愛知県長久手市の愛知医科大学病院で2018年に起きた医療事故を巡り、名古屋地方裁判所は2026年6月5日、大学側に約1億2000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
事故当時、生後7カ月だった男児は、ウイルス性肺炎などで同病院に入院し、人工呼吸器の気管チューブを装着していた。看護師らが体位を変えた後、チューブが外れたとされ、男児は一時心停止状態に陥った。その後、重度の低酸素脳症を発症し、現在も意識が戻っていない。
判決では、体位変換の際に気管チューブが抜ける危険は予見できたと判断された。異常が起きた時点で速やかに医師へ連絡し、再挿管を求めるべきだったとして、病院側の対応に注意義務違反があったと認定した。大学側は、看護師がチューブ抜去を認識していなかったなどと争っていたが、裁判所は事故後の対応と後遺障害との因果関係を認めた。
両親は、息子の命と尊厳を守るため、8年にわたり看病と裁判に向き合ってきた。父親は判決後、「一番頑張ったのは息子。報われてよかった」と語った。母親も、長く続いた争いに区切りを求め、今後の治療と生活に集中したいとの思いを示している。
一方、愛知医科大学病院は「弁護士と協議の上、今後の対応を判断する」とコメントした。判決を受け入れるのか、控訴するのかが次の焦点となる。
人工呼吸器を使う小児医療では、チューブの位置確認、アラーム発生時の初動、医師への報告、複数人での確認が命に直結する。今回の判決は、大学病院だけでなく、全国の医療機関に対し、人工呼吸器管理と急変時対応の再点検を迫るものだ。
生後7カ月で起きた事故は、男児と家族の日常を大きく奪った。判決は一つの区切りだが、男児の治療と家族の生活はこれからも続く。医療安全を掲げる病院に必要なのは、判決への対応だけではない。なぜ対応が遅れたのか、同じ事例を防ぐために何を改めるのかを、患者と社会に説明することだ。
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編集部まとめ
愛知医科大学病院で2018年に起きた医療事故を巡り、名古屋地裁は大学側に約1億2000万円の賠償を命じた。当時生後7カ月だった男児は、気管チューブが外れた後の対応を巡り重度の低酸素脳症を発症し、現在も意識が戻っていない。判決は、体位変換時の危険予見と異常時の医師連絡義務を重く見た。今後は、大学側の対応、控訴の有無、医療安全体制の見直しが焦点となる。
この記事の要点Q&A
Q. どこの病院の医療事故訴訟か。
A. 愛知県長久手市の愛知医科大学病院です。
Q. 判決内容は。
A. 名古屋地裁が大学側に約1億2000万円の賠償を命じました。
Q. 男児にはどのような後遺障害が残ったのか。
A. 重度の低酸素脳症を発症し、現在も意識が戻っていないと報じられています。
Q. 争点は何だったのか。
A. 体位変換時に気管チューブが抜けた後、病院側が速やかに医師へ連絡し再挿管を求めるべきだったかどうかです。
Q. 今後の焦点は。
A. 大学側が判決を受け入れるか、控訴するか、人工呼吸器管理の再発防止策をどう示すかです。

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