世界中が注目したオリンピックの聖火。その炎を支えていたのが、実は愛知県豊川市の企業だったことをご存じだろうか。
東京2020オリンピック、パリ2024オリンピック、そして愛知・名古屋2026アジア競技大会。
世界的なスポーツイベントで使用される聖火リレートーチの製造に携わってきたのは、豊川市御津町に本社を構える「新富士バーナー株式会社」だ。
2026年10月7日、愛知県の川原副知事が同社を訪問。本社工場を視察し、世界的な大会を支える燃焼技術や製造工程について説明を受けた。
愛知県東三河総局が10月19日に公表した。
世界の舞台で採用される技術が、なぜ豊川市から生まれたのか。
週刊TAKAPIでは今回の副知事視察をきっかけに、地元では意外と知られていない豊川企業の実力と、世界に通用するものづくりの背景を掘り下げる。
愛知県副知事が豊川市の新富士バーナーを視察 何が行われた?
愛知県東三河総局の発表によると、川原副知事は10月7日、新富士バーナー株式会社を訪問した。
視察では、同社が製造に携わった聖火リレートーチについて説明を受け、本社工場の製造現場を見学した。
特に注目されたのは、次の3大会に関係する技術だ。
- 東京2020オリンピック
- パリ2024オリンピック
- 愛知・名古屋2026アジア競技大会・アジアパラ競技大会
副知事は、それぞれの聖火リレートーチの性能や構造について説明を受けたほか、部品製造や検査工程も視察した。
今回の訪問は、東三河の企業が世界的なスポーツイベントを支えている事実を改めて示す機会となった。
実は豊川市御津町に本社!新富士バーナーとはどんな企業なのか
「新富士バーナー」という社名を聞いて、すぐに豊川市の企業だと分かる人は、どれほどいるだろうか。
アウトドア用品に詳しい人なら、人気ブランド「SOTO」を知っているかもしれない。
実は、そのSOTOブランドを展開しているのが新富士バーナーである。
同社は1978年3月に愛知県蒲郡市で設立。1991年には現在の豊川市御津町に本社工場を移転した。
会社概要によると、従業員数は130人。アウトドア用のバーナーやランタンだけでなく、工業用バーナー、草焼バーナー、各種着火器具などを手掛けている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 新富士バーナー株式会社 |
| 本社所在地 | 愛知県豊川市御津町御幸浜一号地1番地3 |
| 設立 | 1978年3月30日 |
| 代表者 | 山本晃 代表取締役社長 |
| 従業員数 | 130人(会社公表値) |
| 主なブランド | SOTO |
| 主な事業 | アウトドア用品・工業用燃焼器具などの製造販売 |
名前は「新富士」でも、本拠地は豊川市
興味深いのは、その企業名だ。
「新富士」という名称から、静岡県や富士山周辺の企業を想像する人もいるかもしれない。
しかし、実際の本社は豊川市にある。
しかも同社は、愛知県の企業紹介で、全国に営業所を設けず豊川の本社を拠点に社員が活動していると説明している。
世界的な大会に採用される技術を持ちながら、事業活動の中心を東三河に置き続けている点は注目に値する。
東京五輪・パリ五輪の聖火トーチ なぜ豊川の企業が選ばれた?
オリンピックの聖火リレーで最も重要なのは、炎を安定して燃やし続けることだ。
屋外で行われる聖火リレーでは、強風や雨など厳しい気象条件にさらされる。
そこで求められるのが、高度な燃焼技術である。
新富士バーナーは、東京2020オリンピックの聖火リレートーチの製造に携わった。
その技術力が海外でも評価され、パリ2024オリンピックでも燃焼部とガスボンベの製造を担当した。
雨や風に強い「プラチナ発光技術」
同社の技術を語るうえで欠かせないのが、プラチナを活用した燃焼技術だ。
もともとはランタンの開発で培われた技術で、プラチナ製のメッシュを加熱する仕組みが、雨や風に強い聖火リレートーチの実現につながった。
2024年の東海テレビの報道では、時速60キロの突風や警報級の雨にも耐えられる性能が紹介されている。
つまり、豊川市の企業が長年積み重ねてきたアウトドア製品の開発技術が、世界最大級のスポーツイベントを支える技術へと発展したのである。
パリ五輪の組織委員会から突然メール 世界が豊川の技術を求めた
新富士バーナーがパリ五輪に携わることになった経緯も興味深い。
2022年、パリ五輪の組織委員会から同社にコンペ参加の招待メールが届いた。
豊川市が公開した山本晃社長へのインタビューによると、同社は選定される保証がないなかで開発に挑戦した。
東京大会とは異なるデザインに対応しなければならず、製作期間も短かったという。
それでも開発チームは試行錯誤を重ね、強い雨風に耐えられるトーチを完成させた。
世界的な大会で採用された背景には、長年の研究開発と現場の技術者たちの積み重ねがあった。
2026年アジア大会でも採用 豊川の技術が再び国際舞台へ
そして2026年。
新富士バーナーの技術は、愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会・アジアパラ競技大会の聖火リレートーチにも採用された。
地元・愛知県で開催される国際大会という意味でも、今回の採用は特別なものといえる。
2026年7月に公開されたトーチは、愛知県立芸術大学の本田敬教授がデザインを担当。日本刀のシルエットを取り入れた造形が特徴となっている。
デザインと燃焼技術、それぞれの専門性を組み合わせて国際大会を支えている。
東京、パリ、そして愛知・名古屋。
大会をまたいで採用されてきた事実は、新富士バーナーの技術が一度限りではなく、継続的に評価されてきたことを物語る。
【週刊TAKAPI考察】なぜ豊川市から世界に通用する企業が生まれるのか
今回のニュースで注目したいのは、単にオリンピックの聖火トーチを製造したという実績だけではない。
豊川市に本社を置く企業が、独自技術によって世界的な仕事を獲得しているという点だ。
① 東三河に根付くものづくりの蓄積
東三河は自動車関連産業をはじめ、多様な製造業が集積する地域だ。
新富士バーナーも、もともとは工業用バーナーなどの製造を中心としていた。
その技術をアウトドア用品に応用し、さらに聖火リレートーチへと発展させている。
一つの技術を異なる市場に展開する力が、同社の競争力の源泉になっていると考えられる。
② 大企業でなくても世界に挑戦できる
従業員130人という規模は、巨大なグローバル企業と比較すれば決して大きくない。
それでも、世界的な大会で求められる厳しい条件に対応している。
これは、企業の規模だけではなく、専門性や独自技術が国際的な競争力につながることを示す事例だろう。
③ 豊川市の産業イメージを変える可能性
豊川市といえば、豊川稲荷や農業、工業団地などを思い浮かべる人も多い。
しかし、世界のオリンピックを支える企業が存在することは、地域の産業を紹介するうえで大きな強みになる。
地元企業の技術を市民や学生に伝えることは、ものづくりへの関心や地元就職への意識を高めるきっかけにもなり得る。
聖火だけではない 豊川市の防災にも貢献
新富士バーナーの取り組みは、世界的なスポーツイベントにとどまらない。
同社は2024年の能登半島地震で、被災地に数百台のキャンプ用バーナーを寄付したことを明らかにしている。
さらに、2026年5月20日には豊川市と「災害時における物資の提供に関する協定」を締結したと公表した。
アウトドア用品は、災害時の調理や生活を支える道具としても役立つ。
世界の聖火を支える技術が、地元住民の暮らしを守ることにもつながっている点は見逃せない。
まとめ|世界の聖火を支えたのは、豊川市のものづくりだった
東京五輪、パリ五輪、そして愛知・名古屋2026アジア大会。
世界的なスポーツイベントを支える聖火リレートーチに、豊川市の企業が持つ技術が使われてきた。
今回の愛知県副知事による本社工場視察は、その実績を改めて知る機会となった。
普段は何気なく通り過ぎている地元の工場。その中で、世界から求められる技術が生み出されているかもしれない。
世界を照らす炎の技術は、実は豊川市から生まれていた。
東三河のものづくりの底力を示す企業として、新富士バーナーの今後にも注目したい。
※本記事は愛知県、豊川市、新富士バーナーの公表資料および報道資料をもとに構成しています。考察部分は週刊TAKAPI編集部による分析です。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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