いじめで亡くなった海都さんから10年 光高校で追悼式 学校が見逃した「助けを求める兆候」

光高校に設置された海都さんの追悼碑と花を背景に、「全国注目ニュース」「海都さんの死から10年」「光高校で追悼式」「いじめ再発防止を誓う」と表示した追悼報道のアイキャッチ画像

山口県立高校2年だった海都さん=当時(17)=が、いじめを苦に自ら命を絶ってから26日で10年を迎えた。

海都さんが通っていた高校を再編統合に伴って継承した山口県光市の光高校では追悼式が行われ、遺族や当時の教職員、県教育委員会の関係者ら約40人が献花し、いじめを繰り返さないことを誓った。

式は、海都さんが好きだったパンダの顔と「かけがえのない いのち とわに守ることを誓って」との言葉を刻んだ石碑の前で行われた。

母親「相手がどう受け止めるか想像してほしい」

追悼式で海都さんの母親は、参列した生徒がこの日の出来事を友人へ伝え、いじめについて考えるきっかけにしてほしいと願った。

そのうえで、自分では軽い冗談や悪ふざけのつもりでも、受けた相手がどう感じるのかを考え、想像力を持って行動してほしいと訴えた。

遺族はこれまでも、「一度失われた命は二度と戻らない」「同じ思いを誰にもしてほしくない」と繰り返し語ってきた。

2025年の追悼式では、母親が「遺族にとって最もつらいことは、息子の存在や出来事が忘れ去られてしまうこと」と述べ、学校名を伏せ続けることが事件を隠す意識につながるとの懸念も示していた。遺族の意向を受け、海都さんが通っていた学校の継承校が光高校であることが、事件から9年となった昨年に初めて公にされた。

駅に残されたバッグと「ありがとう」の言葉

海都さんは2016年7月26日未明、周南市のJR山陽本線・櫛ケ浜駅で貨物列車にはねられ、亡くなった。

駅の階段にはバッグとスマートフォンが残され、メモには家族や周囲への感謝を示す「ありがとう」などの言葉が記されていた。

その後の調査で明らかになったのは、単発のトラブルではなく、学校生活と部活動の中で繰り返された行為だった。

山口県いじめ調査検証委員会は、同級生らによる暴言、教室からの締め出し、役割の押し付け、身体的特徴をからかうあだ名、部活動のLINEグループからの排除など、18項目をいじめと認定した。

報告書には、女子生徒の制服のリボンを頭や首に付けられた姿を撮影されたこと、菓子やジュースを頻繁に求められたこと、大切な運動用具を勝手に使われて壊されたこと、嫌がる様子を写真に撮られたことなども記録されている。

一つ一つを「ふざけ」「いじり」と受け流したとしても、海都さんにとっては逃げ場のない負担が積み重なっていた。検証委員会は、こうした行為が心理的な苦痛を与えていたと判断した。

教員の言動も「いじめに類する行為」

問題は生徒同士の関係だけではなかった。

検証委員会は、教職員による雑用や役割の押し付け、身体的特徴をからかうあだ名の使用などについても、「いじめに類する行為」があったと指摘した。

教員が軽い冗談のつもりで発した言葉であっても、生徒に苦痛を与えるだけでなく、周囲の生徒に「この扱いは許される」と受け止めさせ、別のいじめを生む端緒となる可能性があると警告している。

報告書は、本人がいじめだと認識していなかったり、被害を否定したりしている場合でも、学校側が可能性を疑い、早期発見に努める必要があるとした。

「本人が何も言わなかった」ことを、問題がなかった根拠にしてはならないという指摘だ。

部活動で重なった負担 組織的な支援は不十分

海都さんは、部活動でも経験や技術に見合わない練習を求められ、安全面への配慮が十分ではない状況に置かれていたとされる。

大会要員を確保するため、「助っ人」として一時的に参加すればよいとの説明を受けた後、専門的な練習や早朝練習への参加、正式入部を求められた経緯も問題視された。

検証委員会は、海都さんが退部したいと思いながら、他の部員に迷惑がかかることを気にして言い出せなかった可能性を指摘している。

学校では部活動の運営が顧問に任され、複数の教員で生徒を支える体制が十分に整っていなかった。生徒の悩みを把握し、学年や管理職が共有して対応する組織的な仕組みが機能していなかったと評価された。

学校の初動と調査にも残った問題

海都さんが亡くなった後の学校側の対応にも、複数の問題が指摘された。

県の検証報告書によると、学校は県教委へ直ちに連絡し、スクールカウンセラーの派遣を受けるなどした一方、調査に必要な部活動日誌が散逸していた。

教職員への聞き取りも一部に限られ、遺族に対して学校での様子を十分に確認しないまま、「目立ったトラブルはなかった」と伝えたことも問題とされた。

さらに、調査時に管理職が同席したことで、教員が圧力を感じ、本心を話しにくくなった可能性も指摘されている。

検証委員会は、学校が重要な情報を保持し、全教職員から中立的に聞き取り、遺族へ丁寧に説明する必要があったと結論づけた。

2022年の協定から続く追悼と再発防止

遺族と山口県は2022年3月、山口簡裁での調停成立を受け、再発防止に向けた協定を結んだ。

協定には、命日に追悼の機会を設けることに加え、相談体制の強化、自殺予防教育の継続、記念樹と石碑の設置、海都記念文庫の整備などが盛り込まれた。

同年4月には、学校敷地内に石碑が設置され、ソヨゴが植えられた。追悼式は協定に基づき毎年開かれており、学校と県が海都さんの死を風化させず、教訓を引き継ぐ場となっている。

編集部まとめ

海都さんを追い詰めたのは、一度の暴力や一人の発言だけではなかった。

教室での排除、部活動での負担、あだ名や悪ふざけ、教職員の言動、助けを求めにくい人間関係。それぞれが見過ごされ、積み重なった先に、17歳の命が失われた。

検証報告書が示した最大の教訓は、本人から明確な訴えがないことを「問題がない」と受け止めてはならないという点にある。

表情の変化、孤立、役割の集中、冗談の標的、グループからの排除。学校には、こうした小さな兆候を教職員全体で共有し、本人が声を上げる前に動く責任がある。

追悼式を続けるだけで、再発が防げるわけではない。石碑に刻まれた誓いを、日々の教室と部活動でどこまで実行できるのか。事件から10年を迎えた今、学校と県の取り組みが改めて問われている。

週刊TAKAPI編集部/一条

特記事項:本記事は、2026年7月26日に光高校で行われた追悼式の報道、山口県いじめ調査検証委員会の公表報告書、過去の追悼式および再発防止協定に関する報道を基に構成しています。自死の具体的な方法については、事件経過を説明するために必要な範囲にとどめています。本記事は週刊TAKAPIが取り上げる全国注目ニュースです。

Q海都さんはどのようないじめを受けていたのですか?
A山口県のいじめ調査検証委員会は、同級生らによる言葉の暴力、教室からの締め出し、役割の押し付け、部活動のLINEグループからの排除など、18項目をいじめと認定しました。
Q教職員の対応にも問題があったのですか?
A検証委員会は、教職員による雑用の押し付けや、身体的特徴に関わるあだ名の使用などを「いじめに類する行為」と指摘しました。学校内で情報を共有し、組織的に対応する体制も十分ではなかったとされています。
Q追悼式はなぜ毎年行われているのですか?
A2022年に遺族と山口県が結んだ再発防止協定に基づき、海都さんの命日に追悼の機会を設け、事件を風化させず、再発防止につなげるためです。
Q再発防止協定には何が盛り込まれていますか?
A相談体制の強化、自殺予防教育の継続、記念樹や石碑の設置、海都記念文庫の整備、命日における追悼などが盛り込まれています。
Q事件から得るべき教訓は何ですか?
A本人がいじめを明確に訴えていなくても、孤立や排除、役割の集中、あだ名、悪ふざけなどの兆候を学校全体で共有し、早い段階で支援につなげる必要があるという点です。

18項目のいじめ認定 10年後も問われる学校の責任

山口県立高校2年だった海都さんが亡くなってから10年となり、光高校で追悼式が行われました。県の検証委員会は、生徒同士の暴言や排除、部活動での負担など18項目をいじめと認定し、教職員にも「いじめに類する行為」があったと指摘しました。遺族と県は2022年に再発防止協定を結び、相談体制の強化、自殺予防教育、記念樹や石碑の設置などを進めています。10年という節目を迎え、学校が日常の小さな兆候を見逃さず、命を守る仕組みを機能させられるかが改めて問われています。

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