埼玉県白岡市で発生したいじめ重大事態をめぐり、被害児童の保護者が市や教育委員会に対し、謝罪と再調査を求めている。
この問題で今問われているのは、いじめがあったのかなかったのかではない。
第三者委員会はすでにいじめを認定している。
それにもかかわらず、保護者側は「認定後の対応が不十分だった」と訴えている。
そして、その訴えは白岡市の教育行政そのものに向けられている。
重大事態は認定された
問題が発生したのは2021年度。
当時、小学6年生だった女子児童は、同級生から暴言や仲間外れ、無視などの行為を受けていたとされる。
その後、金銭トラブルも発生し、学校はアンケート調査を実施。複数の児童から証言が寄せられたことで、事案は「いじめ重大事態」として認定された。
重大事態とは、いじめによって児童生徒の生命や心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合などを指す。
学校現場において最も重いレベルの事案の一つだ。
その後、市の第三者委員会による調査が行われ、いじめの事実が認定された。
本当に問われるべきは「認定後」
しかし、保護者側が問題視しているのはここからだ。
第三者委員会の報告書には、被害児童への支援や学校・教育委員会の改善に関する提言が盛り込まれていた。
ところが保護者側は、その後十分な対応が行われなかったと主張している。
文部科学省の重大事態ガイドラインでは、調査の目的は事実確認だけではない。
被害児童への支援。
被害回復。
再発防止。
そして教育行政の改善。
これらにつなげることが求められている。
つまり、調査報告書はゴールではなくスタートのはずだ。
にもかかわらず、保護者側は「報告書が出た後、対応が止まってしまった」と感じているという。
「未然防止」の前にやるべきことがある
白岡市は、いじめの未然防止教育や安心して暮らせるまちづくりを掲げている。
もちろん、それ自体は重要だ。
しかし、すでに発生した重大事態への検証や被害回復が十分に行われていないと被害者側が感じている状況で、「未然防止」を前面に打ち出すことに違和感を覚える市民もいるだろう。
起きた問題に向き合えない行政が、どうして次の問題を防げるのか。
まず必要なのは、被害者や家族が納得できる説明ではないか。
重大事態調査の目的には「当該事態への対処」が含まれている。
であれば、
なぜその対応を行ったのか。
なぜ行わなかったのか。
被害児童にどのような支援を行ったのか。
学校にどのような改善を求めたのか。
そうした説明が求められる。
市長への直談判
保護者側は、市長にも直接訴えを行ったという。
保護者側の説明によると、
「我が子が教育長に泣かされた。話を聞いてほしい。音声を聞いてほしい」
と訴えたところ、
市長は
「直接教育長から聞く」
という趣旨の対応をしたという。
さらに保護者が、
「教育長と私の話に矛盾があれば直接話をしてほしい」
と求めたところ、
「法でやりましょう、法で」
と返答されたとしている。
もちろん、市長側にも説明や認識がある可能性はある。
しかし、このやり取りが事実であれば、被害を訴える家庭が「自分たちの声は届いていない」と感じたとしても不思議ではない。
行政に求められるのは、法的手続きだけではない。
まず話を聞くこと。
そして説明することだ。
全国で繰り返される構図
白岡市の問題は、一自治体だけの問題ではない。
全国では、
・重大事態は認定される
・第三者委員会も設置される
・報告書も公表される
しかしその後、
・被害回復が進まない
・行政対応が見えない
・再発防止策が曖昧
というケースが少なくない。
被害者側が求めているのは、加害者への処分だけではない。
なぜ問題が起きたのか。
なぜ防げなかったのか。
今後どう改善するのか。
その説明である。
認定はゴールではない
重大事態認定は終着点ではない。
むしろ出発点だ。
第三者委員会がいじめを認定した以上、その後の行政対応や被害回復こそが問われる。
白岡市には今後も、被害者側の声に耳を傾けながら、透明性のある説明と検証が求められる。
「誰もが安心して暮らせる白岡」を掲げるのであれば、まずは安心を奪われたと訴える家庭にどう向き合ったのか。
その説明責任から逃れることはできない。
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