愛知県と名古屋市を中心に開催された「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」が10月4日、閉幕した。
大会組織委員会の会長を務める愛知県の大村秀章知事は大会を総括し、1万人を超える選手が参加した大規模な国際大会を開催できたことに一定の評価を示した。
その一方で、大会期間中には国歌の取り違えや選手輸送の不備など、運営上のトラブルが相次いだ。
大村知事は、迷惑をかけた選手に対して「申し訳なかった」と謝罪した。
「大会をやり切った」という評価と、選手に影響を与えた運営上の問題。
愛知・名古屋で開かれた巨大スポーツイベントでは、何が起きていたのか。
週刊TAKAPIが大会期間中に明らかになった主な問題を整理する。
「東京2020を上回る規模」大会を総括
大会は全43競技、71種別、469種目で実施され、1万人を超える選手が参加した。
大会組織委員会は、競技・種目数について東京2020オリンピックを上回る規模だったとしている。
大村知事は閉幕にあたり、
「2016年に愛知・名古屋が開催都市に決定してから10年、様々な課題や困難な状況もありましたが、全43競技、71種別、469種目という、東京2020オリンピックを上回る規模の、第20回アジア競技大会をやりきることができました」
と総括した。
一方、巨大大会を支える「運営」の部分では、複数の問題が表面化した。
韓国戦で流れたのは「北朝鮮国歌」
大会序盤の9月18日。
岐阜県で行われたホッケー男子の韓国戦で、本来流れるはずの韓国国歌ではなく、北朝鮮の国歌が流れる事態が発生した。
韓国選手団側は抗議。
大会組織委員会も謝罪する事態となった。
国を代表して出場する選手にとって、国歌や国旗は大会運営の中でも極めて重要な要素だ。
単純な音源の取り違えでは済まされない問題として波紋を広げた。
韓国バスケ代表、練習用のバスが来ない
問題は競技会場だけではなかった。
9月20日には、男子バスケットボール決勝を控えていた韓国代表について、練習会場へ移動するためのバスが手配されていなかったことが明らかになった。
国際大会では、選手村や宿泊施設、練習場、競技会場を結ぶ輸送は大会運営の根幹を担う。
その輸送体制で不備が起きた。
パキスタン代表を違うバスへ 試合開始にも影響
さらに9月28日。
男子バレーボールのパキスタン代表が宿泊先から競技会場へ向かう際、誤ったバスに案内されるトラブルが発生した。
選手の会場到着が遅れ、試合開始時間にも影響した。
組織委員会はその後、宿泊先への時刻表掲示などの改善策を講じたとしている。
しかし、選手輸送をめぐる問題が複数回発生したことは、大会運営を検証する上で重要なポイントとなる。
クルーズ船への乗船でも混乱
選手の宿泊をめぐっても大会序盤から混乱が伝えられた。
9月16日のクルーズ船への乗船をめぐり、一部選手団で混乱が発生。
組織委員会は9月22日、一部で報じられた「組織委が宿泊情報を送信しなかったことが原因」との見方を否定した。
組織委によると、一部選手団から提出された書類の不備について調整に時間を要したことが、乗船の遅延や混乱の主な理由だったという。
また、競技会場で提供された飲食の質をめぐる指摘についても、問題視された飲食物は「組織委員会が提供したものではない」と説明している。
ここでは、SNS上の批判と組織委側の説明を分けて見る必要がある。
閉幕前日にも国旗掲揚をめぐる問題
そして大会終盤。
10月3日に豊田スタジアムで行われたサッカー男子決勝の表彰式でも、国旗が適切に掲揚されない事案が発生した。
大会組織委員会は事案を認め、関係者に謝罪。
原因などについて調査するとしている。
国歌の取り違えから始まり、閉幕直前には国旗掲揚をめぐる問題。
大会の象徴ともいえる場面でも、運営上の課題が残った。
大村知事「アスリートの皆さんには申し訳なかった」
こうした一連の運営上の問題について、大村知事は大会最終日の10月4日、選手らに謝罪した。
競技運営については基本的に順調に進めることができたとの認識を示す一方、大規模大会ならではの課題があったとして、
「これほどの大規模な大会の開催・運営は我々にとって大きなチャレンジであり、予期しない様々な課題に向き合い、対応していく毎日」
だったと振り返った。
その上で、
「ご迷惑をかけたアスリートの皆さんには、率直に、この点については申し訳なかった」
と述べた。
組織委員会トップ自身が、選手に影響を与えた運営上の問題を認めた形だ。
「成功した大会」だけで終わらせていいのか
もちろん、巨大な国際大会を開催したこと自体の成果まで否定する必要はない。
43競技、71種別、469種目。
1万人を超える選手が参加し、多くの競技が予定通り実施された。
大会組織委員会は大会を肯定的に総括し、アジア・オリンピック評議会(OCA)側からも大会を評価する声が出ている。
その一方で、
国歌の取り違え。
選手輸送の不備。
誤ったバスへの案内。
宿泊をめぐる混乱。
そして国旗掲揚をめぐる問題。
これらもまた、同じ大会で起きた出来事だ。
大会の評価は「成功だった」「失敗だった」という二択だけで決められるものではない。
競技が予定通り行われたか。
選手の安全や競技環境が確保されたか。
トラブル発生後に適切な対応が取られたか。
そして、同じ問題を繰り返さない仕組みが作られたか。
それぞれを分けて検証する必要がある。
10月18日にはアジアパラ大会
さらに重要なのは、これで愛知・名古屋の国際大会が終わったわけではないことだ。
10月18日からは「第5回アジアパラ競技大会」が開幕する。
障害のある選手が参加する大会では、移動、宿泊、競技会場へのアクセスなどについて、選手一人ひとりに応じたよりきめ細かな対応も必要になる。
だからこそ、アジア大会で起きた問題の検証には時間的な猶予がほとんどない。
何が原因だったのか。
どこで情報伝達や確認が途切れたのか。
再発防止策は機能するのか。
大村知事が口にした「申し訳なかった」という言葉を、次の大会運営にどう反映させるのか。
大会の聖火は消えた。
しかし、愛知・名古屋の大会運営に対する検証は、むしろここから始まる。
このニュースのポイント
● アジア大会が10月4日に閉幕
愛知県・名古屋市を中心に開催され、43競技、71種別、469種目を実施。1万人を超える選手が参加した。
● 大村知事が選手に謝罪
大会全体を評価する一方、運営上の問題について「アスリートの皆さんには申し訳なかった」と謝罪した。
● 大会期間中に複数の問題
国歌の取り違え、選手輸送、バスの誤案内、宿泊をめぐる混乱、国旗掲揚などの問題が明らかになった。
● 「競技運営」と「大会運営」は分けて検証する必要
競技の多くが予定通り実施されたことと、個別の運営トラブルは別の論点として評価する必要がある。
● 次はアジアパラ大会
10月18日の開幕を前に、今回の問題をどこまで検証し、再発防止につなげられるかが問われる。

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