マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に対し、新たなワクチン開発が進んでいる。
兵庫医科大学、長崎大学、製薬大手の第一三共による共同研究グループは2026年10月22日、SFTSウイルスに対する3種類のmRNAワクチン候補を開発し、マウス実験で感染による死亡を防ぐ効果を確認したと発表した。
実験では、ワクチンを接種していないマウスが全例死亡した一方、3種類のワクチンをそれぞれ接種したマウスは全例が生存した。
ただし、人に対する安全性や有効性はまだ確認されておらず、実用化の時期も決まっていない。
研究成果は2026年9月23日、国際学術誌「npj Vaccines」に掲載された。防御メカニズムの解明により、有効な予防ワクチン開発へ期待+1
SFTSワクチンはいつ実用化される? 2026年10月時点の開発状況
最も気になるのは、今回開発されたワクチンをいつ接種できるようになるのかという点だ。
2026年10月30日時点で、一般向けの接種開始時期や発売日は発表されていない。
今回の成果は前臨床研究、つまり人を対象とした臨床試験に進む前の段階に位置づけられる。
今後は安全性、接種量、免疫の持続期間などの評価が必要となる。
一方、10月27日のメ~テレの報道では、研究グループが将来的な人向けワクチン開発を視野に入れつつ、まずはペット向けの実用化を目指す方針であると伝えている。名古屋テレビ【メ~テレ】
| 項目 | 2026年10月時点 |
|---|---|
| ワクチン候補 | 3種類を開発 |
| マウスでの効果 | 各候補の接種群で全例生存 |
| 人への有効性 | 未確認 |
| 一般向け接種 | 不可 |
| 実用化時期 | 未定 |
| 今後の方向性 | 追加研究、ペット向け実用化の検討 |
SFTSとは? マダニが媒介する致命率10〜27%の感染症
SFTSは、SFTSウイルスによって引き起こされる感染症だ。
主にウイルスを保有するマダニに刺されることで感染し、発熱や消化器症状などを引き起こす。
研究グループは、SFTSの致命率を10〜27%と説明している。
ただし、この数字は研究や集計対象によって異なる。すべての感染者が同じ割合で死亡するという意味ではない。
SFTSは重症化すると命に関わるため、早期の医療機関受診が重要となる。
SFTSの初期症状は? 発熱・下痢・倦怠感などに注意
SFTSの潜伏期間は一般に6日〜2週間程度とされている。
初期症状には、発熱、食欲低下、全身の倦怠感、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などがある。
重症化すると、意識障害や出血傾向などが現れることもある。
注意したいのは、これらの症状がSFTSだけに特有のものではない点だ。
マダニに刺された可能性がある場合や、草むら・山林などで活動した後に体調を崩した場合は、屋外活動歴を医療機関に伝えることが重要となる。
SFTSワクチンの効果は? マウス実験で全例生存した理由
今回、研究グループが開発したのは、SFTSウイルスの異なるタンパク質を標的とする3種類のmRNAワクチンだ。
| ワクチン | 主な感染防御の仕組み |
|---|---|
| Gnワクチン | ウイルスの感染能力を抑える中和抗体 |
| Gcワクチン | 中和抗体と細胞性免疫 |
| NPワクチン | CD4陽性T細胞などによる免疫反応 |
ワクチンを接種したマウスにSFTSウイルスを感染させた結果、いずれの接種群でも全例が生存した。
特に注目されるのは、3種類のワクチンがそれぞれ異なる仕組みで感染防御に働いたことだ。
この結果は、将来的に複数の免疫反応を利用したワクチン設計につながる可能性がある。
ただし、生存率100%という結果は特定条件下のマウス実験で得られたものであり、人間で100%の予防効果があるという意味ではない。 長崎大学 高度感染症研究センター+1
なぜ第一三共・兵庫医科大学・長崎大学が共同開発したのか
今回の研究には、兵庫医科大学の黒田悦史教授、長崎大学の安田二朗教授、第一三共の研究者らが参加した。
研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発事業による支援を受けて実施された。
ワクチン開発には、ウイルスに関する研究、免疫反応の解析、ワクチン技術など複数の専門領域が必要となる。
今回の成果は、大学と製薬企業による共同研究の一例となった。長崎大学 高度感染症研究センター+1
SFTSは愛知県でも感染拡大、豊橋市では2026年に初確認
SFTSは愛知県東三河地域にとっても身近な感染症となりつつある。
豊橋市では2026年9月8日に市内初の患者が確認され、その後、9月10日、9月28日、10月7日にも感染例が報告された。
豊橋市・2026年
4例
10月16日時点
愛知県・2026年
12例
10月16日時点
豊橋市の公式資料によると、市内で確認された4人には50代から80代の患者が含まれ、発熱、意識障害、血小板減少などの症状が報告されている。
また、感染が疑われる行動歴として、土木作業や農作業が記載された事例もある。
豊橋市の2021年から2025年までの統計ではSFTS患者の報告はなく、2026年に初めて4例が確認された。/豊橋市+1
マダニに刺されないための予防方法は? 草刈り・農作業・散歩でも注意
SFTSワクチンの実用化までは、マダニに刺されない対策が重要となる。
厚生労働省は、草むらや藪などに入る際、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を減らすよう呼びかけている。
特に注意したいのは、山登りだけでなく、畑仕事、庭の草刈り、農作業、ペットの散歩など日常的な活動でもマダニに接触する可能性があることだ。
屋外活動後は入浴し、首、耳、脇の下、足の付け根、膝の裏などにマダニが付着していないか確認することが推奨されている。厚生労働省
SFTSに治療薬はある? ファビピラビルとの違い
SFTSには、2024年6月に抗ウイルス薬「ファビピラビル」が国内で承認されている。
ただし、ファビピラビルは感染後の治療に使用する薬であり、感染そのものを予防するワクチンではない。
今回の研究は、感染前に免疫を獲得させ、発症や重症化を防ぐ手段の開発につながる可能性がある。
治療薬とワクチンは役割が異なり、今後も双方の研究が重要となる。厚生労働省
SFTSワクチン開発の今後は? ペット向け実用化も焦点
今回の研究では、Gn、Gc、NPという異なるタンパク質を標的にしたワクチン候補が、いずれもマウスを致死的な感染から保護した。
研究グループは、3種類を組み合わせることで防御効果が高まる可能性も示している。
10月27日の報道では、黒田悦史教授がワクチン開発を進める背景として感染者の増加に言及したほか、複数のワクチン候補の組み合わせや海外での開発競争にも触れた。
人向けワクチンだけでなく、ペット向けワクチンの研究がどこまで進むかも今後の注目点となる。
ただし、ペット向けについても承認や販売が決定したわけではない。名古屋テレビ【メ~テレ】+1
まとめ|SFTS新ワクチン開発は前進、実用化までは感染予防が重要
第一三共、兵庫医科大学、長崎大学の共同研究により、SFTSに対する3種類のmRNAワクチン候補がマウス実験で高い感染防御効果を示した。
今回の成果は、予防ワクチンがまだ承認されていないSFTSに対し、新たな選択肢を生み出す可能性がある。
しかし、人に対する効果はまだ検証されていない。研究成果への期待と、現在確認されている科学的事実を区別する必要がある。
愛知県や豊橋市でも感染が報告されている中、今後の研究進展が注目される。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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