【独自・愛知•豊橋】豊橋市まちなか図書館が来館300万人突破 年間運営費は約1億1,000万円、市が語った「これ以上増えれば困る」理由とは

豊橋市まちなか図書館の来館者300万人突破と年間運営費約1億1,000万円を伝える週刊TAKAPI独自取材

愛知県豊橋市の中心市街地に位置する「豊橋市まちなか図書館」の累計来館者数が300万人を突破した。

2021年11月の開館から約4年11か月。豊橋駅前の新たな文化・交流拠点として定着しつつある同館だが、年間どれほどの経費で運営され、誰が利用し、中心市街地にどのような影響を与えているのだろうか。

週刊TAKAPIは、まちなか図書館の担当者に取材を実施した。

取材で明らかになったのは、年間約1億1,000万円という運営費の規模だけではない。

年間50万~70万人という当初の来館者目標、豊橋市外から訪れる学生の存在、さらに利用者の声を受けた座席予約制度の見直しなど、数字だけでは見えない図書館運営の実態が浮かび上がった。

累計300万人は想定以上だったのか? 市の評価は「おおむね目標通り」

まちなか図書館は、2021年11月に開館した。

開館から約5年で累計300万人という数字は、一見すると大きな成果にも映る。

では、豊橋市が当初想定していた利用者数と比較すると、実際の来館者数はどう評価されるのか。

担当者によると、施設整備時の計画では、年間50万~70万人程度の来館者数を目標としていたという。

今回の300万人突破について担当者は、「目標通りぐらいですね」と説明した。

さらに、図書館の立地や施設規模を踏まえると、現在の利用状況は妥当な水準との認識を示した。

注目したいのは、市が必ずしも来館者数の増加だけを追い求めているわけではない点だ。

担当者は、来館者がさらに増えた場合、利用者がゆったり過ごせなくなる可能性にも言及した。

人が多すぎることで、館内が混雑し、利用者にとって居心地の悪い空間になってしまう懸念があるという。

つまり、まちなか図書館が重視しているのは、単純な来館者数の最大化ではなく、利用者が快適に過ごせる環境との両立だ。

300万人突破という節目からは、公共施設の成果を人数だけで測ることの難しさも見えてくる。

年間運営費は約1億1,000万円 何に使われているのか

今回の取材で、もう一つ注目したいのが運営費だ。

週刊TAKAPIが年間の運営経費について質問したところ、担当者は諸経費を含めて年間約1億1,000万円との概算を示した。

主な経費として挙げられたのは、次の項目だ。

  • 職員などの人件費
  • 図書の購入費
  • 清掃業務の委託費
  • 窓口業務の委託費
  • その他、図書館運営に必要な経費

ただし、今回の取材では、それぞれの項目にいくら支出されているかという詳細な内訳までは確認できていない。

また、約1億1,000万円という数字は担当者による概算であり、対象年度や施設維持管理費などの計上範囲については、今後の確認が必要だ。

来館者1人当たりの運営費は約183円という試算

仮に年間来館者数を60万人、年間運営費を1億1,000万円とすると、来館者延べ1人当たりの運営費は次のようになる。

年間60万人が利用した場合の概算

約183円/人

1億1,000万円 ÷ 60万人(延べ来館者数)

年間50万人なら約220円、70万人なら約157円となる。

これはあくまで取材で示された概算運営費と想定来館者数を用いた単純計算であり、実際の決算に基づく費用対効果を示すものではない。

図書館は、本を借りるだけでなく、学習や交流、情報収集の場としても利用されている。

そのため、運営費を評価するには、貸出冊数や利用者満足度、施設の社会的役割なども含めた検証が必要だろう。

利用者には学生が多い 豊橋市外からも来館

なぜ、まちなか図書館には継続的に多くの人が訪れるのか。

担当者が特徴として挙げたのが、学生の利用と豊橋駅前という立地だ。

特に高校生などは、通学の途中で豊橋駅を利用することが多く、学校から自宅へ帰るまでの時間に図書館へ立ち寄るケースがあるという。

館内で勉強したり、友人と交流したりするなど、使い方は本の閲覧や貸し出しに限らない。

担当者は、まちなか図書館が自宅でも学校でもない「サードプレイス」として利用されていることに触れた。

さらに、利用者は豊橋市民だけではない。

豊川市、田原市、蒲郡市、新城市など、東三河各地から訪れる人もいるという。

豊橋駅を交通の結節点とする地域の特性が、図書館の利用にも表れている形だ。

年間4,000~5,000人が貸出券を発行

担当者によると、まちなか図書館では年間およそ4,000~5,000人が貸出券を発行しているという。

貸出券の申請時には住所や生年月日などを記入するため、申請者の属性について一定の傾向を把握できる。

その結果、豊橋市内のほかの図書館と比較すると、学生や豊橋市外の住民が貸出券を作る割合が高い傾向にあるという。

ただし、注意したい点もある。

図書館では来館者全員に対して住所や年齢などを確認しているわけではなく、来館者全体の詳細な属性を把握しているわけではない。

今回示された傾向は、主に貸出券の申請情報などに基づくものであり、300万人全体の属性を示す統計ではない。

「席が空いているのに使えない」利用者の声から制度を改善

今回の取材では、利用者から寄せられた意見が実際の運営改善につながった事例も明らかになった。

それが、座席予約制度の見直しだ。

担当者によると、まちなか図書館には予約対象となる座席が約120席ある。

以前は、座席の予約時間が1枠4時間に設定されていた。

しかし、利用者からは、席が使われていないように見えるのに予約できないという趣旨の声が寄せられていた。

そこで図書館側が実際の利用状況を検証したところ、4時間を通して座席を利用する人は、それほど多くないことが分かったという。

この結果を受け、予約時間を1枠4時間から2時間に短縮した。

座席の回転率を高め、より多くの人が利用できるようにするための改善だ。

担当者は、利用状況の検証を踏まえて、利用者が座席を使いやすい形に変更したと説明した。

単に来館者を増やすのではなく、既存の利用者が快適に過ごせるよう運営方法を見直した事例といえる。

まちなか図書館は豊橋駅前の活性化に貢献したのか

まちなか図書館の存在は、豊橋駅前の人の流れにどのような影響を与えているのだろうか。

週刊TAKAPIが中心市街地のにぎわいへの影響を尋ねたところ、担当者は、にぎわいの創出に一定の役割を果たしているとの認識を示した。

また、中心市街地の人の流れについては、豊橋市の別部局が調査を行っているという。

担当者によれば、2021年11月の開館前と開館後を比較すると、まちなか図書館の方向へ人の流れが変化している部分が見られると聞いているという。

ただし、今回の取材では、歩行者通行量の具体的な増減人数や、図書館開館による経済効果を示す資料までは確認できていない。

そのため、駅前の人通りの変化をすべて図書館の効果と断定することはできない。

図書館の利用者は周辺店舗にも立ち寄っているのか

ここで今後検証したいのが、図書館利用者と周辺商業施設の関係だ。

まちなか図書館には、勉強や読書を目的とする学生をはじめ、幅広い利用者が訪れている。

そうした人々が図書館の利用前後に周辺店舗へ立ち寄れば、中心市街地の商業活動にも一定の波及効果が生まれる可能性がある。

一方、図書館の利用だけで帰宅する人もいるだろう。

来館者300万人という数字が、そのまま商店街の売り上げ増加や経済効果を意味するわけではない。

今後は、歩行者通行量の推移や周辺店舗の利用状況などを組み合わせて検証する必要がある。

400万人、500万人へ 今後の新たな取り組みは?

今後、累計来館者数が400万人、500万人と増えていく中で、どのような事業を展開していくのか。

週刊TAKAPIが新たな取り組みの計画について質問したところ、担当者は、今後考えていく必要があるとしながらも、現時点で具体的なアイデアを示すことは難しいと説明した。

一方、図書館の基本的な方向性は明確だ。

それは、本を読む場所にとどまらず、人と人、そして人と街をつなぐ施設を目指すというものだ。

担当者は、従来あまり図書館に足を運ばなかった人にも利用してもらいたいとの考えを示した。

勉強や読書だけではなく、交流の場として利用してもらうことも重視している。

利用者へのメッセージ「待ち合わせ場所でもいい」

最後に週刊TAKAPIは、普段から利用している市民と、まだ訪れたことがない人へのメッセージを求めた。

担当者は、既存の利用者には今後も気持ちよく利用してもらえるようにしたいと説明。

改善してほしい点があれば、スタッフなどに意見を伝えてほしいと呼びかけた。

また、まだ訪れたことがない人に対しては、読書や勉強だけでなく、駅前での待ち合わせなどをきっかけに気軽に足を運んでほしいとの思いを語った。

図書館に行く目的は、必ずしも本を借りることだけではない。

その考え方が、まちなか図書館の運営方針を象徴しているように感じられた。

週刊TAKAPIの視点 300万人突破の先に問われる公共施設の価値

今回の独自取材で印象的だったのは、担当者が来館者数のさらなる増加を無条件に歓迎しているわけではなかったことだ。

年間50万~70万人という当初の目標をおおむね達成しながら、混雑を避け、利用者がゆったり過ごせる環境を維持したいという考えが示された。

一方で、年間約1億1,000万円という運営費も明らかになった。

公共施設である以上、費用に見合った価値を市民に提供できているかという視点は欠かせない。

ただし、その価値は来館者数や貸出冊数だけで測れるものでもない。

学生が安心して過ごせる場所であること、東三河各地の人々が交流できること、そして中心市街地へ足を運ぶきっかけになることも、公共図書館が持つ重要な役割だ。

今後、週刊TAKAPIとして注目したいのは、次の3点である。

  1. 年間約1億1,000万円の運営費の詳細な内訳と推移
  2. 図書館開館前後における中心市街地の歩行者通行量の変化
  3. 来館者数だけでなく、利用者満足度や地域への波及効果をどのように評価するか

累計300万人突破は、一つの通過点にすぎない。

豊橋駅前の図書館が、今後どのように市民の暮らしや街のにぎわいを支えていくのか。

その成果を数字と利用者の声の両面から検証していくことが重要だろう。

Q豊橋市まちなか図書館はいつ開館した?
A2021年11月に開館した。豊橋市の中心市街地に位置し、読書や学習、交流などに利用されている。
Q年間の来館者数の目標は何人?
A施設整備時の計画では、年間50万~70万人程度を目標としていた。今回の取材で担当者は、来館状況についておおむね目標通りとの認識を示した。
Q年間運営費はいくら?
A担当者によると、諸経費を含めて年間約1億1,000万円という概算が示された。人件費、図書購入費、清掃や窓口業務の委託費などが含まれる。
Q豊橋市民以外でも利用できる?
A豊橋市外からも来館者が訪れている。担当者によると、豊川市、田原市、蒲郡市、新城市など、東三河各地の利用者がいるという。なお、図書の貸出券を作成する場合は、別途利用条件を確認する必要がある。
Q座席予約制度はどう変わった?
A以前は1枠4時間だった座席予約時間が、利用状況の検証を踏まえて2時間に短縮された。より多くの人が座席を利用できるようにするための改善だ。
Qまちなか図書館は駅前の活性化に役立っている?
A担当者は、中心市街地のにぎわい創出に一定の役割を果たしているとの認識を示した。ただし、具体的な経済効果や歩行者通行量の増減については、今回の取材では確認できていない。

【取材について】本記事は2026年10月23日、週刊TAKAPIが豊橋市まちなか図書館の担当者に実施した取材をもとに構成したものです。発言は趣旨を変えない範囲で整理しています。運営費などの数値は取材時の説明に基づく概算です。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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