埼玉県蓮田市の市立中学校で女子生徒がいじめを受け、登校できなくなった重大事態をめぐり、市は8月24日、専門委員会による調査報告書を公表した。
報告書は、学校がいじめ重大事態として対応すべき時期を逃したことや、生徒への配慮を欠いた対応を重ねたことを問題視。学校と市教育委員会の対応について「非常に不適切」と厳しく指摘した。
特に、学校が女子生徒と関係する生徒を集めて設けた「謝罪の場」について、報告書は「生徒を傷つけるための手段」と批判している。
2020年11月ごろからいじめ 登校できない状態に
報告書によると、女子生徒は中学校入学後の2020年11月ごろから、クラスや部活動で悪口を言われたり、黒板に落書きをされたりする行為を受けた。
専門委員会は、これらをいじめと認定した。
女子生徒は同年12月中旬ごろから登校できなくなり、翌2021年1月には医療機関で、いじめを原因とする起立性調節障害と診断された。
頭痛や吐き気、食欲不振などが続き、その後、不安障害の診断も受けた。
5月下旬からはフリースクールに通い、2023年3月に中学校を卒業した。
2021年1月には「重大事態として対応すべきだった」
専門委員会は、女子生徒が登校できなくなり、医療機関を受診していた2021年1月の段階で、学校がいじめ重大事態として適切な対応を取るべきだったと指摘した。
しかし、学校側の対応は十分ではなく、重大事態への対応開始にも遅れが生じたとされる。
市教委についても、学校からの報告や保護者からの苦情を受けていたにもかかわらず、関係する教員への聞き取りが遅れたと指摘された。
重大事態の認定時期をめぐっても、当初の説明と実際の取り扱い開始日にずれがあったとして、報告書は「対応は非常に不適切」と評価している。
「謝罪の場」を厳しく批判
報告書で特に厳しい評価が示されたのが、学校が2021年6月に設けた「謝罪の場」だった。
学校は女子生徒と関係する生徒を集め、互いに謝罪する場を設けた。
これについて専門委員会は、生徒が置かれていた状況への配慮を欠いていたと指摘。「生徒を傷つけるための手段」と批判し、「非常に不適切」とした。
いじめを受けた生徒への支援よりも、形式的な関係修復を優先したと受け取られかねない対応について、報告書は学校側の判断を厳しく検証している。
調査体制も「非常に貧弱」
問題は学校現場の対応だけではなかった。
専門委員会は、市や市教委が用意した調査体制についても改善を求めている。
報告書によると、職員がパソコンを持たずに聴取に出席し、委員自身がパソコンで記録を取る場面もあった。
こうした状況について、専門委員会は他市で行われた調査と比較して「非常に貧弱な体制」と評価した。
重大事態を検証するための人的・事務的な支援体制そのものに問題があったことが示された形だ。
保護者「関係職員、市教委の責任を追及したい」
女子生徒と保護者は、学校や市教委との間で約5年9カ月にわたって協議を続けてきた。
報告書の公表を受け、保護者は「わが子の人生を壊した当時の関係職員、市教委の責任を追及し処分を求めたい」としている。
一方、市はホームページで再発防止策を公表した。
いじめ防止に向けた校内組織のあり方や指導方法などを示しており、市幹部は26日の定例会見で一連の経緯や今後の対応について説明する予定だ。
報告書が突きつけたのは「初動」と「被害生徒への配慮」
今回の報告書では、いじめ行為そのものだけでなく、問題を把握した後の学校と市教委の対応が繰り返し検証された。
登校困難や医療機関の受診といった深刻な状況が生じた段階で重大事態として扱えなかったこと、生徒の心理状態への十分な配慮を欠いたまま「謝罪の場」を設けたこと、調査を支える行政側の体制が不十分だったことが、それぞれ具体的な問題として示されている。
再発防止策を公表するだけでなく、報告書で指摘された問題が実際の学校運営や市教委の対応にどう反映されるかが問われる。
編集部まとめ
蓮田市の市立中学校で発生したいじめ重大事態について、専門委員会は学校と市教委の対応を「非常に不適切」と厳しく評価した。
特に重いのは、被害を受けた生徒への配慮を欠いた「謝罪の場」や、重大事態としての対応の遅れまで明確に問題視された点だ。報告書を受け、市が再発防止策を現場でどこまで実行できるかが今後の焦点となる。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項
この記事は8月25日までに公表された専門委員会の調査報告書や蓮田市の発表内容などを基に構成しています。
被害を受けた生徒のプライバシーに配慮し、氏名など個人を特定する情報は掲載していません。報告書で認定・指摘された内容と、それ以外の未確認情報を区別して記載しています。
蓮田市立中学校のいじめ重大事態で分かっていること
女子生徒は2020年11月ごろからクラスや部活動でいじめを受け、同年12月中旬ごろから登校が困難になった。
専門委員会は、2021年1月には重大事態として対応すべきだったと指摘。学校が同年6月に設けた「謝罪の場」や、市教委の対応の遅れについても厳しく批判した。
報告書では、市や市教委の調査支援体制についても「非常に貧弱」と評価され、市は再発防止策を公表している。
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