東京都新宿区の酒類販売・買い取り関連会社の事務所で起きた強盗未遂事件をめぐり、警視庁捜査3課は5月25日までに、栃木県在住の17歳から20歳の男ら6人を強盗未遂などの疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、栃木県矢板市のアルバイト・安達慎哉容疑者(20)や、高校生の少年ら。警視庁は、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」が関与した可能性があるとみて、背後関係を調べている。
今回の事件は、単なる強盗未遂では終わらない可能性が出てきた。
同じ店では3月にも窃盗未遂事件が発生しており、その際に現場周辺で確認された軽ワゴン車と、5月14日に栃木県上三川町で起きた強盗殺人事件の被害者宅周辺で目撃された車両の特徴が似ていることが分かっている。
警視庁と栃木県警は、車両の使用実態や通信記録、犯行前の下見、標的情報の流れなどを調べている。
配達員を装い事務所へ クマスプレー噴射か
事件が起きたのは、4月7日午後2時すぎ。
JR大久保駅からほど近い新宿区内の酒類販売・買い取り関連会社の事務所で、グループは配達員を装って侵入したとみられている。
警視庁によると、実行役とみられる少年らは、事務所内にいた40代の男性従業員にクマスプレーを噴射。さらに、男性がバックヤードへ避難した後も、ドアに向かってステッキのようなもので突くなどし、金品を奪おうとした疑いが持たれている。
従業員にけがはなかった。
逮捕された安達容疑者は、現場には行っていなかったとみられる一方、事件に使われたスプレーやステッキなどを事前に購入した「準備役」だった可能性がある。別の19歳の男は、運転役兼実行役とみられている。
警視庁は、実行役、運転役、準備役が分担されていたとみて、事件の全体像を調べている。
匿名アプリで指示役と連絡か
今回の事件で警視庁が注目しているのは、逮捕者の一部が、秘匿性の高い通信アプリを使って何者かと連絡を取っていたとされる点だ。
トクリュウ型の事件では、SNSや匿名性の高い通信アプリを通じて実行役が集められ、指示役、運転役、道具の準備役、回収役などに役割が分けられるケースが目立っている。
今回も、少年を含む若年層が実行役として動き、20歳前後の人物が道具や車両、集合場所、連絡手段の準備に関与した構図が浮かぶ。
警察は、現場にいた実行役だけでなく、その背後で襲撃先を決め、指示を出した人物の特定を進めている。
同じ店で3月にも窃盗未遂 車両が栃木事件と酷似か
新宿区の同じ酒類販売・買い取り関連会社では、3月にも窃盗未遂事件が起きていた。
この3月の事件では、黒いフードをかぶった人物らが店を狙ったとされ、犯人はまだ逮捕されていない。捜査関係者によると、この事件の現場周辺を走っていた軽ワゴン車と、栃木県上三川町で5月14日に発生した強盗殺人事件の被害者宅周辺で、事件の約1週間前に確認されていた車両の車種や色の特徴が一致していたという。
現時点で、同一車両と断定されたわけではない。
ただ、3月の新宿窃盗未遂、4月の新宿強盗未遂、そして5月の栃木・上三川町強盗殺人事件の間で、車両や標的情報、人脈に何らかの接点があるのかが、今後の重要な焦点になる。
栃木・上三川町事件では16歳少年4人と20代夫婦を逮捕
栃木県上三川町の住宅では5月14日、複数の人物が押し入り、住人の富山英子さん(69)が殺害され、長男と次男も負傷した。
この事件では、神奈川県内に住む16歳の少年4人が実行役とみられ、すでに逮捕されている。さらに、横浜市の竹前海斗容疑者(28)と、妻の美結容疑者(25)も、指示役とみられる立場で逮捕された。
警察は、夫婦のさらに上に別の指示役がいる可能性も視野に捜査している。
栃木事件でも、少年らが事件当日に指示役とみられる人物とアプリで連絡を取りながら動いていた可能性がある。少年の一部は、夫婦から脅されていた趣旨の供述をしているともされる。
若い実行役、匿名アプリ、指示役、車両、下見。
新宿の事件と栃木の事件は、場所も被害の大きさも異なるが、トクリュウ型犯罪に共通する要素が複数浮かび上がっている。
“襲撃先リスト”や車両が共有された可能性も
警察が警戒しているのは、個別の犯行グループだけではない。
問題は、標的となる住宅や店舗の情報、犯行に使える車両、実行役として動かせる若者が、複数の事件で使い回されている可能性だ。
いわゆる闇バイト型の犯罪では、実行役はその都度集められる一方で、背後の指示役や情報提供者、車両の手配役が重なっているケースもあり得る。
今回の新宿事件では、3月に同じ店が狙われ、4月にも再び襲撃された。さらに、3月事件で確認された車両と、栃木・上三川町事件前に目撃された車両の特徴が似ている。
単なる偶然なのか。
それとも、標的情報や犯行車両がトクリュウ系ネットワーク内で共有されていたのか。
警視庁と栃木県警は、通信記録や防犯カメラ映像、車両の鑑識などをもとに、複数事件の関連を調べている。
警察庁もトクリュウ対策を強化
警察庁は5月25日、全国の刑事部門の幹部を集めた会議で、トクリュウ対策の強化を指示した。
楠芳伸長官は、栃木県上三川町の強盗殺人事件などを念頭に、中核人物の早期検挙と、同種事件の発生防止を全国警察で進める必要があると強調した。
末端の実行役だけを逮捕しても、次の事件を止めることは難しい。
重要なのは、
誰が標的情報を流したのか。
誰が実行役を集めたのか。
誰が車両や道具を準備したのか。
誰が通信アプリ越しに指示を出していたのか。
そして、どこに上位の指示役がいるのか。
警察は、スマートフォンの解析、通信履歴、資金の流れ、防犯カメラ映像などをもとに、背後のネットワーク解明を進めるとみられる。
住民や事業者が警戒すべき点
トクリュウ型の事件では、配達員や業者を装って住宅や店舗に近づくケースがある。
不審な来訪者、同じ車両の繰り返しの通行、住宅や店舗周辺での撮影行為、不自然な下見のような動きがあれば、早めに警察へ相談することが重要だ。
特に、貴金属、酒類、現金、ブランド品などを扱う店舗や、過去に取引情報が外部に出た可能性のある事業者は、侵入対策や防犯カメラの確認、従業員への注意喚起が求められる。
今回の新宿強盗未遂事件は、未遂で終わった。
しかし、栃木・上三川町では実際に命が奪われている。
トクリュウ型犯罪は、都心の店舗と地方の住宅を別々に狙うだけではない。標的情報や実行役、車両がつながれば、地域をまたいで一気に深刻な事件へ発展する危険がある。
編集部まとめ
新宿区の酒類販売・買い取り関連会社を狙った強盗未遂事件で、17歳から20歳の男ら6人が逮捕された。警視庁は、匿名アプリを使った指示があったとみて、トクリュウの関与を調べている。
同じ店では3月にも窃盗未遂事件が発生しており、その際に現場周辺で確認された軽ワゴン車と、栃木県上三川町の強盗殺人事件前に被害者宅周辺で目撃された不審車両の特徴が似ていることが分かっている。
現時点で、同一グループや同一車両と断定されたわけではない。ただ、若い実行役、匿名アプリ、車両、下見、標的情報という複数の共通点が捜査線上に浮上している。
警察は、末端の実行役だけでなく、指示役、勧誘役、車両手配役、標的情報を流した人物までたどれるかが焦点となる。
新宿の未遂事件と栃木の強盗殺人事件は、闇バイト型犯罪が都心と地方をまたいでつながる危険を示している。
事件のポイントQ&A
Q. 新宿の強盗未遂事件と栃木の強盗殺人事件は同じグループの犯行ですか。
現時点で同じグループの犯行と断定されたわけではありません。ただし、新宿で3月に起きた窃盗未遂事件の車両と、栃木県上三川町の強盗殺人事件前に目撃された車両の特徴が似ていることから、警察が関連を調べています。
Q. なぜトクリュウの関与が疑われているのですか。
若い実行役、匿名性の高い通信アプリ、指示役との分業、道具や車両の準備など、匿名・流動型犯罪グループにみられる特徴があるためです。
Q. 今後の焦点は何ですか。
車両の使用実態、通信記録、犯行前の下見、標的情報の流れ、指示役や勧誘役の特定が焦点になります。
Q. 住民や店舗が注意すべきことはありますか。
配達員や業者を装った不審な来訪、同じ車両の繰り返しの通行、住宅や店舗周辺での撮影行為、不自然な下見のような動きがあれば、早めに警察へ相談することが重要です。

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