名古屋・南区スイミング送迎バス死亡事故 被害者父親「信号を守ってひかれるなんてあり得ない」 85歳運転手は赤信号進入か

名古屋市南区寺崎町の桜本町交差点で、スイミングクラブの送迎マイクロバスが横断歩道を渡っていた歩行者2人をはね、死亡させた事故で、亡くなった田中新さんの父親が悲痛な胸の内を語った。

事故は5月29日午後5時35分ごろに発生した。横断歩道を渡っていた大石有記さん(36)と田中新さん(35)が、スイミングクラブの送迎マイクロバスにはねられ、その後死亡した。

愛知県警南署は、バスを運転していた酒井照也容疑者(85)を、過失運転致死などの疑いで逮捕した。酒井容疑者は事故後、その場から走り去った疑いも持たれている。

亡くなった田中新さんの父親は、取材に対し、こう語った。

「本当にかわいそうで。普通に信号を守って横断している間にひかれるなんてあり得ない」

この言葉は、事故の重さをそのまま伝えている。

信号を守り、横断歩道を渡っていたとされる歩行者が、送迎バスにはねられて命を落とした。道路を渡る側にとって、信号と横断歩道は安全を信じるための最低限のよりどころだ。その前提が失われた事故だった。

ドライブレコーダーに赤信号進入か

報道によると、スイミングクラブのドライブレコーダー映像には、バスが赤信号のまま交差点に進入したとみられる様子が映っていたという。

事故現場は、名古屋市南区の桜本町交差点。バスは横断歩道を渡っていた2人をはねた後、現場から約300〜350メートル離れた場所まで走行し、民家や駐車車両、道路標識などに衝突して停止したとされる。

さらに、事故直前には、現場近くの踏切で遮断機に接触する事故を起こしていたことも分かっている。遮断機が上がりきる前に車を発進させ、接触したとされる。直後にスクール側が無線で酒井容疑者と連絡を取ったところ、言葉が不明瞭だったとの情報もある。

警察は、事故当時の運転状況や健康状態、認知機能の面も含めて、詳しい経緯を調べている。

20年以上の送迎経験 それでも防げなかった事故

酒井容疑者は、20年以上にわたりスイミングクラブの送迎バス運転を担当していたとされる。

一方で、1年ほど前には中型バスをスムーズに駐車できなかったため、勤務先から中型バスの運転を控えるよう指示され、車体の小さいマイクロバスだけを担当していたという。

この点は重い。

中型バスの運転に不安が見られた段階で、マイクロバスなら安全だったのか。
高齢運転手に送迎業務を続けさせる判断は適切だったのか。
健康状態や運転能力の確認は、どこまで行われていたのか。

今回の事故は、85歳という年齢だけで語るべきではない。問題は、送迎バスという公共性の高い運転業務に対し、事業者側がどのように運転能力を確認し、危険の兆候を把握していたのかという点にある。

送迎バスが預かるのは「人の命」

スイミングクラブの送迎バスは、地域の子どもたちや利用者の移動を支えるものだ。そこに求められるのは、単なる運転経験ではない。安全確認、判断力、緊急時の対応力、そして異変があった時に運転を止める仕組みである。

今回は事故当時、スクールの生徒は乗っていなかったとされる。
しかし、送迎バスが地域の道路を走る以上、乗客だけでなく、歩行者や自転車、他の車の安全も背負っている。

横断歩道を渡っていた2人が亡くなった事実は、送迎業務の安全管理を改めて問うものだ。

事故直前の踏切での異常な運転。
赤信号での交差点進入疑い。
事故後に現場から離れた疑い。
そして、過去に中型バスの運転を控えさせていた経緯。

これらを一つずつ見れば、今回の事故は「突然起きた不運」だけでは片づけられない。事前に確認すべき兆候がなかったのか。運転継続の判断に問題はなかったのか。警察の捜査とともに、事業者側の安全管理も問われる。

「信号を守っていた人」が命を落とした重さ

田中新さんの父親の言葉は、多くの人の感覚に近い。

信号を守っていた。
横断歩道を渡っていた。
それでも命を奪われた。

交通事故の報道では、容疑者の年齢や車両の状況、信号の色、ドライブレコーダー映像に注目が集まりやすい。だが、中心にあるのは、突然命を奪われた2人と、残された家族の現実である。

大石有記さん、田中新さん。
2人は、いつも通り横断歩道を渡っていただけだった。

その日常が、送迎バスによって断たれた。

今回の事故で問われるのは、85歳運転手個人の責任だけではない。高齢運転手の継続雇用、送迎事業者の安全確認、異常運転が確認された際の即時停止判断、そして地域の交通安全をどう守るのかという問題である。

被害者の父親が語った「信号を守ってひかれるなんてあり得ない」という言葉は、今回の事故の核心を突いている。

信号を守る人が守られる道路でなければならない。
その当たり前を、今回の事故は改めて社会に突きつけている。

大石有記さん、田中新さんのご冥福をお祈りするとともに、警察には事故の詳しい経緯と責任の所在を明らかにする捜査が求められる。

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編集部まとめ

名古屋市南区の桜本町交差点で、スイミングクラブの送迎マイクロバスが横断歩道を渡っていた歩行者2人をはね、死亡させた事故で、亡くなった田中新さんの父親が「信号を守って横断している間にひかれるなんてあり得ない」と悲痛な胸の内を語りました。バスは赤信号で交差点に進入したとみられ、事故直前には踏切で遮断機に接触していたことも判明しています。85歳の運転手個人の責任だけでなく、送迎バスの安全管理、高齢運転手の継続雇用、異常運転を把握した際の対応が問われます。

この記事のポイントQ&A

Q. 何が起きたのですか。
A. 名古屋市南区の桜本町交差点で、スイミングクラブの送迎マイクロバスが横断歩道を渡っていた歩行者2人をはね、死亡させた事故です。

Q. 亡くなったのはどなたですか。
A. 大石有記さん(36)と田中新さん(35)です。

Q. 運転していたのは誰ですか。
A. スイミングクラブの送迎バスを運転していた酒井照也容疑者(85)です。過失運転致死などの疑いで逮捕されています。

Q. 赤信号で進入したのですか。
A. スクール側によると、ドライブレコーダー映像から、バスは赤信号で交差点に進入したとみられています。警察が詳しい経緯を調べています。

Q. 事故直前にも異変はあったのですか。
A. 事故直前、現場近くの踏切で遮断機に接触する事故を起こしていたことが分かっています。

Q. 今後の焦点は何ですか。
A. 事故当時の運転状況、酒井容疑者の健康状態や認知機能、送迎バス事業者の安全管理、高齢運転手の継続雇用の判断が焦点です。

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