東京都江戸川区の区立中学校で、部活動内のいじめを受けた女子生徒が1年以上にわたり不登校となったにもかかわらず、江戸川区教育委員会が、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に該当するかどうかを5年以上にわたって検討していなかったことが分かった。
女子生徒は2018年度当時、中学1年生。所属していたバドミントン部で、部員から「死ね」「うざい」といった暴言を受けたほか、無視されるなどのいじめを受け、その後1年以上にわたり学校を欠席した。
第三者委員会の調査報告書は、学校と区教委の双方について、いじめ防止対策推進法が求める水準の対応が十分ではなかったと指摘。女子生徒の両親からいじめの申告を受けた段階で、すでに「重大事態」が生じていたと認定している。
江戸川区は近く、報告書の概要版を公表する方針だ。
中学1年、部活動で「死ね」「うざい」 1年以上不登校に
第三者委員会の報告書によると、女子生徒は2018年度当時、江戸川区立中学校の1年生だった。
所属していたバドミントン部で、部員から「死ね」「うざい」といった暴言を受けたほか、無視されるなどのいじめを受けたとされる。
女子生徒はその後、不登校となり、欠席は1年以上に及んだ。
両親は学校側に、いじめが欠席の原因だと伝えていたとされる。
今回問われているのは、いじめの有無だけではない。
女子生徒が長期間登校できない状態となった後、学校と区教委が法に基づく「重大事態」として扱う必要があるかを、適切な時期に検討していたのかという点だ。
学校から区教委への報告は約5カ月後
第三者委員会は、学校側について、いじめの事実確認を組織的に進める対応が十分ではなかったと指摘している。
学校から江戸川区教育委員会への報告も、女子生徒が欠席し始めてから約5カ月後だったとされる。
さらに報告書では、学校の配布物を、いじめをした側の生徒から女子生徒へ届けさせる対応についても不適切だったと指摘されている。
学校側が女子生徒の長期欠席といじめとの関係を、どの段階でどこまで把握していたのか。
また、なぜ区教委への報告まで約5カ月を要したのかも、今後公表される報告書概要版の重要な確認点になる。
区教委、報告後も重大事態に該当するか検討せず
問題は、学校から区教委への報告が遅れたことだけではない。
第三者委員会によると、区教委は学校からいじめ事案の報告を受けた際、学校側の調査内容について詳細な報告を求めず、対応状況の十分な点検も行わなかったとされる。
さらに、いじめによる欠席が30日以上続いていることを把握した後も、重大事態に該当するか判断するために学校が把握していた情報を確認したり、追加調査を求めたりしなかったと指摘されている。
結果として、重大事態に該当するかどうかの検討が5年以上行われなかった。
「年間30日程度」はあくまで目安
いじめ防止対策推進法では、いじめにより児童生徒が「相当の期間」学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合を、重大事態の一つとしている。
文部科学省のガイドラインでは、不登校重大事態について年間30日程度の欠席が一つの目安とされる。
ただし、「30日に達するまで重大事態として扱わなくてよい」という意味ではない。
児童生徒が一定期間連続して欠席している場合や、いじめとの関連が疑われる場合には、30日という目安を待たず、学校や設置者が迅速に調査へ着手することが求められる。
また、被害を受けた児童生徒や保護者から重大な被害について申し立てがあった場合には、その内容を踏まえて適切に対応する必要がある。
第三者委「両親の申告時点で重大事態」
今回の第三者委員会は、女子生徒の両親からいじめの申告を受けた時期に、すでに重大事態が生じていたと認定した。
つまり問題は、後になって女子生徒の欠席日数が長期化したことだけではない。
保護者からいじめと不登校との関係が示された段階で、学校と区教委がどのような対応を取るべきだったのかが問われている。
第三者委員会の調査開始は2024年7月
第三者委員会は、女子生徒の保護者からの求めを受けて設置された。
調査が始まったのは2024年7月。
いじめが起きた2018年度から、およそ6年が経過した後だった。
女子生徒の保護者は、学校側に対応を求めてきたものの十分に取り合ってもらえなかったとの趣旨を説明し、同様の被害を繰り返さないためにも第三者委員会の指摘を重く受け止めてほしいとしている。
第三者調査開始まで5年以上 事実確認への影響も
いじめ重大事態の調査では、当事者や関係者への聞き取り、学校記録などの確認を通じ、何が起きたのかを明らかにする必要がある。
調査開始まで長期間が経過すれば、当時の記憶や資料の確認が難しくなる可能性がある。
今回、学校から区教委への報告まで約5カ月。
さらに、第三者委員会による本格的な調査開始まで5年以上を要した。
この時間の経過が、事実確認や女子生徒への支援にどのような影響を与えたのかも、正式な報告書概要版で確認すべき点となる。
江戸川区、近く報告書概要版を公表へ
江戸川区教育委員会は、第三者委員会による調査報告書の概要版を近く公表する方針だ。
正式な概要版が公表されれば、
- 学校がいじめを把握した時期
- 不登校開始後の具体的な対応
- 区教委への報告が約5カ月後となった経緯
- 区教委が重大事態に該当するか検討しなかった理由
- 保護者からの申し出に対する対応
- 女子生徒への支援内容
- 学校・区教委への再発防止提言
などがどこまで明らかにされるかが注目される。
編集部まとめ
東京都江戸川区の区立中学校で、2018年度当時中学1年だった女子生徒が、バドミントン部で「死ね」「うざい」といった暴言や無視などのいじめを受け、1年以上にわたり不登校となった。
第三者委員会の報告書によると、学校から区教委への報告は、女子生徒の欠席開始から約5カ月後だった。
区教委も、学校から報告を受けた後に調査内容や対応を十分に点検せず、いじめ防止対策推進法上の「重大事態」に該当するかどうかを5年以上検討しなかったとされる。
第三者委員会は、両親からいじめの申告を受けた時点で重大事態が生じていたと認定した。
江戸川区は近く、第三者委員会の報告書概要版を公表する方針だ。
なぜ学校から区教委への報告に約5カ月を要したのか。なぜ区教委が重大事態に該当するかどうかを5年以上検討しなかったのか。正式な報告書公表後、その経緯と再発防止策がどこまで明らかになるかが焦点となる。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は2026年10月10日時点で明らかになっている第三者委員会の調査報告書に関する情報、およびいじめ防止対策推進法、文部科学省の重大事態調査ガイドラインを基に構成しています。
対象となった生徒は未成年者であるため、学校名、生徒を特定できる情報などは記載していません。
「年間30日程度」は不登校重大事態を判断する際の目安であり、30日に達しなければ重大事態にならないという基準ではありません。
江戸川区による第三者委員会報告書の概要版は近く公表される予定で、正式公表後に内容が追加・修正される可能性があります。

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