【明倫中マット死事件】元同級生3人に総額1億円超の支払い命令 事件から33年、遺族が3度目の提訴

1993年の明倫中マット死事件を巡り、山形地方裁判所が損害賠償未払いの元同級生3人に総額1億円超の支払いを命じた判決を伝える報道アイキャッチ

1993年に山形県新庄市立明倫中学校で発生した男子生徒死亡事件を巡り、山形地方裁判所は2026年7月15日、損害賠償金の未払いが続く元同級生3人に対し、遅延損害金を含めて総額1億円を超える支払いを命じた。

遺族が同じ3人を相手に訴訟を起こすのは、今回で3度目となる。

2005年には、元同級生7人に総額約5760万円の損害賠償を命じる判決が最高裁で確定した。しかし、今回の被告となった3人からは長年にわたり十分な支払いが行われず、遺族は賠償請求権の消滅時効を防ぐため、再び法廷に立った。

事件から33年。司法判断が確定した後も賠償が実現せず、遺族が権利を守るために裁判を繰り返さなければならない異例の状態が続いている。

体育用具室の体操マット内で男子生徒が死亡

事件が発生したのは1993年1月。

新庄市立明倫中学校の体育用具室で、当時中学1年生だった男子生徒が、丸めて立てられた体操マットの中に逆さの状態で入り、死亡しているのが見つかった。

捜査では、当時の同級生7人が傷害や監禁致死などの疑いで捜査対象となった。

少年審判では判断が分かれ、一部の元生徒は不処分となった一方、別の元生徒には事件への関与を認める保護処分が言い渡された。

元同級生側は、その後も事件への関与を否定し、現在まで無実を主張している。

2005年に最高裁で約5760万円の賠償命令が確定

男子生徒の遺族は、元同級生7人らを相手に損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

一審の山形地裁は遺族側の請求を退けたが、控訴審の仙台高裁は一審判決を変更し、元同級生7人の共同不法行為を認定した。

その後、2005年に最高裁で遺族側の勝訴が確定。元同級生7人に対し、総額約5760万円の損害賠償を支払うよう命じる判断が確定した。

ただし、判決が確定したことと、賠償金が実際に支払われることは別の問題だった。

今回の被告となった元同級生3人については、長年にわたり十分な支払いが行われず、遺族側は勤務先や財産の把握、強制執行などの対応を迫られてきた。

賠償請求権を失わないため、遺族が再び提訴

確定判決で認められた損害賠償請求権にも、消滅時効がある。

相手が支払いに応じない状態が続いても、遺族側が必要な法的手続きを取らなければ、賠償を請求する権利が時効によって失われる可能性がある。

このため遺族は2016年、賠償請求権の時効完成を防ぐ目的で、元同級生3人を改めて提訴した。

それでも支払いは進まなかった。

再び時効が迫ったことから、遺族は同じ3人を相手に3度目となる訴訟を起こした。

今回の裁判は、1993年の事件について刑事責任を一から判断し直すものではない。2005年に確定した民事上の損害賠償請求権を前提に、現在も残る未払い金と遅延損害金の支払いを求めたものだ。

遅延損害金が積み重なり、総額1億円超に

山形地裁は7月15日、遺族側の請求を認め、元同級生3人に対し、未払いの損害賠償金と遅延損害金を支払うよう命じた。

3人に命じられた支払額は、合計で1億円を超える。

2005年に確定した賠償額は、元同級生7人全体で総額約5760万円だった。しかし、長期間にわたって支払いが行われなかったことで遅延損害金が積み重なり、今回命じられた金額は大幅に膨らんだ。

1億円超という金額は、賠償未払いがいかに長期化していたかを数字の上でも示している。

元同級生側は現在も無実を主張

元同級生側は今回の裁判でも、事件への関与を否定し、遺族側の請求を棄却するよう求めていた。

元同級生側は、過去の事実認定に誤りがあるとして、現在も無実を主張している。

一方、民事上の損害賠償義務については、2005年に最高裁で確定している。

今回の判決は、元同級生3人の刑事責任や少年事件上の処分を新たに判断したものではなく、確定済みの民事上の債務を前提に支払いを命じたものだ。

元同級生側が事件への関与を否定している事実と、民事上の賠償義務が確定している事実は、明確に分けて伝える必要がある。

少年審判と民事裁判で判断が分かれた事件

明倫中マット死事件では、少年審判と民事裁判で判断が分かれた点も、長年にわたり注目されてきた。

少年審判では一部の元生徒が不処分となった一方、民事訴訟では元同級生7人の共同不法行為が認定された。

ただし、少年審判と民事訴訟では、手続きの目的や責任を認定する際の考え方が異なる。

少年審判で不処分となったことを、そのまま民事上の責任がないことと同一視することはできない。

反対に、民事上の損害賠償責任が認められたことを、刑事上の有罪判決と同じ意味で扱うことも正確ではない。

この事件を伝える際には、司法手続きの違いと、それぞれの判断の意味を慎重に区別する必要がある。

勝訴しても終わらなかった遺族の負担

遺族は2005年に最高裁で勝訴した。

それでも、相手が自主的に支払わなければ、預金や給与、不動産などに対する強制執行が必要になる。

債務者の勤務先や財産を把握できなければ、判決が確定していても回収は進まない。

さらに、時効が近づけば、遺族側が再び訴訟を起こし、請求権を維持しなければならない。

事件から33年。遺族は息子を失った悲しみだけでなく、賠償を受ける権利を守るための法的負担まで背負い続けてきた。

今回の判決で支払い義務が改めて示されても、実際に賠償金が支払われるかどうかは別の問題として残る。

今後の焦点は控訴と実際の支払い

今後は、元同級生側が今回の判決を不服として控訴するかどうかが焦点となる。

控訴された場合、審理は上級審に移る。

一方、判決が確定した場合でも、3人が任意に支払わなければ、遺族側が財産調査や強制執行を進める可能性がある。

今回の判決は、遺族側の請求を認めたという点では大きな節目となった。

しかし、賠償が実際に支払われなければ、遺族にとって事件が終わったとは言い難い。

事件から33年。確定判決後も支払いが実現せず、遺族が3度目の裁判に臨まなければならなかった事実は、被害回復の難しさを改めて突き付けている。

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