愛知県豊橋市は11月1日、制定を検討している「子どもの権利条例」に向け、子ども本人や保護者などから意見を集めるアンケートを開始した。回答期限は11月30日で、小学1年生から大人まで参加できる。市は年齢や文字の読みやすさに応じて4つの回答フォームを公開しており、子どもの声を今後の条例づくりやまちづくりに生かす考えだ。
条例をめぐっては、今年7月の検討委員会で、低学年の子どもでも自分の考えを伝えられる調査方法や、保護者の意見と子ども本人の意見を区別する必要性が議論されていた。今回のアンケートは、そうした課題を抱えながら、子ども自身の意見を広く集める取り組みとして始まった。
小学1年生から回答可能 年齢に応じた4つのフォーム
豊橋市が公開したアンケートは、小学1~4年生向け、小学5年生~中学3年生向けの漢字を含む形式、同じ学年を対象とするひらがなのみの形式、高校生以上向けの計4つに分かれている。
小学1~4年生向けは、すべてひらがなを使用した簡単な質問で構成される。小学5年生~中学3年生向けの2種類は質問内容が同じとされ、漢字を読むことが苦手な子どもも選択できるようにした。
高校生以上向けには大人も回答でき、市は保護者としての立場からも意見を寄せるよう案内している。回答時間は約10分で、豊橋市公式ホームページから該当するフォームを選ぶ方式だ。
7月の検討委員会で「子ども本人の声」を重視する意見
今回のアンケートを考えるうえで注目されるのは、7月29日に開かれた第1回こどもの権利条例検討委員会での議論だ。
議事録によると、委員からは、権利について十分に学んでいない子どもには質問の意味が伝わりにくいことや、低学年の子どもが保護者と一緒に回答すると本人の意見を十分に聞き取れないのではないかという懸念が示された。
別の委員からも、低学年向けには質問を分かりやすい言葉に変え、子ども自身が答えられるようにする必要があるとの意見が出ている。市の担当者は当時、出前講座を実施した学校だけでなく、ホームページを通じて誰でも回答できる方法を検討していると説明していた。
今回公開されたフォームでは、低学年向けのひらがな表記や、幅広い年齢層が参加できる仕組みが設けられている。ただし、こうした形式によって子どもが周囲の大人の影響を受けずに回答できるかどうかは、実施状況や回答方法も踏まえて判断する必要がある。
権利を知らない子どもにも、意見を伝える機会は届くか
検討委員会では、子どもの権利を学ぶ機会の重要性についても意見が交わされた。
学校などで行われた出前講座について、子どもが自分の考えを自由に書けるようにする必要性が指摘され、教職員側が子どもの発言を安易に「わがまま」と受け止めることへの懸念も示された。
子どもの意見を尊重する制度をつくるには、アンケートを配布するだけでなく、子どもが安心して自分の考えを表現できる環境が欠かせない。
今回の募集で、学校に通う子どもだけでなく、さまざまな生活環境にある子どもがどの程度参加できるのかも、結果を評価するうえで重要になる。
ポルトガル語・タガログ語は準備中 参加機会に課題
豊橋市の公式ページには、日本語の回答フォームに加え、ポルトガル語とタガログ語の案内欄が設けられている。しかし、11月1日時点の表示はいずれも準備中となっており、各言語で回答できる専用フォームは確認できない。
外国につながりのある子どもや保護者が暮らす豊橋市では、言語の違いによって意見を届ける機会に差が生じないようにすることも重要だ。
回答期限は11月30日。多言語案内が期間中に整備されるのか、日本語での回答が難しい人にどのような支援を用意するのかは、引き続き確認が必要となる。
条例は制定前 意見表明や相談・救済制度の内容は未確定
豊橋市は2025年3月に策定した「豊橋市こども計画2025-2029」で、子どもの権利を保障する条例の検討を位置付けた。
今年7月の検討委員会資料では、子どもを保護される存在としてだけでなく、権利の主体として捉えることや、意見表明、相談・救済などを条例に位置付ける考え方が示されている。
一方、条例で保護する子どもの範囲をどう定義するかについては、18歳未満を基本とする考え方や、心身の発達段階に応じて対象を広げる考え方などが議論されている。相談・救済機関をどのように設けるかも、今後の検討事項だ。
今回のアンケート開始によって、条例の条文や施行日、具体的な救済制度が決まったわけではない。
編集部まとめ
豊橋市の子どもの権利条例に向けた取り組みは、検討委員会での議論を経て、子ども本人や大人から広く意見を集める段階に進んだ。
小学1年生から回答できるようにしたことは参加機会を広げる取り組みだが、子どもの本音をどこまで把握できるか、多言語対応が十分に整うかという課題も残る。
条例づくりで重要なのは、意見を募集したという実績だけではない。集まった声がどのように整理され、条例の内容や相談・救済の仕組みに反映されるのか。豊橋市には、その過程を子ども自身にも分かる形で示すことが求められる。
特記事項
本記事は2026年11月1日時点の豊橋市公式アンケート案内、7月29日のこどもの権利条例検討委員会議事録、同委員会の公開資料を基に作成した。
7月のアンケート調査案は修正中の資料であり、11月から実施されているアンケートの確定設問とは区別した。また、回答結果の公表時期、条例への反映方法、制定時期、救済制度の内容は確認できていない。
回答期間: 2026年11月1日(日)~11月30日(月)
担当部署: 豊橋市こども未来部子育て支援課
問い合わせ: 0532-51-2325
週刊TAKAPI編集部/成田
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