東三河で特殊詐欺の被害が拡大している。
豊橋市では2026年9月末までに129件、約9億9100万円の被害が確認された。豊川市も6月末時点で69件、4億5958万円に上り、前年同期の被害額の約5.4倍となった。
蒲郡市では9月末までに20件、約2億200万円の被害が発生。ニセ警察詐欺による高額被害が目立っている。
週刊TAKAPIは豊橋、豊川、蒲郡、新城、田原の東三河5市について、警察署や自治体が公表した犯罪統計、防犯情報などを照合した。
その結果、従来のオレオレ詐欺だけでなく、警察官や市役所職員を装う電話、SNSを通じた投資話、インターネットバンキングを利用した送金など、被害の手口が広がっていることが分かった。
豊橋市は129件、被害額約9億9100万円 8月末からさらに増加
豊橋署が10月に公表した犯罪情勢によると、豊橋市内では9月末までに特殊詐欺が129件発生し、被害額は約9億9100万円に上った。
同署が9月29日に示した8月末時点の被害額は9億8866万1343円で、前年同期より7億1045万6465円増えていた。
8月末までの時点で約3.6倍に膨らんでいたことになる。
被害を防いだ事例もある。
8月には、80代男性が証券会社に対し、金融庁などから指示されたため保有株式をすべて売却したいと相談した。
男性は大阪府警とやり取りしていると説明し、秘密捜査のため内容を話せないとも述べていた。
証券会社の担当者が不審に思い、警察へ通報したことで被害を未然に防いだ。
豊橋署ではこのほか、インターネットバンキングによる送金や電子マネー購入を巡り、金融機関やコンビニエンスストアの従業員が詐欺を見抜いた事例も公表している。
豊川市は69件、4億5958万円 前年上半期の約5.4倍
豊川市の被害も大きい。
市が10月号の広報で公表した2026年上半期の特殊詐欺被害は69件、4億5958万円。
2025年上半期は11件、8478万円だった。市の公表値では被害額が約5.4倍、認知件数は約6.3倍となっている。
今年上半期の手口別内訳では、還付金詐欺が26件と最も多かった。
続いてSNS型投資詐欺が17件、ニセ警察詐欺が13件、架空料金請求詐欺が5件、SNS型ロマンス詐欺が4件などとなっている。
豊川市・2026年上半期の手口別認知件数

還付金詐欺とSNS型投資詐欺、ニセ警察詐欺の3種類だけで56件に上る。
高齢者が電話でだまされる手口だけでなく、SNSで投資に誘われるケースも相次いでいることが数字から分かる。
「3万5000円の還付金」が約100万円の被害に 豊川市が実例を公表
豊川市の広報には、市内で実際に起きた還付金詐欺の被害も紹介されている。
被害に遭ったのは、一人暮らしの70代女性。
自宅に電話があり、保険に関する見直しで3万5000円を返金できると説明された。手続きの期限が迫っていると急かされ、女性はコンビニエンスストアのATMへ向かった。
電話の相手に指示されるまま操作し、翌日も再びATMを利用した。
その後、店員が不審な状況に気付き、警察へ通報。女性は合計約100万円を振り込んでいたことを知った。
女性は還付金詐欺の存在を知らなかったわけではなかったという。
知識があっても、期限を区切られ、電話で操作を急かされることで被害につながった事例だ。
豊川市は、詐欺の電話がインターネットバンキングへ誘導する手口にも変化しているとして注意を呼びかけている。
蒲郡市は20件、約2億200万円 ニセ警察詐欺だけで約9404万円の被害
蒲郡市では9月末までに20件の特殊詐欺が確認され、被害額は約2億200万円となった。
蒲郡署が公表した6月末時点の被害は14件、約1億5720万円だった。
6月末と9月末の公表値を比較すると、3か月間で6件、被害額は約4480万円増えた計算になる。
特に目立つのがニセ警察詐欺だ。
蒲郡署によると、6月末までに確認されたニセ警察詐欺は5件で、被害額は約9404万円に上った。
当時の特殊詐欺被害額全体の約6割を占めていたことになる。
警察官を名乗って犯罪への関与を疑わせたり、捜査のために資産を確認する必要があると説明したりして、現金の送金を求める手口だ。
SNSのビデオ通話で偽の警察手帳や書類を見せるケースもある。
警察は、SNS上で取り調べを行ったり、捜査を理由に送金を要求したりすることはないとしている。
新城市は市役所や郵便局員を装う電話 還付金を口実に接触
新城市でも、不審な電話が相次いで確認されている。
市が9月17日に更新した防犯情報によると、4月には警察官を装い、事件への関与を疑わせる電話があった。
6月には市役所職員を名乗って医療費の還付金を持ち掛ける電話、7月には郵便局員を装って荷物の確認を求める電話などが報告されている。
市は、医療費や保険料の還付については文書で案内しており、電話でATMへ誘導することはないと説明している。
新城市の特殊詐欺認知件数は2024年、2025年ともに5件だった。
一方、2026年の最新の被害件数と金額については、今回確認した市の公表資料では明らかになっていない。
田原市でも警察官を装った被害 防犯電話購入に最大7000円補助
田原市では今年2月、大阪府警の警察官を名乗る人物から電話を受け、現金をだまし取られる被害が発生している。
警察が3月に配信した情報によると、被害者は口座が犯罪に使われているなどと説明され、資金を確認する必要があるとして、複数回にわたって現金を振り込んでいた。
また、田原署は8月、郵便局員を装い、発送した荷物にキャッシュカードが入っていたなどと告げる不審電話が管内で多数確認されていると発表した。
田原市はこうした詐欺対策として、65歳以上の人だけで構成される世帯を対象に、防犯機能付き電話機などの購入費用を補助している。
補助額は購入・設置費の2分の1で、上限7000円。対象機器や申請期限などの条件がある。
田原市についても、9月末時点の市全体の特殊詐欺認知件数と被害額は確認できていない。
5市の数字を単純合算できない理由
今回確認した被害統計は、各市で集計期間が異なる。
豊橋市と蒲郡市は9月末、豊川市は6月末時点の数字だ。
また、特殊詐欺の統計にはSNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺なども含まれており、前年との比較では手口分類の取り扱いにも注意が必要となる。
そのため、今回示した3市の金額を単純に足し合わせ、同じ期間の「東三河全体の被害総額」とすることは適切ではない。
豊川、新城、田原の最新の被害状況を含め、5市を同じ条件で比較するには、各警察署から統一した集計期間の資料を取得する必要がある。
金融機関やコンビニの対応が被害防止につながる
今回確認した事例では、金融機関やコンビニエンスストアの従業員が詐欺に気付き、送金や現金の受け渡しを防いでいた。
豊川市は、5回にわたって特殊詐欺被害を防いだコンビニ従業員の取り組みも紹介している。
その従業員は、現金を封筒に入れて送るよう指示されていた客に事情を尋ね、警察への通報につなげていた。
被害防止には、不審な連絡を受けた本人が送金を止めることに加え、金融機関や店舗での声掛けも役立っている。
家族や警察へ相談するよう指示されず、「誰にも話さないように」と求められた場合は、特に注意が必要だ。
編集部まとめ
東三河では、豊橋市の特殊詐欺被害が9月末までに約9億9100万円、蒲郡市も2億円を超えた。豊川市では上半期だけで69件、約4億6000万円の被害が確認されている。
豊川市の手口別統計では、還付金詐欺26件、SNS型投資詐欺17件、ニセ警察詐欺13件が目立つ。
被害は高齢者だけの問題ではなく、SNSを利用する世代にも広がっている。
一方、東三河5市の被害を同じ期間、同じ区分で比較できる最新資料はそろっていない。
地域全体の実態を明らかにするには、各署の認知件数や被害金額に加え、被害者の年齢層、利用された連絡手段、送金方法なども確認する必要がある。
特記事項
本記事は2026年10月21日までに公表された愛知県警察、東三河各警察署、豊川市、新城市、田原市などの統計・防犯資料を照合して構成した。
豊橋市と蒲郡市は9月末、豊川市は6月末の数値を使用している。集計期間が異なるため、同一期間の地域別被害額として合算していない。
豊川市の2025年・2026年上半期の比較は、市が公表した数値に基づく。SNS型詐欺を含む手口分類については、統計上の取り扱いを確認する必要がある。
新城市と田原市については、2026年9月末時点の被害件数と総額を確認できていない。被害が少ない、あるいは発生していないことを意味するものではない。
本誌が各公表資料を独自に照合した記事であり、警察署や被害者本人への新たな直接取材を実施したものではない。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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