奈良市教育委員会が、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の第三者委員会を2月以降、設置できない状態が続いていることが30日、分かりました。
読売新聞オンラインの報道によると、委員の中心となる弁護士の報酬について、奈良弁護士会が「業務量に見合わない」として推薦を見合わせているためです。
重大事態と判断された事案では、第三者による調査が求められます。しかし、弁護士委員の推薦が得られず、被害児童や保護者への調査が大幅に遅れる事態となっています。
重大事態は現在2件 小学生女児の不登校事案も
奈良市教委によると、現在、いじめの重大事態と判断している事案は2件あります。
このうち1件は、市立小学校の女児が昨年夏ごろから同級生に金銭を要求されたり、足を踏まれたりするいじめを受けたとされる事案です。
女児は昨年10月から半年近く不登校となり、現在も精神的に不安定な状態が続いているとされています。
市は昨年11月、この事案を重大事態と認定。今年1月に奈良弁護士会へ弁護士委員の推薦を依頼しましたが、推薦は見送られました。
読売新聞オンラインの取材に対し、女児の保護者は「子どもの命に関わるかもしれないのに、市教委も弁護士会も危機感が足りない」と強い憤りを示しています。
保護者は、時間が経つことで関係者の記憶が曖昧になり、調査結果に影響が出ることも懸念しています。
報酬めぐり市教委と弁護士会に溝
争点となっているのは、調査委員を務める弁護士への報酬です。
奈良市の条例では、会議出席は日額1万4000円、調査は日額2万5000円、報告書作成は30分5000円で、1日上限8万円とされています。
一方、奈良弁護士会は、重大事態調査では聞き取りが数十人に及ぶ場合があり、通常業務を調整して対応する必要があるとして、1時間あたり2万2000円以上を求めています。
上羽徹弁護士会長は、現在の額では事務所経営が成り立たないとして、業務量に応じた報酬設定を求めています。
市教委は、他自治体の例を参考に報酬の見直しを急ぐ方針です。ただし、条例改正が必要となる可能性があり、調査委設置のめどは立っていません。
法で求められる調査が始まらない状態
いじめ防止対策推進法では、重大事態が発生した場合、学校の設置者または学校が調査組織を設け、事実関係を明らかにするための調査を行うことが求められています。
重大事態には、児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、いじめによって相当期間の欠席を余儀なくされている疑いがある場合などが含まれます。
今回の問題は、重大事態と認定されていながら、調査組織の設置段階で止まっている点にあります。
調査が遅れれば、関係者の記憶が薄れ、事実確認が難しくなる可能性があります。被害を訴える児童や保護者にとって、調査が始まらない状態そのものが大きな負担になります。
SNSでは「報酬で止まるのはおかしい」「専門職の負担も現実」の声
報道を受け、SNSやコメント欄では反応が広がっています。
目立つのは、「重大事態の調査が報酬問題で止まるのはおかしい」という声です。
「子どもの命に関わるかもしれない案件が報酬で止まるのは納得できない」
「重大事態と認定したなら、すぐ調査できる体制を作るべき」
「時間が経つほど、子どもと保護者の負担が増える」
一方で、弁護士側の負担に理解を示す声もあります。
「重大事態調査は聞き取りも報告書作成も重い」
「専門職に責任だけ背負わせて低報酬では続かない」
「公平な調査には相応の人件費が必要」
今回の問題は、市教委と弁護士会のどちらか一方だけの問題ではありません。重大事態調査を止めない制度設計を、自治体がどう整えるかが問われています。
今後の焦点は報酬改定と調査開始の時期
奈良市は、他自治体の事例を参考に報酬額の見直しを進める方針です。
今後の焦点は、報酬改定の時期、奈良弁護士会との協議、現在止まっている2件の重大事態調査をいつ開始できるかです。
いじめ重大事態の調査は、制度上の手続きではなく、被害を訴える子どもと保護者にとって、事実を確認するための重要な機会です。
報酬の問題を理由に調査が始まらない状態が続けば、制度への信頼そのものが揺らぎます。
重大事態と認定した以上、必要なのは調整の継続ではなく、調査を始められる体制をいつ整えるのかという具体的な期限です。
Q. 奈良市で何が問題になっていますか。
A. いじめ重大事態の第三者委員会を、2月以降設置できない状態が続いていることです。
Q. なぜ調査委員会を設置できないのですか。
A. 弁護士報酬が業務量に見合わないとして、奈良弁護士会が弁護士委員の推薦を見合わせているためです。
Q. 現在、重大事態は何件ありますか。
A. 奈良市教委によると、現在2件あります。
Q. 被害を訴える事案の内容は何ですか。
A. 市立小学校の女児が同級生から金銭を要求されたり、足を踏まれたりするいじめを受け、不登校になったとされています。
Q. 保護者は何と訴えていますか。
A. 読売新聞オンラインの取材に対し、「子どもの命に関わるかもしれないのに、市教委も弁護士会も危機感が足りない」と話しています。
Q. 奈良市の報酬額はいくらですか。
A. 会議出席は日額1万4000円、調査は日額2万5000円、報告書作成は30分5000円、1日上限8万円とされています。
Q. 奈良弁護士会は何を求めていますか。
A. 業務負担に見合う報酬として、1時間あたり2万2000円以上を求めています。
Q. 今後の焦点は何ですか。
A. 報酬改定、奈良弁護士会との協議、止まっている2件の重大事態調査をいつ開始できるかです。

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