【静岡県・富士】アパホテル富士中央の運営会社が民事再生、負債約18億円 売上回復でも経営破綻した理由とは?

鈴和観光が民事再生手続き開始、負債約18億円。アパホテル富士中央の経営悪化の背景を考察する週刊TAKAPI記事

静岡県富士市で「アパホテル〈富士中央〉」を運営する株式会社鈴和観光が、2026年10月15日、静岡地方裁判所富士支部から民事再生手続きの開始決定を受けた。

帝国データバンクの調査を伝えた10月30日付の報道によると、負債総額は約18億円。同社は1957年創業の老舗企業で、1981年からホテル事業を展開してきた。

注目したいのは、コロナ禍で落ち込んだ売上高が回復していたにもかかわらず、経営再建に至らなかった点だ。

2025年10月期の年間収入高は約4億円。しかし、過去の設備投資に伴う借入金の返済負担に加え、人件費や水道光熱費の上昇が収益を圧迫していたという。

なぜ、全国的に知名度の高いホテルブランドを掲げながら、経営を立て直せなかったのか。

週刊TAKAPIでは、公表された経営経緯を整理し、地方ホテルが直面する構造的な問題を考察する。

鈴和観光とは? 約70年の歴史を持つ地元企業

鈴和観光は1957年に創業。当初はドライブインを運営し、その後、ボウリング場事業を経て、1981年に「ホテルフジ」を開業した。

1991年にはホテルを増築して「フジポートホテル」に改称。2003年にはブライダル事業にも進出し、2006年にも施設を増築した。

2009年10月期には年間収入高約5億円を計上していた。

しかし、施設の拡張を金融機関からの借り入れに依存していたため、返済が経営上の負担となっていた。

2014年にはアパホテルのフランチャイズとして再出発したものの、近隣ホテルとの競争激化やコロナ禍による需要減少に直面した。

なぜ民事再生に? 経営悪化を招いた4つの要因

今回の経営再建問題を考えるうえで、重要なのは売上高だけでは判断できないホテル経営の難しさだ。

① 過去の設備投資が長期的な返済負担に

ホテル経営には、客室や建物の整備、設備更新など多額の資金が必要になる。

鈴和観光もホテルの増築を重ね、施設規模を拡大してきた。

しかし、帝国データバンクによると、その設備投資を金融機関からの借り入れに頼っていたことが、経営の重荷になっていた。

考察: ホテルの建物や設備は長期間使用する資産だが、借入金は営業状況にかかわらず返済を求められる。宿泊需要が減少した場合、施設を維持する費用と返済負担が同時に経営を圧迫する構造がある。

鈴和観光でも、過去の投資負担が需要変動に対応する余力を制約した可能性が考えられる。ただし、借入金の返済条件や年度別の返済額は確認できていない。

② 地方ホテルの競争激化

鈴和観光は2014年、アパホテルのフランチャイズに加盟してホテルをリブランドした。

大手ホテルブランドの知名度や予約システムを活用できることは、集客面で強みとなる。

一方、近隣には大手ホテルチェーンの出店が相次ぎ、宿泊客の獲得競争が激しくなっていた。

考察: 宿泊客がホテルを選ぶ基準は、ブランドだけではない。宿泊料金、立地、客室設備、駐車場、口コミなど複数の要素が比較される。

特に地方都市では、ビジネス出張需要を複数のホテルが奪い合う状況になれば、客室単価を引き上げにくくなる可能性がある。

ただし、鈴和観光の客室稼働率や平均宿泊単価は公表資料から確認できず、価格競争がどの程度利益を圧迫したかは不明だ。

③ コロナ禍で失われた宿泊・宴会需要

鈴和観光は、観光客だけでなく、地元企業の出張需要やブライダル需要も取り込んできた。

ところが、こうした需要の減少に加え、2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大によって事業規模の大幅な縮小を余儀なくされた。

考察: ホテルは客室の販売だけでなく、宴会や婚礼、飲食などの収益を組み合わせて運営する場合がある。

複数の収益源が同時に落ち込むと、売上高への影響は大きくなる。

鈴和観光についても、宿泊需要とブライダル需要の変化が経営に影響したことは報じられているが、それぞれの減収額は明らかになっていない。

④ 売上高が回復しても利益が残らない

年間収入高の比較

2009年10月期

約5億円

2025年10月期

約4億円

2025年10月期には年間収入高が約4億円まで回復していた。

それでも、最低賃金の上昇や水道光熱費の高騰などによって運営コストが増加。低採算の状態が続き、自主再建を断念したと報じられている。

考察: 今回の事例が示すのは、売上回復と経営再建が必ずしも一致しないということだ。

宿泊客が戻っても、人件費やエネルギー費用、借入金の返済負担が重ければ、経営を維持するための資金を十分に確保できない。

実際の営業利益や資金繰りの詳細は不明だが、売上規模だけでホテルの経営状態を評価することの難しさが浮かび上がる。

アパホテルなのになぜ? 本体と運営会社は別

今回、民事再生手続きの開始決定を受けたのは、アパホテル株式会社ではなく、フランチャイズ加盟企業の鈴和観光だ。

フランチャイズ方式では、加盟企業が大手ホテルのブランドや運営ノウハウを活用しながら、独立した事業者としてホテルを経営する。

そのため、全国的な知名度を持つホテルブランドであっても、加盟企業の財務状況によって経営上の問題が生じる可能性がある。

今回の民事再生をアパホテルグループ全体の経営悪化と結び付けることは適切ではない。

アパホテル富士中央は11月30日に営業終了予定

もう一つ注目されるのが、運営ホテルの今後だ。

旅行会社クラブツーリズムの案内によると、アパホテル〈富士中央〉は2026年11月30日のチェックアウトをもって営業を終了する予定とされている。

同社は、該当する旅行商品の宿泊先を「アパホテル〈静岡駅北〉」へ変更している。

ただし、営業終了の詳しい理由や、施設の売却・転用などの方針は確認できていない。

民事再生は、裁判所の監督のもとで債務の整理と事業再建を目指す制度であり、直ちに会社の消滅を意味するものではない。

【独自考察】地方ホテルに広がる「売上回復でも経営が苦しい」問題

今回の鈴和観光の事例は、地方ホテルの経営を考えるうえで重要な問題を投げかけている。

ホテル業界では、宿泊需要の回復が必ずしもすべての事業者の収益改善につながるとは限らない。

特に、過去の設備投資に伴う借入金を抱える企業では、需要が回復しても財務面の負担が残る。

さらに、人手不足に対応する賃金引き上げや、老朽化した設備の更新など、経営に必要な支出が増えれば、売上高が伸びても利益が確保できない可能性がある。

ここで重要なのは、今回の民事再生を単純に「宿泊客が減ったから」と説明できないことだ。

確認された経営経緯を見ると、設備投資の返済負担、需要減少、競争激化、コロナ禍、運営コスト上昇という複数の要因が重なっている。

地方ホテルの経営を評価するには、売上高や宿泊客数だけでなく、借入金残高、客室単価、稼働率、営業利益、設備更新費用などを総合的に確認する必要があるだろう。

今後の焦点は再生計画とホテル施設の行方

今後、注目されるのは鈴和観光がどのような再生計画をまとめるかだ。

特に、ホテル施設の取り扱い、従業員の雇用、取引先への影響、事業を引き継ぐスポンサーの有無などが焦点となる。

現時点で、スポンサーの存在や施設の売却先などは確認できていない。

約70年の歴史を持つ地元企業が、なぜ売上回復の局面でも自主再建を断念することになったのか。

今回の事例は、地方ホテルの経営において、集客力だけでなく財務基盤と収益構造が重要であることを改めて示している。

週刊TAKAPIでは、今後の再生手続きとホテル施設の動向を引き続き注視する。

Q鈴和観光は破産したのですか?
A破産ではなく、民事再生手続きの開始決定を受けています。民事再生は、債務を整理しながら再建を目指す法的手続きです。
Qアパホテルのほかの店舗にも影響がありますか?
A今回の手続きの対象は鈴和観光です。ほかのアパホテル店舗への直接的な影響は確認されていません。
Qすでに宿泊予約をしている場合はどうすればよいですか?
A予約したホテルや旅行会社に、宿泊予定日の営業状況と予約の取り扱いを直接確認してください。
Qホテルの建物は今後どうなるのですか?
A施設の売却、別ブランドでの営業再開、転用などについて、確定した方針は確認できていません。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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