【社会・教育】いじめ認知76万9022件で過去最多 防止法は13年未改正、院内集会で制度見直し求める声

2024年度のいじめ認知件数が76万9022件で過去最多となり、いじめ防止対策推進法の見直しを求める議論が行われていることを伝える報道アイキャッチ

学校で認知されたいじめが過去最多となるなか、現行の「いじめ防止対策推進法」では被害を受けた子どもを十分に守れないとして、当事者や支援者、国会議員らが法改正の必要性を議論する院内集会が開かれた。

集会は8月24日、衆議院第二議員会館で開催された。高校生や大学生、保護者、学校関係者らが参加し、いじめ認定後の対応、自治体の連携体制、私立学校への監督、加害側への指導などをめぐって意見が出た。

一方、議論を考えるうえでは「いじめ認知件数の増加」と「実際のいじめ発生の増加」を同一視しないことや、自殺者数など別の統計を防止法の不備と直接結びつけないことも必要だ。

いじめ認知76万9022件、重大事態1404件

文部科学省の2024年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小学校、中学校、高校、特別支援学校で認知されたいじめは76万9022件だった。

心身への重大な被害や長期欠席などにつながる「重大事態」は1404件。いずれも過去最多となった。

ただし、認知件数が増えたからといって、同じ割合で新たないじめが増えたと単純には判断できない。

学校側が小さな兆候も積極的に「いじめ」として認知する運用が浸透すれば、統計上の件数は増える。認知件数の増加には、実際の発生状況と学校側の把握姿勢の双方が含まれている。

一方、重大事態も過去最多となっていることから、認知後の対応や被害者保護が十分に機能しているかは別途検証する必要がある。

防止法は2013年施行 法律本体は約13年間改正されず

学校のいじめ対応の基本となっているのが、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」だ。

同法は、学校や自治体にいじめ防止の基本方針策定や重大事態への対応などを求めている。

一方、法律本体は施行以来、大きな改正が行われていない。

文科省は運用面を補うため、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を整備し、2024年8月には改定している。

また、いじめ問題対策連絡協議会の設置率は都道府県では100%だが、市町村では87%にとどまる。

法律上、協議会は必置ではなく「置くことができる」とされており、集会では設置を義務化すべきだとの意見も出た。

高校生・大学生から「一般社会なら許されない行為が学校ではなぜ通るのか」

院内集会の第1部には高校生や大学生が参加した。

参加者からは、一般社会では問題になる行為が学校内では「いじめ」という言葉で処理されることへの疑問や、教員の多忙を理由に対応が遅れない仕組みを求める声が出た。

さらに、

「いじめに罰則がないのはなぜか」

「自治体の連絡協議会を任意ではなく義務にしてほしい」

といった意見も示された。

支援活動に参加する高校生からは、被害経験者などの声を踏まえ、「今の法律では被害者を守れない」「当事者の声を現場で生かせる仕組みが必要」との趣旨の発言があった。

ただし、これらは集会参加者による制度評価であり、現行法が法的・制度的に機能していないことが統計的に証明されたという意味ではない。

保護者らは私立学校の監督や認定後の説明を問題視

第2部では、保護者や学校関係者などから学校側の対応をめぐる意見が出た。

主な論点は、

  • 「いじめ」という言葉だけでは深刻な被害が伝わりにくい
  • 教員の適性や対応能力を検証する仕組みが必要
  • 私立学校では教育委員会の直接的な監督が及びにくい
  • いじめ認定後、在校生や保護者への説明を求めたい
  • 被害者保護だけでなく加害側への指導も必要

といった内容だった。

ただし、こうした指摘も全国すべての学校で共通する問題を示した調査結果ではなく、当事者や支援者から示された制度改善案として区別する必要がある。

特に、罰則導入や監督強化については、被害者保護だけでなく、事実認定の手続き、証拠の扱い、誤認定への対応、学校現場の負担なども含めた制度設計が必要になる。

スクールカウンセラー配置拡大でも相談経路としては限定的

文科省は学校へのスクールカウンセラー(SC)配置を進めている。

一方、2024年度の問題行動調査では、いじめについてSCなどの相談員へ相談した割合は、国立2.1%、公立1.5%、私立1.6%だった。

SCなどがいじめ発見のきっかけとなった割合も、国立・公立0.2%、私立0.5%にとどまる。

配置人数だけではなく、子どもが実際に相談しやすいのか、相談後に学校組織がどのように対応するのかという「利用される仕組み」の検証も必要になる数字だ。

小中高生の自殺538人 いじめとの単純な因果関係には注意

2025年の小中高校生の自殺者数については538人とされ、1980年以降で最多となった。

また、人口動態統計では若年層の主要な死因として自殺が大きな割合を占めている。

ただし、自殺の背景には家庭、健康、進路、人間関係、学校生活など複数の要因があり、すべてをいじめや現行法の不備に結びつけることはできない。

いじめ防止法の改正を議論する際にも、自殺者数をそのまま「法律が改正されていない結果」と扱うのは適切ではない。

2019年以降止まる改正議論

いじめ防止対策推進法をめぐっては、2018年から2019年にかけて超党派議員による勉強会で改正案の検討が行われた。

その後、2019年に座長試案が示されたものの、法改正には至っていない。

今回の院内集会は、認知件数や重大事態が過去最多となるなか、約13年間改正されていない法律を改めて検証する場となった。

ただ、現時点で国会における具体的な法改正手続きが再開したことまで確認されたわけではない。

論点は「法律を変えるべきか」だけではない。

現行法やガイドラインが学校現場でどこまで実行されているのか、重大事態認定後に被害者側への説明や支援が機能しているのか、自治体や私立学校を含めた監督体制をどう設計するのかまで検証する必要がある。

編集部まとめ

2024年度のいじめ認知件数は76万9022件、重大事態は1404件となり、いずれも過去最多となった。

一方、2013年施行のいじめ防止対策推進法は約13年間、法律本体の改正が行われていない。

8月24日の院内集会では、当事者や保護者らから、連絡協議会の義務化、認定後の説明、私立学校への監督、被害者保護と加害側への指導などを求める声が出た。

ただし、「現行法では守れない」という評価は参加者側の主張であり、認知件数や自殺者数だけから法律の効果を断定することはできない。

重要なのは、件数の多寡だけでなく、認知された後に学校・自治体がどのように動き、被害を受けた子どもを実際に守れているのかという運用面の検証だ。

週刊TAKAPI 編集部/成田

特記事項

本記事は文部科学省などの公表統計と院内集会で示された意見を区別して構成しています。「現行法では被害者を守れない」などの表現は集会参加者側の評価であり、統計上確認された事実とは分けて記載しています。自殺者数についても、いじめや法制度との直接的な因果関係は断定していません。

Q2024年度のいじめ認知件数は何件ですか?
A小中高校と特別支援学校を合わせて76万9022件です。
Q「重大事態」は何件ありましたか?
A2024年度は1404件で、認知件数とともに過去最多となりました。
Qいじめ防止対策推進法はいつ施行されましたか?
A2013年に施行されました。法律本体は施行から約13年間、大きな改正が行われていません。
Qいじめ認知件数が増えたのは、いじめ自体が増えたからですか?
Aそれだけでは判断できません。学校側が小さな事案も積極的に認知するようになれば、統計上の件数は増えます。実際の発生増加と認知の積極化を分けて見る必要があります。
Q法改正は決まっているのですか?
A現時点で法改正が決定したわけではありません。今回の院内集会では改正を求める意見が出ましたが、具体的な国会手続きが再開した事実までは確認されていません。

情報提供募集

各種ご相談、情報提供、現地写真・動画、関係者からの証言などをお持ちの方は、メール(info@108takapi.jp)、各種SNSのDM、または公式LINEまでお寄せください。週刊TAKAPI編集部が内容を確認のうえ、取材・報道の参考とさせていただきます。

リアルタイム
サイト訪問者数
44

コメント

1件
  • 「いじめ」という言葉で犯罪を軽くしていないか?海外のbullyingとの違いと学校問題を考える – 週刊TAKAPI

    […] https://108takapi.jp/2026/08/31/bullying-recognition-769022-law-reform-2024/ […]

コメントを投稿する

名前は空欄でも投稿できます。その場合は「匿名」と表示されます。