北海道旭川市で2024年、当時17歳の女子高校生が神居古潭の橋付近から転落し死亡した事件で、殺人や監禁、不同意わいせつ致死などの罪に問われている旭川市の無職・内田梨瑚被告(23)の裁判員裁判が5月25日、旭川地裁で始まった。
注目された初公判で、内田被告は罪状認否に対し、殺人について一部否認した。
法廷で内田被告は、
「私には殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません」
と述べ、殺意と実行行為を否定した。
一方、検察側は、内田被告が被害者を監禁し、暴行や脅迫的な言動を重ねたうえで、橋の欄干付近に追い詰め、川に転落させて殺害したと主張している。
一般傍聴席23席に対し、313人が抽選に並ぶなど、事件への社会的関心の高さを改めて示す初公判となった。
発端はSNS上の画像投稿
起訴状などによると、事件の発端はSNS上に投稿された1枚の画像だった。
2024年4月18日から19日にかけ、当時17歳の女子高校生が、内田被告が写った画像データを無断で使用したとされる。これを知った内田被告は、女子高校生に対し、電話で強い語気で連絡を取り、金品を要求したとされている。
その後、女子高校生は北海道留萌市内で内田被告の軽自動車に乗せられた。検察側は、この時点から不法な監禁状態が始まったとみている。
車内や移動先では、女子高校生に対する暴行や謝罪の強要があったとされる。旭川市内の小学校駐車場やコンビニなどを経て、最終的に一行は旭川市郊外の神居古潭方面へ向かったとされている。
神居大橋付近で何が起きたのか
事件の最大の争点は、神居大橋付近で内田被告が何をしたのかという点だ。
起訴状では、内田被告が当時19歳の女と共謀し、女子高校生に衣服を脱がせ、土下座で謝罪させ、橋の上で暴行を加えたとされている。
さらに、女子高校生を欄干付近に座らせたうえで、動画を撮影するなどの行為に及び、強い恐怖を与えたとされる。
検察側は、内田被告らが女子高校生に対し「落ちろ」「死ねや」などと発言し、極度に怖がらせた結果、女子高校生を川に転落させ、死亡させたと主張している。
一方で、弁護側は殺意を否定している。
内田被告が女子高校生を直接落下させたわけではなく、殺人の実行行為はなかったという立場だ。
このため裁判では、単に現場にいたかどうかではなく、内田被告がどの場面で何を主導したのか、死亡の危険をどこまで認識していたのか、共犯者との間でどのような意思の連絡があったのかが、詳しく審理されることになる。
共犯者との供述対立も焦点に
この事件をめぐっては、当時19歳だった小西優花受刑者が、すでに殺人罪などで懲役23年の判決を受け、刑が確定している。
今回の内田被告の裁判では、小西受刑者が証人として出廷する予定とされており、内田被告の関与についてどのような証言をするのかが注目される。
小西受刑者の裁判では、女子高校生が橋の欄干付近に追い詰められ、転落に至るまでの経緯が審理された。今回の裁判では、その内容を前提にしながらも、内田被告自身の行為や主導性がより細かく問われる。
内田被告側は、殺意も実行行為も否定している。
そのため、検察側がどの証拠で内田被告の刑事責任を立証するのかが、裁判の大きなポイントになる。
弁護側は「殺意なし」を主張
弁護側は、公判前の段階から、内田被告に殺意はなかったとする方針を示していた。
弁護人は、内田被告が被害者から受け取った現金4000円や携帯電話を置いて立ち去っていたことなどを挙げ、殺意がなかったことを示す事情だと説明している。
また、内田被告は逮捕当時から「女子高校生を橋に置いてきただけで、落ちたかどうかは知らない」という趣旨の供述をしていたとされる。
ただし、裁判で問われるのは、被告が直接押したかどうかだけではない。
女子高校生が深夜に連れ回され、暴行や脅迫的な言動を受け、橋の欄干付近に置かれたとされる状況が、死亡結果とどう結びつくのか。そこに殺意や共謀が認められるのか。
裁判員裁判では、動画、通話記録、移動経路、現場状況、関係者の証言などが一つずつ確認される見通しだ。
「SNSトラブル」では済まされない事件
この事件は、SNS上の画像投稿をきっかけに、現実の監禁、暴行、死亡事件へ発展したとされる点でも大きな注目を集めている。
ただし、「SNSトラブル」という言葉だけで片付けることはできない。
女子高校生は、謝罪を求められ、車で連れ回され、深夜の橋付近で強い恐怖の中に置かれたとされる。問題の本質は、ネット上の揉め事ではなく、複数人によって一人の少女が追い詰められ、命を落としたとされる経緯にある。
裁判では、被害者側にどのような投稿があったかではなく、被告らがどのような行為をし、その行為が死亡結果にどうつながったのかが問われる。
判決は6月22日の予定
内田被告の裁判員裁判は、今後も証人尋問や証拠調べが行われる予定だ。
争点は、主に次の3つとなる。
まず、内田被告に殺意があったのか。
次に、橋から転落させたと評価できる実行行為があったのか。
さらに、小西受刑者らとの共謀が認められるのか。
すでに小西受刑者には懲役23年の実刑判決が確定しているが、内田被告については殺人罪そのものの成立が争われている。
判決は6月22日に言い渡される予定だ。
17歳の女子高校生が、なぜ命を落とすことになったのか。
初公判は、被告の言い分を聞く場であると同時に、死亡に至るまでの経緯を証拠で明らかにしていく裁判の始まりとなった。
編集部まとめ
旭川女子高校生殺害事件で、内田梨瑚被告の裁判員裁判が旭川地裁で始まった。内田被告は初公判で「殺意はありません」「橋から落としていません」と述べ、殺人について否認した。
検察側は、SNS上の画像投稿を発端に、女子高校生が監禁され、暴行や脅迫的な言動を受けたうえで、神居大橋付近から転落させられたと主張している。
裁判の焦点は、殺意、実行行為、共犯者との共謀の有無だ。すでに懲役23年が確定している小西優花受刑者の証言も注目される。
単なるSNSトラブルではなく、若い命が失われた重大事件として、今後の法廷で何が明らかになるのかが問われる。

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