【シェアレンティング問題】1歳児の顔を誕生日ケーキへ…拡散動画が物議 問われる子どもの尊厳とSNS発信のあり方

SNS上で、1歳児の誕生日を祝う場面で子どもの顔をケーキに押し付ける動画が拡散され、賛否を呼んでいる。

動画には、誕生日ケーキの前に座る幼い子どもの頭を大人が押さえ、顔がケーキに触れる様子が映されている。その後、周囲からは笑い声が上がり、投稿は大きな反響を集めた。

これに対しSNSでは、

「何が面白いのか分からない」

「子どもが嫌がっているようにしか見えない」

「子どもを笑いものにしているだけでは」

「再生数のために子どもを利用しているように見える」

など批判的な意見が相次いでいる。

また、

「ケーキには飾りやピックが刺さっている場合もある」

「顔や目を傷つける危険性はなかったのか」

と安全面を懸念する声も上がった。

一方で、

「昔からある誕生日の演出」

「親子のコミュニケーションの一環」

「虐待と決めつけるのは行き過ぎ」

といった意見もあり、受け止め方は大きく分かれている。

子どもの権利を守るために

子どもに対する虐待や重大な権利侵害が疑われる場合、周囲の大人が適切な相談機関へつなぐことは重要である。

児童虐待が疑われる場合は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」で相談や通告を行うことができる。

一方で、SNS上の動画や画像のみでは状況の全体像が分からない場合もある。

そのため、感情的な誹謗中傷や私的制裁ではなく、子どもの安全と最善の利益を第一に考えながら、冷静な議論と適切な対応が求められる。


安全面だけではない 問われる子どもの尊厳

本件で実際に負傷が発生したとの情報は確認されていない。

しかし、問題視されているのは安全面だけではない。

SNS上では、

「本人は笑っていないのに大人だけが笑っている」

「子どもをネタにしているように見える」

「子どもは再生数を稼ぐためのコンテンツではない」

といった声も広がっている。

近年は、子どもの泣き顔や失敗、困惑する様子を撮影し、「かわいい」「面白い」として投稿するケースも増えている。

その一方で、「本人の気持ちが置き去りになっていないか」という指摘も強まっている。


広がる「シェアレンティング」への懸念

近年、保護者が子どもの写真や動画をSNSへ投稿する行為は「シェアレンティング(Sharenting)」と呼ばれ、国内外で議論が続いている。

シェアレンティングとは、「Share(共有)」と「Parenting(子育て)」を組み合わせた言葉で、保護者が子どもの成長記録や日常をSNSで発信する行為を指す。

本来は家族や知人との共有を目的としたものであるが、SNSの普及により再生数やフォロワー獲得を意識した投稿も増加。

子どもの泣き顔や失敗した姿、驚く様子などが「面白いコンテンツ」として拡散されるケースもみられる。

しかし乳幼児は、自らの姿が世界中へ公開されることについて十分な同意を行うことができない。

一度ネット上へ投稿された写真や動画は完全な削除が困難であり、将来的に本人が望まない形で残り続ける可能性もある。


子ども家庭庁もSNS利用に注意喚起

子ども家庭庁は、子どもの写真や動画をインターネット上へ公開する際、個人情報や位置情報の流出、将来的なトラブルなどに十分注意するよう呼びかけている。

近年は、保護者によるSNS投稿が原因で子どものプライバシーが侵害されたり、学校や生活環境が特定されたりする事例も社会問題となっている。

また海外では、SNSで継続的に子どもを出演させ収益化する行為について、子どもの権利や労働、プライバシー保護の観点から規制を検討する動きもみられる。


子どもの権利条約から見た今回の問題

日本も批准している国連の「子どもの権利条約」では、子どもは単なる保護の対象ではなく、一人の人格を持った権利主体として尊重されるべき存在とされている。

条約では、「子どもの最善の利益」を最優先に考えることや、子どものプライバシーや名誉が不当に侵害されないことが重要な原則として定められている。

今回の動画について直ちに権利侵害や虐待と評価することはできない。

しかし、自ら意思表示が十分にできない乳幼児の困惑した姿や嫌がっているように見える姿が、娯楽コンテンツとして公開・消費されることについては、子どもの尊厳や人格をどのように守るべきかという観点から議論の余地がある。

「かわいいから」

「面白いから」

「バズるから」

その理由だけで発信することが、本当に子どもの最善の利益につながるのか。

社会全体に問われている。


編集部コメント

本件について、動画のみをもって虐待や違法行為と断定することはできない。

しかし編集部としては、自ら十分な意思表示ができない乳幼児を笑いの対象として撮影し、その様子を不特定多数へ向けて発信する行為には強い違和感を覚える。

近年SNSでは、子どもが泣く姿、驚く姿、困惑する姿が「面白い」「かわいい」という理由で消費される場面が少なくない。

だが、その笑いの中心にいる子ども本人は、その投稿を望んでいるのだろうか。

子どもは保護者の承認欲求や再生数を満たすためのコンテンツではない。

編集部は、幼い子どもを娯楽コンテンツとして消費する文化が拡大している現状について強い懸念を表明するとともに、子どもの尊厳よりも話題性が優先される風潮に対し、遺憾の意を示す。


Q&A

Q. なぜこの動画が炎上しているのですか?

A. 子どもが嫌がっているように見える状況で顔をケーキへ押し付け、その様子をSNSへ投稿していることに対し、「子どもを笑いものにしているのではないか」との批判が集まっているためです。

Q. 虐待にあたるのでしょうか?

A. 動画のみから虐待と断定することはできません。ただし、子どもの尊厳や安全への配慮という観点から問題視する声が上がっています。

Q. シェアレンティングとは何ですか?

A. 保護者が子どもの写真や動画をSNSへ投稿する行為です。近年はプライバシーやデジタルタトゥーの問題から国内外で議論されています。

Q. 子どもの権利条約とは何ですか?

A. 子どもの人権や尊厳を守るための国際条約です。日本も批准しており、「子どもの最善の利益」を最優先に考えることが原則とされています。

Q. なぜ子どものSNS投稿が問題になるのですか?

A. 乳幼児は公開への同意や拒否を十分に示せないためです。また、一度投稿された情報は完全に削除することが難しく、将来的な影響も懸念されています。

Q. 保護者に求められることは?

A. 子どもの安全やプライバシー、将来の人格権への影響を考慮しながら、発信内容を慎重に判断することが求められます。

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