福島の公立学校、セクハラ被害訴え136人「何もしなかった」65件、教頭は停職1カ月

福島県内の公立学校で、職場のセクシュアル・ハラスメントにあたる言動を受けて不快だった経験があると回答した教職員等が136人に上ったことが、福島県教育委員会の調査で分かった。このうち被害を受けた際に「何もしなかった」とした回答は65件。県教委自身も「いわゆる泣き寝入りをしている可能性」を指摘している。

週刊TAKAPIが県教委のハラスメント調査、2026年度の懲戒処分一覧、9月定例教育委員会の審議結果を横断して確認したところ、調査結果が公表された8月25日から17日後の9月11日には、女性職員の臀部を複数回たたき、抱き寄せるなどしたとされる50代男性教頭を含む教職員3人が新たに懲戒処分を受けていた。

県教委はハラスメント防止の指針を設け、今回の調査でも98%を超える教職員等が指針を読んだと回答している。一方で、実際の職場では被害を訴える回答がなお確認され、懲戒処分に至る事案も発生している。

全教職員等を調査、セクハラ被害訴え136人

調査は6月11日から7月3日まで、県内の公立学校に勤務する全教職員等を対象に実施された。会計年度任用職員やスクールカウンセラー、スクールサポートスタッフ、部活動指導員なども対象に含まれる。

匿名アンケートでは、2025年7月1日から回答日までの間に、職場の上司や同僚からセクシュアル・ハラスメントにあたる言動を受けて不快だったことがあるかを尋ねた。

「ある」と回答したのは県立学校51人、市町村立学校85人の計136人。全体の0.92%で、前年度の131人、0.87%から人数、割合ともに増えた。

回答はあくまで本人による申告であり、136人すべてについて県教委が個別にセクハラ行為を認定したことを意味するものではない。

「必要以上に身体を触られた」6件から16件に

申告された内容をみると、「性的な話・冗談等」が42件、「容姿を話題にされた」が26件、「男のくせに、女のくせに等と言われた」が21件だった。

注目されるのが身体への接触だ。

「必要以上に身体を触られ不快であった」とする回答は16件。前年度の6件から10件増え、約2.7倍となった。

一方、被害を受けた際の対応については「何もしなかった」が65件で最多。「上司、先輩、同僚に相談した」の50件を上回った。

県教委も調査結果の総括で、「被害者の多くが、いわゆる泣き寝入りをしている可能性」を指摘している。

「管理職には知らせてほしくない」6件から16件

教育委員会に望む対応については、「特に要望はない」が59件で最も多かった。

一方、「行為者を配置転換してほしい」が32件、「行為者を処分してほしい」が24件。「管理職には知らせてほしくない」とした回答も16件あり、前年度の6件から10件増えている。

県教委自身も、調査結果から「セクハラの解決手段として教育委員会はあまり身近な存在ではない」と総括している。

調査期間中にも教頭による行為

こうした調査と並行して、実際に懲戒処分へ発展した事案も確認された。

県教委が公表した2026年度の懲戒処分一覧によると、県中地区の市町村立小学校に勤務する50代男性教頭は、4月から6月にかけ、勤務校の女性職員の臀部を手などで複数回たたいた。

さらに7月17日には、同じ職員の脇腹に手を回して抱き寄せるなどし、精神的苦痛を与えたとされる。

県教委は9月11日、教頭を停職1カ月の懲戒処分とした。

ハラスメント調査の実施期間は6月11日から7月3日までだったため、県教委が全教職員等を対象に実態調査を行っていた時期と、教頭による一連の行為の時期が一部重なることになる。

ただし、この教頭の事案が今回のアンケートを端緒に発覚したのか、別の相談・報告によって把握されたのかは、公表資料だけでは確認できない。

年度内には別の女性職員への行為でも処分

2026年度の処分一覧では、別の事案も確認できる。

会津地区の県立高校に勤務する40代男性教諭は1月30日、酒類を提供する飲食店で、隣席にいた勤務校の女性職員の臀部を触り、精神的苦痛を与えたとして6月19日付で戒告処分を受けた。

これとは別に、7月には飲酒後の自転車運転や59キロの速度超過による処分も行われている。

9月11日には教頭の事案を含め、新たに3人が処分された。

大会引率中に居眠り、生徒を拳で3回殴打

9月11日の処分には、生徒に対する行為も含まれていた。

会津地区の市町村立中学校に勤務する60代男性教諭は6月9日、部活動の大会引率中に会場で居眠りした際、勤務校の男子生徒1人が自身の右膝に故意に接触したと思い込んだ。

県教委によると、教諭は男子生徒の腹部を1回殴った後、左頬を2回、いずれも拳で殴打した。

県教委はこの教諭を停職1カ月とした。

もう1件は、いわき地区の市町村立小学校に勤務する20代女性主事。2024年7月から12月にかけて、管理職から再三の指導を受けながら学校徴収金の処理を適正に行わず、関係口座に納入先不明の残金4万4158円を生じさせたとして減給1カ月となった。

公表資料には横領や着服を認定したとの記載はなく、残金が生じた経緯以上のことは明らかにされていない。

パワハラ被害を訴えた教職員等は512人

県教委の調査では、パワーハラスメントについても512人が被害を受けたことがあると回答した。

県立学校185人、市町村立学校327人で、全体の3.46%。前年度の568人、3.79%からは減少した。

内容別では「威圧的な行為をされたり、ミスを責任転嫁されたりした」が270件で最多。「暴言や名誉毀損、侮辱」が85件、「厳しく叱責し続けられた」などが86件、「仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視」などが74件だった。

被害への対応では289件が上司や同僚などに相談した一方、175件は「何もしなかった」と回答している。

セクハラ136人とパワハラ512人は重複して回答している可能性があるため、単純に足して「648人が被害」とすることはできない。

指針を読んだ割合は98.8%、それでも残る被害申告

今回の調査で浮かぶもう一つの数字が「98.8%」だ。

県教委が定めたセクハラ防止指針を「読んだことがある」と回答した教職員等は1万4619人で98.8%。パワハラ防止指針についても1万4618人、98.8%だった。

指針そのものは広く認知されている。

その一方で、セクハラにあたる言動を受け不快だったと答えた人は136人、パワハラを受けたと答えた人は512人いた。セクハラでは65件が「何もしなかった」と回答し、身体への接触を訴える回答は前年の6件から16件へ増加した。

県教委は今後について、非違行為と認められる場合は事実確認を行って厳正に対処するとともに、指針のさらなる啓発、研修内容の充実、相談窓口の周知を進めるとしている。

9月定例会では「訓告処分等」も

週刊TAKAPIが9月11日の県教育委員会定例会の審議結果を確認したところ、「教職員の懲戒処分について」とする議案が3件あり、いずれも原案通り可決されていた。

さらに、これとは別に「訓告処分等について」が報告され、了承されている。

県教委が公開している9月11日現在の懲戒処分一覧に掲載されているのは今年度7件だが、訓告などは懲戒処分とは法的な位置付けが異なる。

週刊TAKAPIでは県教委に対し、今回のハラスメント調査で記名調査や具体的な事実確認へ進んだ件数、懲戒・訓告等につながった件数、9月11日付の教頭の事案を把握した経緯、訓告処分等の件数や概要などについて追加取材する。

このニュースのポイント

Q福島県内の学校でセクハラは何人が訴えた?
A県教委のアンケートで136人が、職場の上司や同僚からセクハラにあたる言動を受け不快だったことがあると回答した。個別に県教委が136件すべてをセクハラと認定したという意味ではない。
Q被害を受けた人はどう対応した?
A複数回答で「何もしなかった」が65件と最多だった。県教委自身も「泣き寝入り」の可能性を指摘している。
Q実際に懲戒処分もあった?
A9月11日、女性職員の臀部を複数回たたき、抱き寄せるなどした50代男性教頭が停職1カ月となった。同日には、生徒を拳で3回殴打した60代男性中学校教諭など計3人が処分されている。
Qパワハラは?
A512人が被害を受けたことがあると回答した。最も多かった申告内容は「威圧的な行為・ミスの責任転嫁」の270件だった。

(担当記者:週刊TAKAPI編集部)