IPグッズ市場は今後どうなる?「推し活」ブームの先で始まる実店舗・海外・体験価値の競争

アニメ、漫画、ゲーム、映画、キャラクターなどの知的財産を活用した「IPグッズ」の存在感が高まっている。

アクリルスタンドや缶バッジ、ぬいぐるみをはじめ、期間限定ショップ、コラボカフェ、テーマ型店舗など、IPを軸にしたビジネスは物販の枠を超え始めた。

今後も市場全体は拡大するとみられる一方、すべてのIPや店舗が伸び続けるわけではない。供給過多やファンの可処分所得、転売問題などを背景に、IPグッズ市場は「作れば売れる時代」から「ファンとの関係を設計する時代」へ移る可能性が高い。


IPグッズ市場が拡大している理由

IPグッズ市場を押し上げている最大の要因は、商品が単なる記念品ではなく、ファンが自分の好みや所属意識を表現する手段になったことだ。

かつてキャラクター商品は、子ども向け玩具や文房具が中心だった。しかし現在は、アニメやゲームのファン層が大人まで広がり、アクセサリー、アパレル、インテリア、化粧品、食品などにも商品領域が拡大している。

SNSに購入品や「推し活」の様子を投稿する文化も定着した。グッズは所有するだけでなく、撮影し、持ち歩き、ファン同士で共有するものになった。

映像作品やゲームが作品の入口だとすれば、グッズはファンとの関係を継続させる接点である。作品の公開や放送が終わった後も、新商品やイベントを通じて消費を生み出せる点が企業にとって大きい。


映画や配信よりも「グッズ」が重要になる理由

映画やアニメには、多額の制作費と宣伝費が必要になる。作品がヒットしても、興行収入や配信収入だけで十分な利益を確保できるとは限らない。

一方、商品化、ライセンス、イベント、ゲーム、飲食とのコラボまで展開できれば、一つの作品から複数の収益源を生み出せる。

バンダイナムコグループが掲げる「IP軸戦略」に象徴されるように、現在のコンテンツビジネスでは作品単体ではなく、IPを長期的に育て、ファンと継続的につながることが重視されている。

アニメ市場自体も海外を中心に拡大している。日本政府もコンテンツ産業を成長分野に位置づけ、海外売上高を2033年までに20兆円規模へ拡大する目標を掲げている。

こうした流れを考えれば、IPグッズは映像作品の「副産物」ではなく、作品の収益性を支える中核事業になっていくだろう。


今後伸びるのは「大量販売」より限定性の高い商品

これまでのIPグッズは、アクリルスタンド、缶バッジ、クリアファイルなど、比較的製造しやすい商品が中心だった。

しかし、多数の作品が同じような商品を相次いで発売することで、ファン側にも「似た商品ばかり」という疲れが生まれつつある。

今後は、単純にアイテム数を増やすのではなく、次のような付加価値が重要になると考えられる。

  • その場所でしか購入できない地域限定品
  • 会期や数量を絞った限定商品
  • 作中の設定や物語を反映した商品
  • 職人や地域企業と共同開発した高価格帯商品
  • 名前やデザインを選べる受注生産品
  • 購入体験そのものを楽しめる店舗限定商品

安価な商品を大量に並べる市場がなくなるわけではない。ただし、商品の希少性だけで購買をあおる方法は、ファンの疲弊や転売を招きやすい。

今後は「限定だから売れる」ではなく、「なぜこの商品を持ちたいのか」を説明できる企画力が問われそうだ。


コラボカフェや専門店が増えるのはなぜか

IP事業者が実店舗やコラボカフェに進出する理由は、飲食そのものの利益だけではない。

店舗を設ければ、飲食、物販、展示、写真撮影、イベントを一つの空間に集約できる。オンライン販売では得にくい「作品の世界に入った感覚」を提供できる点が大きい。

さらに、どの商品が売れたのか、どのキャラクターに人気が集まったのか、来店客がどの展示を撮影したのかといった反応も把握しやすい。

つまり実店舗は、販売拠点であると同時に、ファンの反応を確認するマーケティング拠点でもある。

ただし、常設店には家賃、人件費、在庫、内装更新などの負担が伴う。今後は大型の常設店を全国に増やすより、主要都市の旗艦店と各地の期間限定店を組み合わせる展開が増える可能性がある。


東京一極集中から名古屋・大阪・福岡などへ

これまでIPイベントや限定ショップは、東京に集中しやすかった。しかし、ファン人口は全国に存在する。地方から東京へ行くには交通費や宿泊費がかかり、商品代以上の負担になることも珍しくない。

そのため今後は、大阪、名古屋、福岡、札幌などの大都市圏に加え、地方都市の商業施設でも期間限定ショップが増えていくとみられる。

商業施設側にも利点がある。人気IPのショップは、商品を買う目的が明確な来店客を呼び込みやすい。通常の物販だけでは集客が難しくなった百貨店やショッピングセンターにとって、IPは来店動機をつくる有力なコンテンツとなる。

特に名古屋は東京と大阪の中間に位置し、東海圏から広域集客できる。東京、大阪、福岡に続く拠点として、IP企業が名古屋市場を重視する動きは今後さらに強まりそうだ。


海外市場が最大の成長余地になる

国内市場には少子化や人口減少という制約がある。一方、日本のアニメ、漫画、ゲームは配信サービスやSNSを通じ、海外でも日常的に視聴されるようになった。

今後のIPグッズ市場で最も大きな成長余地があるのは海外だろう。

従来は、日本国内で成功した商品を海外へ輸出する方法が中心だった。しかし今後は、地域ごとの嗜好や価格帯、宗教、商習慣を踏まえ、現地向けに商品を企画する必要がある。

また、海外では正規品を購入できる店舗が少ない地域もあり、非正規品や模倣品が流通しやすい。公式EC、現地企業とのライセンス契約、ポップアップストアの整備が市場拡大の鍵になる。

国内人気だけでなく、海外で長く支持されるキャラクターを育てられるかが、IP企業の成長を左右することになりそうだ。


「推し活市場」は無限には伸びない

市場拡大への期待が高まる一方、注意すべき問題もある。

第一は、商品数の増加によるファンの疲弊だ。一つの作品から短期間に大量の商品が発売されれば、熱心なファンでもすべてを購入することは難しい。

第二は物価上昇である。生活費が上がるなか、グッズに使える金額には限界がある。作品やキャラクターが増えれば、消費者の支出先も分散する。

第三は在庫リスクだ。IPグッズは人気の予測が難しく、流行が過ぎれば急速に売れにくくなる。限定商品を大量生産した結果、値引き販売や廃棄が発生すれば、ブランド価値を傷つけかねない。

第四は転売問題である。限定品の買い占めが続けば、本来届けたいファンが購入できず、作品や運営企業への不満につながる。

市場全体が伸びても、企業間、作品間、キャラクター間の格差はむしろ広がる可能性がある。


編集部の考察|IPグッズ市場は「商品数」から「滞在時間」の競争へ

これからのIP市場で重要になるのは、ファンに何個の商品を買ってもらうかだけではない。

作品を知り、映像を見る。SNSをフォローし、店舗を訪れ、飲食や展示を楽しみ、商品を購入する。さらにイベントに参加し、次の作品を待つ——。

こうした一連の体験をどれだけ長く続けてもらえるかが、IPの価値を決める時代になるだろう。

その意味で、コラボカフェや常設店は単なる物販店ではない。作品とファンの間に、日常的な接点をつくる場所である。

一方、企業が短期間の売り上げを優先し、同種の商品を乱発すれば、ファンの熱量を消耗させる危険もある。希少性を演出するだけの限定販売や、コンプリートを前提とした過度なランダム販売も、長期的には逆効果になり得る。

IPグッズ市場は今後も成長が期待できる。しかし勝負を分けるのは、人気作品を確保できたかだけではない。

「売れる間に売る」のか、「10年、20年と愛されるIPを育てる」のか。

市場が拡大するほど、その違いは企業の業績にも、ファンからの信頼にも明確に表れてくるのではないだろうか。


QIPとキャラクターの違いは何ですか?
AIPはキャラクターだけでなく、作品名、物語、世界観、音楽、映像、商標などを含む知的財産の総称です。キャラクターはIPを構成する要素の一つです。
QIPグッズ事業に中小企業が参入する余地はありますか?
Aあります。権利元との契約は必要ですが、地域の食品、伝統工芸、繊維、雑貨などと組み合わせれば、大手とは異なる商品を開発できます。小ロット生産や地域限定販売との相性も良い分野です。
Qランダム販売は今後も続きますか?
A販売効率が高いため、すぐになくなる可能性は低いでしょう。ただし、重複購入や廃棄への批判が強まれば、一定数を購入した際にキャラクターを選べる仕組みなど、販売方法の見直しが進む可能性があります。
QAIの普及はIPグッズ市場に影響しますか?
A商品企画や需要予測、翻訳、販促には活用が進むとみられます。一方、無断学習、類似デザイン、権利侵害への対策が不可欠です。正規品であることを証明する仕組みの重要性も高まります。

※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。

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週刊TAKAPI編集部:黒木

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