10月4日に閉幕した愛知・名古屋2026アジア競技大会を巡り、大会組織委員会会長を務める愛知県の大村秀章知事が6日の定例会見で、国歌の取り違えや会場設営の遅れなど運営上の問題について言及した。
男子ホッケーの韓国戦で北朝鮮の国歌を誤って流した問題について、大村知事は「正直あってはならない」と指摘。大会準備でも仮設設備の設営が予定通り進まなかったケースが「少なからず見られた」とし、10月18日に開幕するアジアパラ競技大会を前に、運営事業者へ改善を求める考えを示した。
韓国の国歌を流す場面で北朝鮮国歌 組織委が謝罪
問題が起きたのは9月18日、岐阜県のグリーンスタジアムで行われたホッケー男子の韓国―バングラデシュ戦だった。
試合前、韓国代表が国歌演奏のために整列した際、本来の韓国国歌ではなく北朝鮮国歌が場内に流れた。
韓国側は大会組織委員会に抗議書簡を送り、経緯の説明、公式謝罪、再発防止を要求。組織委は韓国選手団へ直接謝罪し、後に文書でも謝罪した。
組織委は9月22日の説明で、この問題を「あってはならない重大なミス」と位置付け、現場スタッフによる取り違えだったとしている。
大村知事「われわれは事業者を信頼してやるしかない」
大村知事は6日の会見で、国歌取り違えについて、
「正直あってはならない」
と述べた。
そのうえで、「われわれは事業者を信頼してやるしかない」とし、準備段階や仮設設備の設営についても、スケジュール通りに進まなかった事例があったと説明した。
アジアパラ大会を控えていることから、「まだ終わっていないので厳しく指摘をしていかなければ」と語った。
一方、大会全体を巡るトラブルについては、組織委員会会長の立場から詳細な評価を控える姿勢も示し、「現場の皆さんは全力でやってくれた」と述べている。
つまり、現場全体を一括して批判するのではなく、国歌取り違えや設営工程など、具体的な不備について改善を求める姿勢を示した形だ。
会場設営では「期限が守られなかった事例」
今回の会見で新たに注目されるのが、競技期間中に発生したミスだけではなく、準備段階から工程の遅れがあったことを大村知事自身が明らかにした点だ。
大村知事は、仮設設備の設営などがスケジュール通りに進まなかったケースが複数あったとの認識を示している。
大会運営では競技開始時刻だけでなく、仮設施設、音響、電源、観客導線、メディア設備など、多数の工程を期限までに組み上げる必要がある。
今回の発言からは、表面化した国歌や輸送のミスだけでなく、大会準備の工程管理そのものにも課題があったことがうかがえる。
GL events Japanは会場仮設整備などを受託 ただし個別ミスの責任は未確定
愛知県議会の記録では、大会組織委員会はGL events Japan株式会社と契約を締結し、同社が競技会場の仮設整備の設計や工程管理などを進めていたことが確認できる。
親会社のGL eventsも、愛知・名古屋大会について、両大会の会場の設計、仮設インフラ整備、ホスピタリティ・メディアエリア、入場管理、表彰式など幅広い業務を担う大型契約を受注したと公表している。
ただし、ここは明確に分ける必要がある。
国歌取り違えを直接起こした担当事業者がGL events Japanだったのか、また個別のミスについて同社がどこまで責任を負うのかは、現時点の公表資料だけでは確認できない。
大村知事が6日の会見で言及した「事業者」と特定企業を直ちに同一視することは避けるべきだ。
韓国国旗の掲揚でもトラブル 組織委が6日に原因公表
さらに大会終盤には、国旗を巡る別の運営トラブルも発生した。
豊田スタジアムで行われた男子サッカー決勝の表彰式で、優勝した韓国の国旗が適切に掲揚されなかった。
大会組織委員会は10月6日、原因を調査した結果、本来は国旗より下にあるべきロープの結び目が国旗より上にあり、旗竿上部の滑車に引っ掛かったことが原因だったと発表した。
組織委は、結び目の位置について関係者間の事前確認が不足していたとして、アジアパラ大会に向けて掲揚手順と確認を徹底するとしている。
国歌取り違えとは原因も担当も別の事案だが、どちらも国際大会における基本的な確認作業で問題が起きたという点では、再発防止の対象になる。
なお、組織委の調査では国旗掲揚トラブルを確認不足によるものとしており、意図的な行為だったことを示す事実は公表されていない。
輸送でもミス 運営課題は一つではなかった
大会期間中は、選手送迎を巡る輸送ミスなども発生した。
大村知事は6日の別の振り返りで、トラブルの背景について選手団の増加や競技日程の確定状況などを挙げ、アジアパラ大会では再発防止に取り組む考えを示している。
9月22日の組織委の説明でも、宿泊手続きを巡り、事前に各国・地域から提出されたリストと実際の宿泊者が一致しないケースがあったことなどが明らかにされていた。
国歌、輸送、宿泊、設営。
それぞれ原因は異なるものの、複数の運営業務で問題が表面化したことになる。
大会成果も強調 OCA推計で視聴者30億人以上
一方、大村知事は大会そのものについては成果を強調している。
6日の会見では、「安心安全な大会として全ての競技を完遂できた」と振り返り、チケットは約150万枚のうち推計約110万枚が販売されたと説明した。
また、アジア・オリンピック評議会(OCA)の推計として、世界でのテレビ視聴者数が30億人以上だったとし、
「世界に向けて発信されたのが最大のレガシー」
と評価した。
大会公式の総括でも、43競技、71種別、469種目を実施し、1万人を超える選手が参加した大会を完遂したとしている。
次は10月18日のアジアパラ 改善まで残された時間は短い
第5回アジアパラ競技大会は10月18日から24日まで開催される予定で、アジア大会閉幕からわずか2週間後に次の国際大会が始まる。
そのため今回の問題は、数カ月かけて総括すればよいという性質ではない。
国歌・国旗の確認手順、会場設営の工程管理、選手輸送、宿泊対応など、アジア大会で表面化した問題のうち、アジアパラ大会にも共通する部分については、短期間で修正する必要がある。
大村知事が「まだ終わっていない」と強調した背景には、この時間的な切迫性がある。
問われるのは「誰のミスか」だけではなく確認体制
国際大会では、多数の業務を外部事業者へ委託すること自体は珍しくない。
そのため、個々のミスについて直接の担当事業者を確認することは重要だが、それだけで検証が終わるわけではない。
国歌データを誰が準備し、誰が照合し、誰が本番前に最終確認する仕組みだったのか。
仮設設備の工程が遅れた際、組織委員会がどの段階で把握し、どう是正を求めたのか。
国旗掲揚では、なぜロープの結び目という基本的な確認事項が事前に共有されなかったのか。
アジアパラ大会までの再発防止では、個人の注意だけに依存せず、複数人による確認や最終承認の仕組みをどこまで徹底できるかが焦点となる。
編集部まとめ
愛知・名古屋2026アジア競技大会では、韓国代表の試合で北朝鮮国歌が誤って流れたほか、選手輸送や宿泊、会場設営などで複数の運営上の問題が発生した。
大村秀章知事は10月6日、国歌取り違えについて「正直あってはならない」と指摘。仮設設備の設営についても予定通り進まなかったケースがあったとし、アジアパラ大会を前に運営事業者へ改善を求める考えを示した。
同日には大会組織委員会が、男子サッカー決勝の表彰式で韓国国旗が適切に掲揚されなかった問題についても原因を公表。ロープの結び目の位置確認が不足していたとして、再発防止策を示している。
大会には国際的な発信や競技完遂という成果があった一方、運営面の課題も残った。
10月18日にはアジアパラ大会が開幕する。直近の焦点は、アジア大会で表面化した問題を具体的な確認手順へ落とし込み、同じ種類のミスを繰り返さない体制を構築できるかにある。
週刊TAKAPI 編集部/松本
特記事項
本記事は2026年10月6日時点の大会組織委員会、愛知県、愛知県議会などの公開情報と複数の報道を照合して構成しています。
会場設営・運営にGL events Japanが関与していることは公表されていますが、国歌取り違えなど個別トラブルの直接的な責任主体や契約上の責任割合については、公表情報だけでは確定できません。
本文では事実が確認できた運営上の問題と、今後検証すべき事項を区別しています。

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