兵庫県相生市の市立中学校に通っていた男子生徒=当時13歳、中学2年=が2023年3月、いじめを受けた末に自死した問題で、相生市が遺族側に解決金700万円を支払い、和解する方針を固めたことが分かった。
和解案には金銭の支払いだけでなく、教職員の生徒指導に関する資質向上、児童生徒へのいじめ防止教育、第三者委員会の提言に基づく再発防止策を検証する委員会の活動継続などが盛り込まれている。
市は9月の市議会に和解案を諮り、承認されれば正式な和解成立を目指す。
第三者委員会「少なくとも36件のいじめ」
男子生徒が亡くなったのは2023年3月。
相生市教育委員会は同年6月1日、「相生市児童等に関する重大事態調査委員会」を設置して調査を開始した。
市教育委員会はその後、調査報告書を公表し、再発防止に取り組むとしている。市の公式ページでも、今回の事案について「いじめによる生徒自死事案」として重大事態調査を行ったことが確認できる。
報道によると、第三者委員会は男子生徒が同級生らから受けた行為について、少なくとも36件をいじめと認定。
「死ね」「きもい」などの暴言だけではなく、羽交い締めにされたり、首を絞められたりする行為も認定され、自死についてはいじめが主な要因だったと結論付けた。
学校の対応にも問題 情報共有や継続的ケアを指摘
第三者委員会の調査では、いじめそのものだけでなく、学校側の対応にも問題があったと指摘されている。
これまでの報道では、校内で十分な情報共有が行われていなかったことや、生徒に対する継続的なケアが十分ではなかったことなどが問題視されている。
相生市教育委員会は公式サイトで、
今後このような重大事態が二度と起こらないように
として、報告書を真摯に受け止め、再発防止に取り組む方針を示している。
さらに遺族から2025年2月、「学校及び教育委員会による対応上の問題点」について意見書が提出され、市教委は同年6月に回答。
市は2025年2月に再発防止のための検証委員会を設置したことも公表している。
遺族が今年1月、弁護士会に和解あっせん申し立て
今回の和解協議は、遺族側からの申し立てによって進められてきた。
遺族は2026年1月、学校側のいじめへの対応が不適切だったとして、兵庫県弁護士会紛争解決センターに**裁判外紛争解決手続き(ADR)**による和解あっせんを申し立てた。
そこで提示された和解案について、市が受け入れる方針を示した。
重要なのは、今回の和解案が700万円の解決金だけではないという点だ。
700万円+「再発防止を続けること」
和解案には、市が遺族へ700万円を支払うことに加え、
- 教職員の生徒指導に関する資質向上
- 児童生徒へのいじめ防止教育
- いじめ防止対策の推進
- 再発防止策を検証する委員会の活動継続
などが盛り込まれたとされている。
つまり今回の和解は、金銭によって問題を終結させるだけではなく、市が今後も再発防止策を継続することを約束する内容になっている。
遺族側が和解あっせんを申し立てた理由として、「市としていじめを防ぐ対策を継続することを約束してほしい」と求めていたことも報じられている。
男子生徒の命は戻らない。
だからこそ、今回の和解で問われるのは、700万円という金額以上に、市が約束した再発防止を今後どこまで実行し続けるのかではないか。
市議会が承認すれば和解成立へ
相生市は、9月に開かれる市議会で和解案について承認を求める。
市議会が受け入れを可決すれば、遺族と市との和解が正式に成立する見通しだ。
相生市議会の公式サイトでも、9月1日付で2026年第4回定例会の議案情報が掲載されている。
週刊TAKAPIでは、議会での審議内容や議員からどのような質問が出るのかについても確認していく。
別に続く「同級生3人」への損害賠償訴訟
一方、市との和解とは別に、遺族は当時の同級生3人に対する民事訴訟を起こしている。
遺族は2026年2月末、同級生3人に計約8871万円の損害賠償を求め、神戸地裁姫路支部に提訴した。
訴状では、2022年4月から2023年3月ごろまで、殴る、蹴る、首を絞める、頭部を校舎の窓の外へ出すなどの行為のほか、暴言やSNSへの画像投稿などがあったと主張されている。
5月20日に開かれた第1回口頭弁論では、3人のうち1人は請求原因となった行為への認否を明らかにせず、残る2人は争う姿勢を示している。
この民事訴訟は、市との和解とは別に今後も続く。
なお、現時点で確認できた裁判報道では、被告として報じられているのは当時の同級生3人であり、「同級生3人とその両親」という情報は確認できなかった。週刊TAKAPIでは確認できた範囲に基づき、同級生3人として記載する。
「和解」で終わらせてはいけない
今回、市が遺族との和解に向けて動き始めたことには大きな意味がある。
しかし、和解成立は、この重大事態の検証が終わることを意味しない。
第三者委員会が認定したのは、36件にも及ぶいじめと、不十分だった学校対応だった。
市自身も再発防止のための検証委員会を設置している。
これから確認されるべきなのは、
学校現場で何が変わったのか。
教職員間の情報共有は改善されたのか。
生徒がいじめを訴えた際の初動は変わったのか。
第三者委員会の提言は実際に実施されているのか。
そして、
検証委員会は市にとって都合の悪い結果が出たとしても、公に検証結果を示し続けるのか。
という部分だろう。
再発防止策は、「策定した」「委員会を設置した」で完了するものではない。
実際に学校現場で機能し、次の被害を防ぐことができて初めて意味を持つ。
遺族が求めた「いじめを防ぐ対策を継続する」という約束を、市が今後も履行し続けるのか。
700万円の解決金よりも、その約束の行方こそが、この和解で最も重要な部分ではないか。
週刊TAKAPIでは、市議会での和解案審議とともに、相生市教育委員会による再発防止策、検証委員会の活動について引き続き確認する。
週刊TAKAPI 編集部/一条
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