豊橋市議会議員は、任期中に何をしてきたのか。
一般質問で何を取り上げたのか。何年にもわたって追い続けている政策はあるのか。大型事業ではどんな政治判断を示したのか。そして、議員活動に交付される政務活動費を何に使ってきたのか。
公開資料を横断して市議一人ひとりの活動を読み解く、週刊TAKAPI「独自分析 豊橋市議を読む」。
第31回は、自由民主党豊橋市議団の本多洋之(ほんだ・ひろゆき)市議を取り上げる。
本多氏を追っていくと、かなりはっきりした特徴が見えてくる。
教育、子ども、農業を何度も一般質問で取り上げる一方、2024年末以降は豊橋市政最大級の争点となった新アリーナ問題で、事業継続を支持する側として明確な政治行動を取った。
そして2026年には、自民党豊橋市議団の政調会長に就任。
長坂尚登市長との政治的な距離も、これまで以上にはっきり見えるようになった。
では、本多洋之市議は2期目までに何をしてきたのか。
「質問したこと」と「実現したこと」を混同せず、議会記録、議員提出議案、役職、政務活動費まで横断して検証する。
本多洋之市議とは?現在2期目、自民党市議団の政調会長
豊橋市議会の公式プロフィールによると、本多洋之氏は昭和49年生まれ、野依町在住。現在2期目で、自由民主党豊橋市議団に所属している。
2026年7月時点では、自由民主党豊橋市議団18人の政調会長を務める。さらに福祉教育委員会、議会運営委員会、「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」等に関する調査特別委員会にも所属している。公式プロフィールに掲げる抱負は「いつまでも持続する豊橋を」だ。 (豊橋市公式サイト)
2期目の市議でありながら、最大会派の政策調整を担う政調会長となり、議会運営委員会にも入っている。
2025年度には議会選出監査委員も務めていた。 (豊橋市公式サイト)
つまり現在の本多氏は、単に一般質問を行う一議員ではなく、自民党市議団の政策形成と議会内調整にも責任を持つ立場へと進んでいる。
一般質問を全部並べると見える「本多洋之」の政策軸
本多氏の一般質問履歴を追うと、テーマが毎回ばらばらというわけではない。
特に繰り返し登場するのが、
教育・子ども支援と農業だ。
2022年には英語教育、特別支援教育、学校給食の食材費高騰、青少年健全育成、小学校高学年の教科担任制などを質問。
2023年には学校活動や農地の集積・集約化。
2024年には発達支援、中学校部活動、放課後児童対策を取り上げ、年末には新アリーナと新市長の公約へテーマを広げた。
2025年は農業振興、小中学校再編、新教育長の教育方針、今後の農業振興施策。
そして2026年6月には、エコテック株式会社に対する行政処分と市の対応、さらに農地の集積・集約化を質問している。 (豊橋市議会)
この履歴を見る限り、本多氏について「新アリーナだけを追ってきた議員」と評価するのは正確ではない。
むしろ、平常時に継続している政策テーマは教育と農業であり、新アリーナは市長交代後に政治的比重が急激に高まった争点、と見るほうが実態に近い。
教育・子ども政策は単発ではない
本多氏の議会活動で特に継続性が見えるのが教育分野だ。
英語教育。
特別支援教育。
教科担任制。
学校活動。
中学校部活動。
教師を取り巻く環境。
発達支援。
放課後児童対策。
小中学校再編。
新教育長の教育方針。
対象はかなり広い。
現在、本多氏が福祉教育委員会に所属していることも合わせると、教育・子ども分野は議員活動の一つの軸になっていると評価できる。 (豊橋市公式サイト)
ただし重要なのは、質問した数が多いことと、政策を実現したことは同じではないという点だ。
このシリーズで見るべきなのは、その質問によって行政の方針が変わったのか、予算化されたのか、新たな制度や改善につながったのかという「その後」である。
小中学校再編では「子どもの教育環境」と「地域」の両方を問う
2025年3月、本多氏は「小中学校の再編に関する考え方」を一般質問で取り上げた。
市側は、児童生徒数の減少が進む中で学校再編は先延ばしできない課題だとしたうえで、子どもにとって望ましい教育環境を最優先にすると説明。
一方で学校は地域コミュニティーの核でもあるとして、地域と学校のつながり、まちづくり、公共施設全体の管理との整合を図る必要性も示した。 (豊橋市公式サイト)
学校統廃合は、単に「人数が減ったからまとめる」という問題ではない。
通学距離、防災拠点、地域活動、学校区、子どもの人間関係など多くの問題が絡む。
本多氏がこの問題を議会で取り上げたことは確認できる。
今後の評価では、再編方針が具体化した際、市民や保護者の声をどのように議会へ反映させるのかまで追う必要があるだろう。
農業は4年間で何度も登場する「継続テーマ」
もう一つ、本多氏を読むうえで外せないのが農業だ。
2023年6月には農地の集積・集約。
2025年3月には農業振興の諸課題。
同年6月にはこれからの農業振興施策。
そして2026年6月には再び農地の集積・集約化を取り上げた。 (豊橋市議会)
同じ政策分野を複数年度にわたって質問している点は、本多氏の特徴の一つといえる。
豊橋は全国有数の農業地域でもある。
農家の高齢化、後継者不足、農地の分散、担い手への農地集積、資材価格など、農業を取り巻く環境は変化している。
単発の問題提起ではなく、数年間にわたり追っていることは確認できる。
一方で、ここでも「質問の継続」と「成果」は分ける必要がある。
本多氏の問題提起によって、農地集約や担い手支援が具体的にどこまで進んだのか。
ここは今後、農業政策の数値や事業実績と照合して検証すべき部分になる。
2024年12月、新アリーナと長坂市政を真正面から質問
本多氏の政治姿勢が大きく表面化したのが、2024年12月だった。
長坂尚登氏が豊橋市長に就任した直後の12月定例会で、本多氏は、
「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」
そして、
「市長の所信(公約)」
を一般質問のテーマにした。 (東愛知新聞社)
長坂市長は2024年の市長選で新アリーナ計画の中止を掲げて当選した。
一方、それまで市議会では関連予算や契約について議決が積み重ねられていた。
市長選によって示された民意と、これまで市議会が行ってきた議決。
この二つが激しくぶつかったのが、長坂市政発足直後の豊橋だった。
本多氏は、この争点で「静観する側」には回らなかった。
本多氏は「事業継続を問う住民投票条例」の提出者だった
さらに重要なのが2024年12月26日だ。
市議会には、新アリーナ事業の継続をめぐる住民投票条例案が提出された。
そのうち議案会第15号「プロスポーツ等による地域活性化ならびに市民スポーツ・文化振興のための『多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業』の継続に関する住民投票条例」の提出者には、小原昌子、市原享吾、山本賢太郎、伊藤哲朗の各市議とともに本多洋之氏の名前も記載されている。 (豊橋市公式サイト)
これは、本多氏の新アリーナに対する立場を見るうえで重要だ。
単に一般質問で意見を聞いただけではない。
議員提出条例の提出者として政治行動を取った。
この条例案はその後、最終的には撤回されることになるが、本多氏がこの時点で、事業継続を前提とした住民投票を行う側に立っていたことは公的資料から確認できる。
2025年の住民投票では「継続賛成」が多数
その後、新たな住民投票条例が2025年5月15日の市議会で可決され、7月20日に住民投票が実施された。 (豊橋市公式サイト)
結果は、
投票結果
票数
事業継続に賛成
10万6,157票
事業継続に反対
8万1,654票
投票率
65.67%
賛成多数となり、市は結果を尊重して事業継続へ進むことになった。 (豊橋市公式サイト)
本多氏が2024年末から求めていた「市民に判断を問う」という方向は、形を変えながら最終的に実施されたことになる。
ただし、ここで忘れてはいけないのが反対票だ。
8万票を超える市民が事業継続に反対した。
住民投票で決着がついたからといって、反対意見が消えたわけではない。
事業継続を支持してきた本多氏にとっても、今後は「勝った側の論理」だけではなく、反対した市民に事業費や整備内容をどう説明していくかが問われる。
住民投票後、本多氏は新アリーナ特別委員に
2026年7月現在、本多氏は「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」等に関する調査特別委員会の委員となっている。 (豊橋市公式サイト)
2026年6月の同委員会では、住民投票で事業継続が決まったことを踏まえ、新アリーナを活用したその先のまちづくりについても調査していく必要があるとの趣旨の考えを示している。 (トニチ)
ここから本多氏の責任は一段重くなる。
事業継続を支持してきた議員だからこそ、今後は、
事業費は適正なのか。
追加負担は妥当なのか。
交通や周辺環境への影響はどうなるのか。
施設は本当に地域活性化につながるのか。
こうした問題について、行政や事業者をチェックする責任も負う。
「賛成したから終わり」ではなく、賛成した政策の結果まで追う。
そこが今後の本多氏の評価を左右するポイントになる。
2026年、長坂市政との対立はさらに鮮明に
2026年6月、本多氏と長坂市政との距離はさらに鮮明になった。
新アリーナ事業の一時休止などをめぐり、市議会では約40億円規模の追加負担を含む補正予算が審議された。
そして6月19日、市議会は長坂尚登市長に対する辞職勧告決議を賛成多数で可決した。公表されている議員提出議案にも同決議が記録されている。 (豊橋市公式サイト)
この決議案をめぐる審議では、本多氏が提出側として説明に立ち、市長の判断や事業休止に伴う追加費用について責任を問った。 (テレビ愛知ニュース)
ここまで来ると、本多氏と長坂市政の関係を単なる「政策上の意見の違い」とだけ表現するのは難しい。
少なくとも新アリーナを中心とする市政運営について、本多氏は長坂市長に対して明確な批判・追及側に立っている。
ただし「約40億円=すべて市長一人の責任」と単純化してよいのか
ここは慎重に整理する必要がある。
辞職勧告決議を提出した側は、事業休止による追加負担について長坂市長の判断に大きな責任があると主張した。
一方、追加費用には事業休止期間の補償だけでなく、再発注や物価上昇など複数の要素が含まれていると報じられている。市議会の質疑でも「追加費用全体を市長一人の責任と評価できるのか」が争点になった。 (トニチ)
したがって、
「約40億円増えた」という金額の問題
と、
「その全額、あるいはどこまでを市長の政治責任と評価するのか」
は分けて考える必要がある。
本多氏は後者について厳しい責任を求める立場を示した。
これは本多氏の政治判断として記録すべき事実だが、その評価については市民の間でも意見が分かれる部分だろう。
なお、辞職勧告決議に法的拘束力はなく、長坂市長は辞職しない考えを示している。 (テレビ愛知ニュース)
「自民党政調会長」になった意味は小さくない
2026年7月現在、本多氏は最大会派・自由民主党豊橋市議団の政調会長だ。 (豊橋市公式サイト)
政調会長という立場になると、自分自身の質問だけを見ればよいわけではない。
会派として何を政策提案するのか。
予算や重要議案にどう対応するのか。
長坂市政とどこで協力し、どこで対立するのか。
市民にその理由をどう説明するのか。
本多氏は、2期目ながらそうした責任を負う位置まで来ている。
特に長坂市政との対立が続く中では、「反対」「追及」だけではなく、では自民党市議団としてどんな代案を出すのかも評価対象になる。
本多洋之市議の政務活動費4年度を検証
続いて政務活動費を見る。
豊橋市では、市議1人につき月額9万円を基準として政務活動費が交付され、年度終了後に精算し、残額があれば返還する仕組みとなっている。
本多氏について、令和4年度から令和7年度までの収支報告書を整理した。
本多洋之市議・政務活動費
年度
交付額
使用額(精算額)
返還額
令和4年度
108万円
110万8,985円
0円※1
令和5年度
99万円
91万7,527円
7万2,473円
令和6年度
108万円
106万2,867円
1万7,133円
令和7年度
108万円
117万9,434円
0円※2
合計
423万円
426万8,813円
8万9,606円
令和4年度の収支報告書では、支出額が交付額を2万8,985円上回っている。令和5年度は7万2,473円、令和6年度は1万7,133円を返還している。令和7年度は支出117万9,434円で、交付額を9万9,434円上回った。 (豊橋市公式サイト)
※1・※2 支出が交付額を上回った年度について、追加で政務活動費が交付されたという意味ではない。収支報告書上の差額がマイナスとなっており、交付額を超えた部分は政務活動費以外で負担したものとして整理した。
また令和5年度は改選後の5月から翌年3月までの交付となるため、年間交付額は99万円となっている。
4年度合計では交付額423万円に対し、支出総額は426万8,813円。
支出額だけを見ると交付額を上回っているが、これは令和4年度と令和7年度に自己負担分が生じているためだ。
政務活動費は「多く使った議員ほど働いた」「余らせた議員ほど優秀」と判断できるものではない。
見るべきなのは、何を調査し、その結果が質問、政策提案、市民への説明へどうつながったのかである。
政務活動費と「実績」はつながっているのか
ここが本多氏を検証するうえで次のポイントになる。
本多氏は教育、農業、新アリーナなどを繰り返し議会で扱ってきた。
政務活動費を使って行った調査や研修についても、その内容がこれらの政策課題にどう結びついたのかまで見ていけば、「お金を使った」という数字から一歩進んだ評価ができる。
令和6年度には全国都市問題会議への参加費・旅費なども政務活動費から支出していることが公開資料で確認できる。 (豊橋市公式サイト)
今後は研修先や視察先ごとに、
何を学んだのか。
その後、議会で何を質問したのか。
豊橋市の政策へ何を持ち帰ったのか。
まで対応させることで、本多氏の「調査する議員」としての実績もより具体的に評価できる。
本多洋之市議は結局、何をしてきた?
公開資料を横断すると、本多氏の2期までの活動には大きく三つの特徴が見える。
一つ目は、教育・子ども分野を継続して追ってきたこと。
特別支援教育、発達支援、部活動、放課後児童、学校再編、新教育長の方針まで、対象は広い。
二つ目は、農業を複数年度にわたり追っていること。
農地集積・集約化や農業振興を何度も一般質問に取り上げており、単発テーマではない。
そして三つ目が、新アリーナと長坂市政をめぐって明確な政治判断を示したことだ。
2024年12月には新アリーナと市長公約を質問。
事業継続をテーマとする住民投票条例案の提出者となり、住民投票後は関連調査特別委員会に所属。
2026年には、長坂市長への辞職勧告決議でも追及側に立った。
政策テーマを質問する議員から、最大会派の政調会長として市政全体の方向に関与する議員へ。
本多氏の立場は、この数年で明らかに変わっている。
週刊TAKAPIの分析 本多氏の「強み」と、まだ見えにくい部分
本多氏の強みとしてまず挙げられるのは、同じ政策課題を継続して質問していることだろう。
教育や農業では、数年単位でテーマが続いている。
また新アリーナについては、一般質問だけでなく条例案提出、特別委員会、辞職勧告決議と、実際の政治行動まで確認できる。
この点では「何を考えているのか分かりにくい議員」ではない。
一方で、まだ見えにくいのが、教育・農業分野での具体的な政策成果との因果関係だ。
質問した。
行政が答えた。
そこで終わるのではなく、その後制度がどう変わったのか、予算が付いたのか、市民生活が改善したのかまで確認する必要がある。
そして今後、より重く問われるのは新アリーナだ。
本多氏は事業継続を支持してきた。
住民投票でも継続賛成が多数となった。
だからこそ今後、事業費がさらに増えた場合や、交通、運営、採算、周辺整備で問題が生じた場合にも、推進してきた側として行政を厳しくチェックできるのかが重要になる。
長坂市政との対立だけで終わるのか、代案まで示すのか
2026年、本多氏は自民党市議団の政調会長となった。
市長への辞職勧告まで踏み込んだ以上、今後は長坂市政を批判するだけでなく、
豊橋の財政をどうするのか。
子育て・教育に何を優先するのか。
農業をどう維持するのか。
新アリーナをどう地域全体の利益につなげるのか。
人口減少の中で持続可能な豊橋をどうつくるのか。
こうした問いに対して、自民党市議団の政策責任者として具体策を示すことが求められる。
本多氏が掲げる「いつまでも持続する豊橋を」という言葉を、どこまで具体的な政策として形にできるか。
2期目後半から先の評価は、そこにかかっている。
「質問した議員」から「結果に責任を持つ議員」へ
本多洋之市議は、現在2期目。
教育や農業を地道に追ってきた一方、新アリーナ問題では市政の中心的な政治争点に深く関わるようになった。
そして今は最大会派の政調会長だ。
役職が上がれば、評価基準も変わる。
「質問した」だけでは足りない。
「条例案を出した」だけでも終わらない。
自分たちが支持した政策は、その後どうなったのか。
市民負担はどうなったのか。
反対した市民の声にも向き合ったのか。
そして市政を批判するなら、どんな代案を示したのか。
本多洋之市議の本当の「実績」が問われるのは、むしろこれからなのかもしれない。
週刊TAKAPIでは今後も、一般質問、委員会活動、議決行動、政務活動費、政策の「その後」を追い、本多洋之市議の活動を継続して検証する。
※本記事は2026年8月時点で豊橋市・豊橋市議会が公開している議員名簿、議会役員名簿、一般質問記録、議員提出議案、住民投票関連資料、政務活動費収支報告書などを中心に構成しています。「実績」「政治姿勢」などの評価部分は、確認できた公開資料を横断した週刊TAKAPIの分析です。一般質問を行ったことと、その政策を本人が実現したことは区別しています。また、政務活動費は支出額の大小のみをもって議員活動の優劣や適否を判断するものではありません。新たな資料・事実関係が確認された場合は追記・訂正する場合があります。
担当記者:週刊TAKAPI編集部
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