【独自検証・新城】市の外郭・関連団体は本当に稼げているのか 「つくで手作り村」など3団体、売上・人件費・赤字・市支出を横断

新城市が2026年9月定例会に提出した資料の中に、市民には少し分かりにくいが、読んでおきたい3本の「経営状況報告書」がある

公益財団法人農林業公社しんしろ
有限会社つくで手作り村
新城市土地開発公社

市が出資したり、補助金を支出したり、公共施設の運営を任せたりしている団体だ

普段、市民が目にするのは「道の駅」「農業支援」「土地取得」といった表側の仕事だろう

では、その財布の中はどうなっているのか

どれだけ自分たちの事業で収入を得ているのか
人件費はいくらか
黒字なのか赤字なのか
市からいくら入っているのか
利益や損失は積み上がっているのか

週刊TAKAPIは、新城市議会に提出された2025年度=令和7年度の最新決算を横断した

すると、単純な「黒字・赤字」だけでは見えない3団体それぞれの姿が浮かぶ

特に目を引くのが、道の駅「つくで手作り村」だ

各部門の売上は前年を上回った

それでも会社全体では約74万円の最終赤字となった

一方、市からは指定管理料として年間660万円が支払われている

「売上が伸びたのに、なぜ赤字なのか」

ここから見ていく

新城市議会には2026年9月定例会の報告第7号から第9号として、3団体の最新経営状況が提出されている 


まず3団体を横に並べる

3団体は事業目的も会計方式も違うため、売上や利益をそのままランキング化することはできない

それを前提に、2025年度決算から主要数字を抜き出すとこうなる

団体 主な事業収入等 2025年度の損益・増減 市から確認できる主な支出等

つくで手作り村 純売上高等 9927万円 当期純損失 約74万円 指定管理料660万円

農林業公社しんしろ 事業収益8466万円 一般正味財産 約479万円減 市の助成補助金564万円

新城市土地開発公社 事業収益4176万円 特殊要因を含み当期純利益約1億1914万円 市補助金1612万円

数字だけ見ると土地開発公社が圧倒的に「稼いだ」ように見える

しかし、それは危険な読み方だ

土地開発公社の最終利益には、通常の営業活動とは性格の違う大きな会計項目が含まれている

逆に、つくで手作り村が74万円の赤字だからといって「経営失敗」と即断することもできない

公的な目的を持つ団体を見る場合、重要なのは数字がどう作られているのか


つくで手作り村 売上は各部門で増えた

まず「道の駅つくで手作り村」を運営する有限会社つくで手作り村から見る

2025年度の事業報告書では、主要4部門すべてで前年を上回った

山家市の売上高は3509万2000円で前年比3.14%増

味彩館は2798万9000円で4.37%増

勇気工房は2396万2000円で8.97%増

とんちん館は114万5000円で11.38%増だった

会社自身も「どの部署も売上高は増収」と報告している 

ここだけ読めば順調に見える

実際、五平もちなどの値上げ後も販売本数が伸びたほか、新商品の開発や廃棄前野菜の商品化など、現場で売上を作ろうとしている様子が決算資料から読み取れる 

ところが、会社全体の損益計算書を見ると結果は違う


9927万円の収入、それでも営業赤字98万円

2025年度の損益計算書では、

売上高 7560万6212円
体験収入 100万920円
受取手数料 1653万3748円
役務収益 12万9762円
施設管理受託金 600万円

これらを合わせた純売上高は9927万642円

ほぼ1億円だ

しかし売上原価を差し引いた売上総利益6481万6655円に対し、販売費及び一般管理費は6580万6414円

結果、98万9759円の営業損失となった

営業外収益などを加味しても経常損失は71万8790円

最終的な当期純損失は73万9790円だった 

売上は伸びた

だが利益は残らなかった

ここが2025年度のつくで手作り村の決算を読むうえで一番分かりやすいポイントだ


人件費は約3910万円

では何にお金がかかっているのか

販売費及び一般管理費の中で大きいのが人件費だ

役員給与 420万円
給料手当 3128万7889円
法定福利費 252万3281円
福利厚生費 108万7284円など

決算書に「人件費」としてまとめられた金額は3909万9954円

約3910万円になる 

9927万円の純売上高等に対して単純計算すると、4割弱に相当する

ただ、これを「人件費が高すぎる」と即断するのは違う

飲食
物販
加工
体験事業
施設管理

いずれも人がいなければ成り立たない仕事だからだ

むしろ問題は別にある


「人件費が多い」のに「人が足りない」

つくで手作り村の事業報告には、かなり生々しい一文がある

従業員の人員不足

2025年12月から、すき間バイトアプリ「タイミー」を導入

51回募集し25人を採用、そのうち2人をパートの直接雇用へ切り替えたとしている 

新城市の監査委員も別の角度から同じ問題を指摘している

2026年2月公表の監査結果では、

「従業員の高齢化と人員不足が課題となっている」

として、人材派遣なども活用して不足解消に取り組むよう求めた

市側にも人材不足への支援を求めている 

約3910万円の人件費を計上しながら、それでも現場では人が足りない

これは単純な経費削減では解決しにくい問題だ


市から指定管理料660万円

つくで手作り村は民間の物販・飲食施設だけではない

新城市が出資する法人であり、市の公共施設「新城市つくで手作り村」の指定管理者でもある

新城市は発行済み84株のうち21株を保有

出資額は105万円

指定期間は2024年4月1日から2029年3月31日までとなっている

そして指定管理料は、

2024年度 660万円
2025年度 660万円

だった 

ここは「税金で赤字を穴埋めしている」と短絡的に書いてはいけない

指定管理料は、施設や附属設備の維持管理、利用許可、道の駅の駅長業務など、市から任された公共業務への対価だからだ 

ただし市民から見れば、

年間660万円を支出して、どのような公共サービスを受け取っているのか

を見る必要はある


累積赤字ではない 利益剰余金は873万円

もう一つ確認しておきたい

2025年度は約74万円の赤字だったが、つくで手作り村が累積赤字に陥っているわけではない

期首の繰越利益剰余金は947万6957円

そこから2025年度の純損失73万9790円が差し引かれ、年度末は873万7167円

純資産全体では1293万7167円となっている 

つまり、

単年度は赤字しかし過去からの利益の蓄積は残っている

というのが正確な状態だ

「赤字企業」とだけ書けば、この部分が抜け落ちる


監査では「財産台帳が整理されていない」と指摘

経営数字とは別に見逃せないものもあった

新城市監査委員は、つくで手作り村について、

「備品台帳を含め財産台帳が整理されていない状況が続いている」

として、早急な整理を求めている 

監査全体としては、関係法令や協定書に沿って業務は「概ね適正に処理されている」と評価されている

だから重大な不正が発覚したという話ではない

それでも、市が出資し、公の施設を任せ、指定管理料を支払っている以上、財産管理は基本中の基本だ

しかも監査の文言は「整理されていない」だけではなく、「状況が続いている」

ここは軽く見るべきではない


農林業公社しんしろ 事業収益は8466万円

次は公益財団法人農林業公社しんしろ

こちらは農地利用、農作業受託、農業機械の賃貸、担い手育成、農林産物生産、種苗供給など、新城市の農業を支える役割を担っている

2025年度の事業収益は8466万4180円

内訳を見ると、

農作業受託 1228万5377円
農林産物生産 2246万1520円
種苗等生産・供給 4377万7680円
受託事業 401万7322円

などとなっている

前年の事業収益8467万3805円と比べると、ほぼ横ばいだ 


市から564万円の助成補助金

一方、収入は事業だけではない

2025年度の受取補助金等は748万3966円

そのうち564万1715円が新城市からの農林業公社助成補助金として計上されている 

経常収益全体は9328万5245円

対して事業費だけで9654万2380円となった

最終的に一般正味財産は年度中に479万2741円減少

指定正味財産も含めると、正味財産期末残高は2億5451万2284円となっている 

つまり農林業公社についても、

事業収入は8400万円を超えているが、その年度の経常的な活動だけで余裕のある黒字を生み出しているとは言いにくい

という決算だ


農林業公社も人に金がかかる

農林業公社の費用を見ると、給与手当だけで260万2626円

臨時雇賃金は1508万3106円

福利厚生費は213万1561円となっている 

ただし、これも単純に「人件費を減らせ」と言える話ではない

農作業や菌床センターなど、現場で人が動かなければ成立しない事業を抱えている

見るべきなのは、人件費の大小そのものより、

市からの補助を受けながら、地域農業を維持するという公的役割に見合った成果を出せているか

だろう


土地開発公社 「1億1914万円黒字」の数字には注意

3団体目が新城市土地開発公社だ

2025年度の損益計算書では、最終的な当期純利益として1億1914万1853円が計上されている 

この数字だけを取り出せば、

「土地開発公社は1億円以上稼いだ」

という見出しも作れてしまう

しかし、それでは決算を読み違える

通常の事業収益は4176万1843円

これに対して事業原価は4039万1927円

事業総利益は136万9916円

販売費及び一般管理費を引いた事業利益は69万6820円程度だ

さらに支払利息などを反映した経常利益は49万5194円となっている

最終利益が1億円を超えた背景には、通常営業とは異なる前期損益修正益1億4459万5052円などの大きな項目がある一方、町並保有地売却に伴う土地評価損2594万8393円も計上されている 

だから、

1億1914万円の最終黒字=通常業務で1億円稼いだ

ではない

ここは市民向けの記事では特に分けて伝える必要がある


土地開発公社には市から1612万円

土地開発公社の2025年度収益を見ると、補助金等収益として1612万3313円が計上されている

資料では「新城市土地開発公社補助金」と明記されている 

土地開発公社はそもそも、市の政策に必要な土地を先行取得するなど、通常の民間会社とは異なる役割を持つ

したがって補助金を受けていること自体を「稼げていない証拠」とすることはできない

だが、年間1600万円を超える市費が入っている以上、その必要性と成果は市民に説明されるべき数字でもある


3団体、市から確認できる支出だけで約2426万円

今回確認できた主な市支出を単純に足すと、

つくで手作り村 指定管理料660万円
農林業公社しんしろ 助成補助金564万1715円
土地開発公社 補助金1612万3313円

合計は約2836万円

になる

ただし、これは「3団体に使った税金の総額」ではない

別の委託料、取引、施設整備費、市が直接負担した経費などが存在する可能性があり、逆に会計上の補助金には特定目的のものもある

したがって週刊TAKAPIでは、今回の決算資料で明確に確認できた主要な市支出として扱う

ここを混同してはいけない


「公金が入っている=悪」ではない

この手の記事で一番簡単なのは、

「税金投入」
「赤字」
「天下り」
「外郭団体」

という言葉だけを並べて煽ることだ

しかし、それでは決算を読む意味がない

つくで手作り村には地域農産物の販売拠点、観光、道の駅、交流拠点としての役割がある

農林業公社には、民間企業だけでは担いにくい農地や担い手を支える仕事がある

土地開発公社にも、市の土地政策を担う目的がある

公共性を持つ団体は、利益最大化だけを目的に存在しているわけではない

だから問題は、

「黒字か赤字か」だけではない


それでも「稼げていますか」は聞かなければならない

公共目的があるからといって、経営数字を見なくていいわけでもない

むしろ逆だ

市が出資する
補助金を出す
指定管理料を払う

のであれば、市民にはその金がどう使われ、何を生み出したのかを知る理由がある

つくで手作り村では各部門が増収したのに、会社全体では約74万円の赤字だった

農林業公社は8466万円の事業収益を得ながら、一般正味財産を約479万円減らした

土地開発公社は1億円を超える最終利益を計上したが、通常の事業で1億円を稼いだわけではない

3団体とも、決算書の一番大きな数字だけでは実態が分からない


つくで手作り村には「次の問題」もある

とりわけ週刊TAKAPIが今後追いたいのが、つくで手作り村だ

売上は増えている

利益剰余金もまだ残っている

一方で単年度赤字

人員不足

従業員の高齢化

資材・材料費や業務委託費の高騰

財産台帳について監査から指摘

という課題が同時に出ている

2026年度事業計画では、とんちん館の営業を土日祝日に限定して経費削減を図るほか、タイミーを引き続き活用して人材確保を進める方針も示している 

これはかなり具体的な経営改善策だ

だから次年度決算では、

営業日を絞った結果、赤字は改善したのか

まで見る必要がある


監査委員も市に「経営状況の把握」を求めた

そして、これは週刊TAKAPIだけが言っている話ではない

つくで手作り村に対する監査で、新城市監査委員は市の所管課に、

引き続き施設の経営状況の把握に努め、適切な指導監督に当たるよう求めている 

さらに指定管理料については、会社の資金繰りを考慮し、必要に応じて前金払いを検討するよう意見も出した

つまり監査側も、単に帳簿が合っているかを見るだけではなく、事業を継続できる経営状態かを見ている


週刊TAKAPIの視点|市民に必要なのは「決算書」ではなく「決算の意味」

新城市は3団体の経営状況報告書を公開している

これは評価すべきことだ

誰でもPDFを開けば数字を見ることができる

しかし、16ページ、26ページ、31ページに及ぶ決算書を市民全員が読み込むわけではない

「当期純利益1億1914万円」

だけ見れば、土地開発公社が大もうけしたように見える

「当期純損失74万円」

だけ見れば、つくで手作り村の経営が危険なように見える

どちらも実態を十分には表していない

行政が数字を公開することと、市民に経営状態が伝わることは同じではない

だから報道が間に入る意味がある


「いくら払ったか」の次は「何を得たか」

今回の決算から、少なくとも一つはっきりしたことがある

新城市と深く関わる3団体には、市から指定管理料や補助金として一定額の公金が入っている

それ自体は問題ではない

次に問うべきなのは、

その公金で新城市は何を得たのか

つくで手作り村なら来場者数、地域農産物の販売額、生産者への還元額、観光消費

農林業公社なら耕作放棄地の抑制、農作業受託面積、担い手育成、新規就農

土地開発公社なら先行取得した土地が政策目的にどう使われたのか、保有土地がどれだけ長期化しているのか

ここまで数字で追って初めて「費用対効果」が見えてくる


3団体は本当に「稼げている」のか

結論は、3団体を一つの物差しでは測れない

つくで手作り村は売上を伸ばしたが、2025年度は最終赤字

農林業公社は8400万円を超える事業収益がある一方、正味財産は減少

土地開発公社は巨額の最終黒字を計上したものの、その大部分を通常の「稼ぐ力」と見ることはできない

そして3団体すべてに共通するのは、程度や形は違っても新城市の財政と結びついていることだ

だからこそ、決算は議会に報告して終わりではない

市民に問われるべきなのは、

「赤字か黒字か」ではなく、「この団体に公金を出すことで、新城市にどんな価値が返ってきているのか」

だろう

週刊TAKAPIでは今後、3団体について市からの支出総額、職員・役員体制、過去5年間の損益推移、事業成果まで広げて検証する

単年度の決算では見えない「5年間でどう変わったのか」まで追えば、新城市の外郭・関連団体の本当の姿はさらに見えてくる

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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