2014年に発覚したベネッセの大規模個人情報流出事件は、教育業界に「子どもの情報をどう守るのか」という重い課題を残した。最大約3504万件にのぼる顧客情報が外部に流出し、子どもや保護者の氏名、住所、生年月日などが社会問題となった。
それから12年。2026年の学校現場では、今度はサポート詐欺による不正送金や個人情報漏洩のおそれが相次いでいる。保護者が学校を信じて預けたお金、子どもの体力テスト結果や氏名が、職員室のパソコン操作一つで外部にさらされる現実がある。
静岡県牧之原市立相良中学校では、職員がパソコンに表示された偽の警告画面をきっかけに、表示された番号へ電話した。相手の指示に従って操作した結果、学校管理口座から約1000万円が不正送金されたとみられている。口座には修学旅行積立金、教材費、卒業アルバム代など、保護者から預かった費用が含まれていた。
これは「職員がだまされた」で終わる話ではない。学校口座を扱う端末で、なぜ遠隔操作につながる行為が止められなかったのか。送金前の複数人確認は十分だったのか。保護者説明会で謝罪して終わりではなく、学校と教育委員会には再発防止策を具体的に示す責任がある。
高知市立神田小学校でも、教員が教材印刷中に偽の警告画面に遭遇し、電話連絡後に共有パソコンを遠隔操作されたとみられている。保存されていた児童、保護者、教職員、卒業生を含む約1850人分の個人情報が漏洩したおそれがある。住所や口座情報が含まれていないとしても、子どもの体力テスト結果は家庭にとって非常に敏感な情報だ。
問題は、サポート詐欺だけではない。本来なら削除されるべきデータが共有パソコンに残っていた点も重い。学校では、児童情報、成績、健康、家庭環境、保護者連絡先など、多くの情報が日々扱われる。便利な共有端末が、管理を誤れば漏洩の入口になる。
ベネッセ事件は、企業に委託先管理、アクセス制限、監視体制の見直しを迫った。しかし、学校現場では今も「忙しい」「知らなかった」「研修で聞いただけ」で済まされる場面がある。GIGAスクール端末や校務支援システムが広がった一方で、偽警告への対応、遠隔操作の禁止、学校口座の送金確認、共有端末のデータ削除が現場で徹底されていなければ意味がない。
文科省と教育委員会に求められるのは、通知を出すことではない。学校口座を扱う端末と教材検索用端末の分離、遠隔操作の原則禁止、多要素認証、送金時の複数人承認、共有パソコン内の個人情報点検、実際の偽警告画面を使った訓練が必要だ。
保護者から見れば、学校は子どもを預ける場所であり、個人情報と費用を預ける場所でもある。「学校だから大丈夫」という信頼があるからこそ、情報漏洩や不正送金は深い不安につながる。
ベネッセ事件から12年。教育現場はまだ同じ問いの前に立っている。
子どもの情報を本気で守る気があるのか。
牧之原中と神田小の被害は、その問いを文科省、教育委員会、学校に突きつけている。
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編集部まとめ
ベネッセの大規模個人情報流出事件から12年が経っても、学校現場では情報漏洩やサポート詐欺被害が続いています。牧之原市立相良中学校では学校口座から約1000万円が不正送金されたとされ、高知市立神田小学校では約1850人分の個人情報が漏洩したおそれがあります。保護者が預けたお金と、子どもの身体データが狙われる時代です。研修だけでなく、端末分離、遠隔操作禁止、送金時の複数人確認、共有パソコン内のデータ管理まで徹底する必要があります。
この記事の要点Q&A
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