豊橋市が全小学校で展開する放課後事業「のびるんdeスクール」をめぐり、サポートスタッフの人員配置について、配置人数を決定した「具体的な証跡」が残されていなかったと包括外部監査で指摘されていたことが分かった。
監査では、登録児童数が同程度の小学校でも配置人数が「まちまち」だったことを確認。管理運営費とサポート人件費についても、どちらかに予算配分が偏っているとの「疑念を抱かせかねない状況」として、両者を合わせて運営の適切性を検討する必要があるとの趣旨を示している。
一方、週刊TAKAPIが2026年度の契約資料を確認したところ、児童の見守りなどを担う「開催運営サポート業務」は、引き続き公益社団法人愛知県シルバー人材センター連合会との随意契約となっている。
ただし、監査の指摘は主に2023年度の運用を対象としたもので、2026年度現在も同じ状態が続いていることを意味するものではない。
監査後、豊橋市は人員配置の基準と記録方法をどう見直したのか。公開資料から検証する。
「のびるんdeスクール」とは?
「のびるんdeスクール」は、小学校の放課後に地域の人たちなどと交流しながら、さまざまな体験活動を行う豊橋市の事業だ。
市は、子どもの健全育成や社会性の向上などにつなげることを目的としている。2020年度に牛川小学校と汐田小学校で始まり、2022年度2学期から市内52小学校すべてに拡大された。
一部の学校だけではなく、市内全小学校を対象とする放課後教育施策となっている。
外部監査「同程度の登録児童数でも配置人数はまちまち」
今回の検証で重要なのが、豊橋市の「令和6年度包括外部監査の結果報告書」だ。
主な監査対象年度は2023年度。「子育て・教育事業の財務事務の執行及び運営に係る管理について」をテーマに、「のびるんdeスクール」も調べられた。
「開催運営サポート業務」では、参加児童との交流や活動場所への誘導、見守りなどを担当するスタッフが配置され、愛知県シルバー人材センター連合会から派遣されていた。
市側は各校の配置人数について、児童登録者数または登録率を基準として、同連合会との協議で決定していたと説明。
しかし監査は、登録児童数が同程度でも、配置人数が「まちまち」だったことを確認した。
配置人数を決めた「具体的な証跡なし」
監査は人数の違いだけでなく、どうやってその人数を決めたのかにも踏み込んでいる。
実際の利用者数などを考慮して配置人数を決めているのであれば、市の支出を伴う以上、その検討内容を確認できる記録を残す必要があるとの趣旨を示した。
そのうえで監査報告書は、
「配置人員数の決定に関する具体的な証跡は残されていなかった」
と指摘している。
つまり監査当時、学校ごとの配置人数に違いがあっても、「なぜこの学校はこの人数なのか」を後から具体的に確認するための証跡が残されていなかったということになる。
監査対象の2月分だけで約291万円
監査報告書によると、監査対象となった2024年2月分の「のびるんdeスクール開催運営サポート業務」の支出額は、
290万9,306円
だった。
これは年間支出額ではなく、あくまで2月分の金額だ。
だからこそ、スタッフを各校に何人、何時間配置するのか、その判断基準を確認できる状態にしておくことには意味がある。
管理運営費と人件費にも監査が指摘
外部監査は、もう一つ重要な問題を挙げている。
学校ごとの管理運営業務委託料とサポートスタッフの人件費について、両者の関係を合わせて確認する必要があるとした。
監査報告書では、運営方針を市が具体的に把握しないまま両者に相関がみられない状況について、どちらかに予算配分が偏っているのではないかとの「疑念を抱かせかねない状況」と指摘。
管理運営費とサポート人件費を総合して、運営の適切性を検討する必要があるとの趣旨を示している。
ここでも、問題は単純な「金額の高い・安い」ではない。
各校の実際の活動規模に対して、どの程度の公費と人員が配置されているのか。
その説明ができる仕組みになっているかがポイントになる。
「登録者数」と「実際の利用者数」は違う
監査では、事業評価や各校への管理運営業務委託料についても指摘があった。
のびるんdeスクールは、児童が登録しただけで毎回参加する仕組みではなく、実際に利用する際には申し込みが必要となる。
そのため、登録児童数だけでは実際の活動規模を直接表しているとは限らない。
監査は、実際の利用児童数や利用延べ人数を事業評価の指標として活用することや、前年度の参加者数などから活動規模を見込み、実態に応じた支給を検討することが望ましいとの趣旨を示している。
ここは人員配置の指摘とは別の論点だが、登録者数だけではなく実利用を見るべきだという監査の問題意識は共通している。
2026年度もシルバー人材センター連合会と随意契約
では現在はどうなっているのか。
2026年度の「のびるんdeスクール開催運営サポート業務」について、市の契約資料では、公益社団法人愛知県シルバー人材センター連合会が契約相手となっている。
契約期間は2026年5月1日から2027年3月5日まで。
基本派遣料金は、
1人1時間1,383円(税別)
となっている。
契約方法は地方自治法施行令167条の2第1項第3号に基づく随意契約だ。
市は契約理由として、高齢者との交流や、高齢者の就業機会の確保、福祉増進などの政策目的を挙げている。
したがって、随意契約であることだけを理由として、不適切な契約だと判断することはできない。
今回の検証の焦点も、契約方式そのものではない。
一方、利用料収納は一般競争入札 87万8,000円で決定
同じ「のびるんdeスクール」に関連する業務でも、契約方式は異なる。
2026年度の「のびるんdeスクール利用料コンビニ等収納業務」について、市は一般競争入札を実施した。
公告では、入札後に参加資格を確認する「入札後資格確認型」を採用。地域要件と実績要件は「制限なし」で、プライバシーマークまたはISMS認証などが参加要件となっていた。
最低制限価格は設定されず、予定価格の範囲内で最も低い有効な価格を提示した事業者を落札候補者とする方式だった。
入札結果は、
決定業者:三菱UFJニコス株式会社
決定価格:87万8,000円(税別)
となった。
つまり2026年度は、
開催運営サポート業務 → 随意契約
利用料コンビニ等収納業務 → 一般競争入札
と、業務内容によって異なる契約方法が採用されている。
ただし、両業務は内容も契約根拠も異なるため、この違い自体が問題を示すものではない。
本当の焦点は「何人を、なぜ配置したのか」
2026年度のサポート業務は、基本派遣料金が1人1時間1,383円となっている。
実際の支出を左右するのは、派遣単価だけではない。
何人を配置するのか。 どの学校に配置するのか。 何時間派遣するのか。
こうした条件によって支出額は変わる。
だからこそ、監査が指摘した配置人数の決定過程が重要になる。
監査対象当時は、登録児童数が同程度でも配置人数がまちまちで、その具体的な決定の証跡が残されていなかった。
一方、この監査結果だけでは、2026年度現在も同様の状態が続いているとは判断できない。
焦点はその先だ。
監査後、配置人数の基準は明文化されたのか。
学校別の配置人数と、その決定根拠は記録されるようになったのか。
実際の利用児童数や活動規模は、現在の人員配置や公費配分にどう反映されているのか。
監査指摘後、豊橋市はどう変えたのか
「のびるんdeスクール」は、市内52小学校を対象とする豊橋市の放課後教育施策だ。
外部監査が問題にしたのは、事業そのものでも、シルバー人材センターを活用することそのものでもない。
公費を投入する以上、「なぜこの学校にはこの人数を配置したのか」を説明・検証できる仕組みが必要だという点にある。
監査から時間が経過した現在、配置基準や記録方法はどう改善されたのか。
2026年度の学校別配置人数、総派遣時間、年間支出見込みはどの程度なのか。
週刊TAKAPIでは、公開されている監査・契約資料を基に、監査指摘後の運用がどう変わったのかを引き続き追う。
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担当記者 週刊TAKAPI編集部
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