2型糖尿病の治療薬「マンジャロ」を、本来の適応ではない美容やダイエット目的で使用した後に起きた副作用の疑いが、この3年余りで35件報告されていたことが分かった。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の資料などによると、報告には低血糖や膵炎、血液が酸性に傾くケトアシドーシスなどが含まれる。ただし、35件すべてについてマンジャロとの因果関係が確認されたわけではなく、この数字から副作用の発生率を判断することもできない。
厚生労働省は、美容・痩身・ダイエット目的での安易な使用が健康被害につながる恐れがあるとして、医療機関や利用者に適正使用を呼びかけている。
美容・ダイエット目的の使用後に35件
マンジャロは、一般名をチルゼパチドとする注射薬で、日本では「マンジャロ」として2型糖尿病の治療に使用されている。PMDAの医薬品情報でも、マンジャロは処方箋が必要な医療用医薬品として扱われている。
今回明らかになったのは、マンジャロを美容や痩身など適応外の目的で使用した後に報告された副作用疑い35件。
症状には低血糖、膵炎、ケトアシドーシスなどが含まれ、いずれも医薬品を使用する際に注意が必要な症状となる。
ただし、「副作用疑い報告」は薬が原因だったことを確定する制度ではない。別の要因が関係したケースが含まれる可能性があり、逆に軽い症状などがすべて報告されているとも限らない。
そのため、「35件発生した=35件すべてマンジャロが原因」とみることはできない。
自由診療で「痩せる薬」 SNSで個人売買も
問題となっているのが、糖尿病治療ではなく、自由診療で美容や減量を目的としてマンジャロを処方するケースだ。
厚労省は、マンジャロなどの糖尿病治療薬について、美容・痩身・ダイエットを目的に使用した場合の安全性と有効性は確認されていないとして、「痩せる薬」として安易に使用しないよう注意を呼びかけている。
さらに、SNSやフリマサイトなどを利用した医薬品の個人間売買について、厚労省は違法だと明記している。
正規ルートを外れた医薬品には、偽造品や品質が劣化したもの、成分や含有量が不明なものが含まれる可能性もあるとしている。
同じ成分には「肥満症」の承認薬も マンジャロとは区別必要
注意したいのは、「チルゼパチドに減量効果がない」という意味ではないことだ。
マンジャロと同じ有効成分チルゼパチドを使用した「ゼップバウンド」は、肥満症治療薬として別に承認されている。対象は一定のBMIや肥満に関連する健康障害などの条件を満たす患者で、医師による診断と管理を前提としている。
PMDAなども、糖尿病治療薬のマンジャロと、肥満症について臨床試験を経て承認されたゼップバウンドは、同じ有効成分であっても区別して適正使用するよう求めている。
つまり問題は、「チルゼパチドを使えば体重が減るか」という単純な話ではない。
糖尿病治療薬として承認されたマンジャロを、美容目的など本来の適応とは異なる形で安易に使うことの安全性が問題となっている。
厚労省、6月に医療機関へ通知
厚労省は2026年6月16日、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬について、適正使用を徹底するよう医療機関や製造販売業者などへ通知した。
美容・痩身目的などの適応外使用で副作用や健康被害が疑われるケースを把握した場合には、使用目的を明記して副作用報告を行うよう求めている。
また、適応外で使用した結果、重い副作用が起きた場合には、医薬品副作用被害救済制度の給付対象とならない可能性が非常に高いとしている。
「医師から処方された薬だから、どの目的で使っても同じ」というわけではない。
「35件」をどう見るべきか
今回の35件は、マンジャロそのものの危険性や、美容目的使用者全体に対する副作用発生率を示す数字ではない。
美容・痩身目的で実際に何人が使用したのかという分母が明確でないため、35件だけからリスクの大きさを算出することもできない。
一方で、低血糖や膵炎、ケトアシドーシスなど重症化する可能性のある症状が疑われている以上、「痩せる注射」として気軽に扱う薬ではないことも明確だ。
減量治療が必要な場合には、美容目的の自己判断やSNS経由の入手ではなく、肥満症を含めた医学的な診断のもとで治療法を検討する必要がある。
編集部まとめ
2型糖尿病治療薬マンジャロを美容やダイエット目的で使用した後、副作用が疑われる事例が3年余りで35件報告された。
重要なのは、35件すべてについて薬との因果関係が確定したわけではなく、使用者全体に対する発生率を示す数字でもない点だ。
一方、厚労省はマンジャロなどを美容・痩身目的で使った場合の安全性と有効性は確認されていないとして注意を呼びかけている。同じチルゼパチドでも、肥満症について承認されたゼップバウンドとは適応や使用条件が異なる。
SNSなどを通じた医薬品の個人売買も避け、減量を目的に薬物治療を検討する場合は、医師による診断と継続的な管理を受けることが重要となる。
週刊TAKAPI 編集部
特記事項
この記事は2026年9月23日までに確認された医薬品医療機器総合機構(PMDA)、厚生労働省の公表資料と公開報道を照合して構成しています。
「35件」は美容・痩身などの目的でマンジャロを使用した後に報告された副作用の疑い件数であり、35件すべてについて薬との因果関係が確定したものではありません。また、使用者総数が明確ではないため、副作用の発生率を示す数字でもありません。
マンジャロは2型糖尿病治療薬です。同じ有効成分チルゼパチドを含む肥満症治療薬としてゼップバウンドが承認されていますが、対象患者や使用条件が定められており、単純な美容目的の減量とは区別する必要があります。
個人の治療の可否、薬の中止や変更については自己判断せず、医師や薬剤師に相談する必要があります。

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