とした9月下旬の調査では、カメムシによる被害果率が過去10年で最も高くなった。
愛知県の柿のカメムシ被害率
| 調査区分 | 被害果率 |
|---|---|
| 2026年 | 11.32% |
| 平年 | 3.18% |
| 2025年 | 0.45% |
出典:愛知県農業総合試験場・2026年9月下旬調査
今年の被害率は平年の約3.6倍、前年の約25倍に相当する。
県全体の平均値であり、すべての農園で同じ割合の被害が発生しているわけではない。しかし、被害が特定の農園に集中するケースもあり、地域や栽培環境によって深刻さに差が生じている。
豊橋市の名産「次郎柿」にも被害 農園では約7割が被害に
豊橋市は、次郎柿の全国有数の生産地として知られている。
次郎柿は、シャキシャキとした歯ごたえと濃厚な甘みが特徴で、秋の贈答品としても人気が高い。
しかし、今年は収穫を目前に控えた柿がカメムシの被害に遭っている。
名古屋テレビの報道によると、豊橋市の「チロルの農園」では、被害に遭った柿が全体の約7割に及んでいるという。
カメムシに吸われた柿は表面が黒く変色し、果皮がでこぼこになるなど、通常の柿とは大きく異なる状態になっている。
同農園の岩瀬宏二さんは、被害を受けた柿について、見た目が悪くなり商品にならないと説明。カメムシの数についても、これまで経験したことがないほど多いと語っている。
農園では必要最低限の農薬散布などの対策を続けているが、カメムシを取り除いても再び飛来する状況だという。
カメムシに吸われた柿はなぜ黒くなる? 変形や落果が起きる仕組み
果樹カメムシ類は、針のような口を果実に刺して内部の汁を吸う害虫だ。
吸汁された部分では果実の正常な成長が妨げられ、次のような被害が発生する。
- 果皮の一部が黒色や褐色に変色する
- 吸汁された部分がへこみ、表面に凹凸ができる
- 果実の形がいびつになる
- 生育途中の果実が落下する
- 外観品質が低下し、出荷基準を満たせなくなる
特に柿は外観も商品価値を左右するため、味への影響が限定的であっても、傷や変形によって販売が難しくなる場合がある。
農林水産省も、果樹カメムシ類による吸汁が落果や奇形果の原因になると説明している。
新城市では約2500匹を確認 豊川市でも過去10年最多の水準
カメムシの大量発生は豊橋市だけの問題ではない。
愛知県の調査によると、新城市に設置された予察灯では、8月下旬から9月下旬にかけて、チャバネアオカメムシが2,486匹確認された。
平年の224匹と比較すると、約11.1倍に相当する。
新城市のカメムシ捕獲数
| 種類 | 2026年 | 平年 |
|---|---|---|
| チャバネアオカメムシ | 2,486匹 | 224匹 |
| ツヤアオカメムシ | 682匹 | 33匹 |
| クサギカメムシ | 74匹 | 72匹 |
出典:愛知県農業総合試験場。8月第6半旬~9月第5半旬の予察灯誘殺数
また、豊川市に設置されたフェロモントラップでも、チャバネアオカメムシの捕獲数が過去10年で最多となった。
東三河地域でもカメムシの発生が顕著になっていることが分かる。
なぜ2026年はカメムシが大量発生したのか? 温暖化との関係も
カメムシが大量発生した背景には、複数の要因が考えられる。
農林水産省によると、果樹カメムシ類はスギやヒノキの球果などを餌に繁殖し、山林で餌が不足すると果樹園に飛来して果実を吸う。
さらに、気温が高い状態が続くと活動期間が長くなり、繁殖や果樹園への飛来に影響する可能性がある。
名古屋テレビの取材に対し、南九州大学の新谷喜紀教授は、気温が高いほど世代交代が進みやすく、秋の増殖には温暖化も関係している可能性があるとの見方を示している。
ただし、今回の大量発生が温暖化だけによって引き起こされたと断定することはできない。
カメムシ被害で柿の価格は上がる? 出荷量と農家収入への影響
今回の被害で懸念されるのが、柿の流通量と農家の収入への影響だ。
カメムシによって外観が悪くなった柿は、通常の市場流通に乗せられない場合がある。
その結果、収穫量が確保できても、正規品として販売できる数量が減少する可能性がある。
特に贈答用として販売される高品質な柿は、見た目の美しさも重要な評価基準となる。
一方、被害によって直ちに小売価格が上昇するとは限らない。価格は市場への入荷量や需要、他産地の生産状況などにも左右されるためだ。
豊橋市のチロルの農園では、被害を受けた柿を通常より安く販売することや、酒類への加工なども検討しているという。
こうした規格外品の活用が、農家の損失をどこまで抑えられるかも注目される。
カメムシに吸われた柿は食べられる? 黒い部分は大丈夫なのか
カメムシの被害を受けた柿について、消費者が気になるのが安全性だ。
カメムシに吸われて表面が黒くなったからといって、必ずしも果実全体が食べられなくなるわけではない。
ただし、吸汁された部分は果肉が硬くなったり、品質が低下したりする場合がある。
また、黒ずみの原因がカメムシではなく、腐敗や病気などである可能性もある。
異臭、カビ、著しい軟化などがある場合は食べるのを避けたい。
外観に傷がある柿を購入する場合は、販売者に状態を確認することが望ましい。
愛知県が注意報を発表 柿だけでなくミカンなどにも警戒
愛知県は10月5日、果樹カメムシ類の多発に関する注意報を県内全域に発表した。
対象は柿だけではなく、ミカンなどのカンキツ類を含む果樹全般だ。
カメムシは局地的に大量飛来することがあり、農園ごとに被害状況が大きく異なる。
県は発生状況を確認し、必要に応じて登録農薬を適切に使用するよう呼びかけている。
収穫期に薬剤を使用する場合は、収穫前日数などの使用基準を守る必要がある。
【週刊TAKAPI考察】豊橋の次郎柿を守れるか 大量発生が突きつける農業の課題
今回の問題は、単なる害虫の大量発生にとどまらない。
豊橋市の次郎柿は、地域を代表する農産物の一つだ。
農家が一年を通じて栽培管理を続け、ようやく収穫期を迎えた段階で商品価値が失われれば、経営への影響は大きい。
今回、県内の平均被害果率が11.32%だった一方、一部の農園では約7割に被害が確認された。
この差は、県全体の平均値だけでは農家ごとの経営リスクを十分に把握できないことを示している。
今後、行政や農業関係団体には、被害の実態把握に加え、規格外品の販路確保、防除費用の負担軽減、早期警戒体制の充実などが求められる。
重要なのは、カメムシが何匹発生したかだけではなく、農家が実際にどれだけの収入を失うのかという点だ。
被害が長期化すれば、生産意欲の低下や産地の維持にも影響する可能性がある。
週刊TAKAPIとしても、豊橋市をはじめとする東三河地域の柿農家への影響を注視したい。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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