静岡県内で、レンタル・書籍販売大手「TSUTAYA」の閉店が相次いでいる。
2025年12月末から2026年9月末までの約9カ月間に、少なくとも県内5店舗が営業を終了。9月30日には、袋井市で29年間営業してきた「TSUTAYA袋井国本店」も閉店する。
各店舗は具体的な閉店理由を明らかにしていない。しかし、全国的な店舗数の減少や動画配信サービスの普及、郊外型店舗を取り巻く経営環境を踏まえると、単なる個別店舗の事情だけでは説明しきれない構造変化が浮かび上がる。
静岡県内のTSUTAYA、約9カ月で5店舗が閉店
今回閉店する「TSUTAYA袋井国本店」は、2026年9月30日をもって営業を終了する。
店舗の公式Xでは、29年間にわたる利用への感謝を表明。袋井市内で長く親しまれてきた店舗だけに、地域住民にとっては書店やレンタル店が一つなくなる以上の影響がありそうだ。
その3日前となる9月27日には、清水町の「TSUTAYA三島店」も17年間の営業を終える予定となっている。
確認できる県内5店舗の閉店時期は次の通り。
- TSUTAYA静岡西脇店(静岡市駿河区)
2025年12月28日閉店 - TSUTAYA浜松中央店(浜松市中央区)
2025年12月31日閉店 - TSUTAYA曳馬店(浜松市中央区)
2026年2月1日閉店 - TSUTAYA三島店(清水町)
2026年9月27日閉店予定 - TSUTAYA袋井国本店(袋井市)
2026年9月30日閉店予定
袋井国本店と三島店について、店舗側は具体的な閉店理由を公表していない。このため、「動画配信サービスの普及が直接の原因だった」と断定することはできない。
一方で、短期間に県内の複数地域で閉店が続いている事実は、TSUTAYAを含むレンタル・書店業界全体の変化と無関係とは考えにくい。
TSUTAYAの閉店はなぜ相次ぐ?考えられる5つの背景
1.Netflixなど動画配信サービスがレンタル需要を代替
最大の構造変化は、映像作品を見る方法が「店舗で借りる」形から「インターネットで見る」形へ移ったことだ。
NetflixやAmazon Prime Video、U-NEXT、Disney+などの動画配信サービスでは、利用者が店舗へ行かなくても、自宅のテレビやスマートフォンから作品を選べる。
DVDレンタルの場合は、店舗への往復、貸し出し中、返却期限といった制約がある。品ぞろえや旧作との出会いには独自の魅力があるものの、利便性では動画配信が優位に立つ。
レンタルを中心に発展してきた従来型TSUTAYAにとって、主力需要そのものが縮小している可能性は否定できない。
2.郊外型大型店舗は家賃・人件費・光熱費の負担が重い
静岡県内のTSUTAYAには、広い売り場と駐車場を備えた郊外型店舗が少なくない。
大型店舗は、多数の商品を並べられる一方、建物の賃料や維持費、照明・空調などの光熱費、スタッフの人件費が必要になる。近年は最低賃金や電気料金、物流費なども上昇しており、売り上げが横ばいでも利益を確保しにくくなる。
とりわけDVDやCDのレンタルは在庫を大量に保有する必要がある。利用回数が落ちれば、広い売り場と商品在庫がそのまま経営上の負担になり得る。
ただし、袋井国本店を含む各店舗の収支は公表されていない。固定費の上昇が直接の閉店理由だったかどうかは、現段階では確認できていない。
3.書籍販売だけで広い店舗を維持する難しさ
TSUTAYAはレンタルだけでなく、書籍、文具、雑貨、ゲーム、トレーディングカードなどを扱う複合型店舗として営業してきた。
しかし、レンタル需要が減少した分を、書籍販売だけで補うのは簡単ではない。
書店業界も電子書籍やインターネット通販との競争に直面している。書籍は定価販売が原則で、店舗側が自由に値下げして集客することも難しい。
本、DVD、CDという従来の主力商品がそろってデジタル化の影響を受けたことが、店舗運営を難しくしていると考えられる。
4.「TSUTAYA」の看板でも経営判断は店舗ごとに異なる
TSUTAYAは、すべての店舗をカルチュア・コンビニエンス・クラブが直接運営しているわけではない。地域の企業がフランチャイズ加盟店として営業するケースもある。
そのため、閉店の判断には地域の利用者数、賃貸借契約、建物の老朽化、人員確保、運営会社の事業再編など、店舗ごとに異なる事情が関係する。
同じ県内で閉店が続いているからといって、5店舗すべてが同一の理由で営業を終えるとは限らない。
閉店の背景を正確に検証するには、各運営会社に対して、売り上げやレンタル会員数の推移、契約更新の有無、近隣店舗への統合などを確認する必要がある。
5.TSUTAYA自体が「レンタル店」から業態転換している
一方、TSUTAYAブランドそのものが消滅に向かっているわけではない。
カルチュア・コンビニエンス・クラブは、蔦屋書店や「SHARE LOUNGE」、カフェ、コワーキングスペースなどを組み合わせた滞在型店舗を展開している。公式店舗サイトでも、従来のレンタル・販売に加えて、ラウンジや生活提案型書店などを打ち出している。
つまり、全国で進んでいるのは「TSUTAYAの一律撤退」というより、レンタル中心の店舗網を縮小し、利益を見込める立地や新しい業態へ資源を移す再編と見る方が実態に近い。
問題は、新業態が大都市や集客力のある商業施設に集中しやすく、地方都市では従来型店舗の閉店だけが先行する可能性があることだ。
29年営業した店舗の閉店が地域に残す空白
袋井国本店は29年、三島店は17年にわたり営業してきた。
長年続いたTSUTAYAは、単にDVDを借りたり本を買ったりする場所ではなかった。新作を眺める、店員の推薦を見る、偶然知らない作品に出会うといった「選ぶ時間」も提供してきた。
動画配信や通販では、過去の利用履歴を基に作品や商品が推薦される。一方、実店舗では、棚を歩くことで利用者の好みから外れた作品に触れられる。
閉店によって失われるのはレンタル機能だけではなく、地域における文化との接点でもある。
特に車を運転しない高齢者や、オンライン決済を利用しない人にとって、近隣の実店舗がなくなる影響は小さくない。
「配信があるから仕方ない」だけで終わらせてよいのか
店舗の利用者が減少すれば、閉店は民間企業として避けにくい判断となる。しかし、地域書店やレンタル店の減少を、個人の消費行動だけの問題として片付けることには疑問も残る。
文化施設が少ない地域では、書店が情報発信や交流の場を担ってきた。店舗が閉店した後、同じ地域に新たな書店や文化拠点が生まれるとは限らない。
一方で、利用者が実店舗の必要性を感じながら、購入やレンタルはネットだけで済ませるという矛盾もある。地域の店を残すには、事業者の業態転換だけでなく、消費者が日常的に利用することも必要になる。
今回の閉店で確認すべきポイント
現段階では、県内5店舗それぞれの具体的な閉店理由は明らかになっていない。
今後は、次の点を運営会社やTSUTAYA本部に確認する必要がある。
- 県内店舗数は直近5年間で何店減ったのか
- 各店舗の運営会社はどこか
- レンタル、書籍、物販のうち何が最も減少したのか
- 閉店店舗の会員数や売り上げはどのように推移したのか
- 賃貸借契約や建物の老朽化は閉店判断に影響したのか
- 従業員の雇用は維持されるのか
- 閉店後の最寄り店舗はどこになるのか
- 静岡県内で新業態への転換や新規出店を予定しているのか
これらが明らかになれば、一連の閉店が全国的な業界縮小の一部なのか、静岡県内の運営会社固有の再編なのかを、さらに詳しく検証できる。
まとめ|TSUTAYA閉店は「レンタル文化」の転換点
静岡県内では、約9カ月間で少なくとも5店舗のTSUTAYAが閉店する。
背景には、動画配信や電子書籍、ネット通販の普及に加え、郊外型大型店舗の固定費上昇、人員確保、フランチャイズ運営会社の事業判断など、複数の要因があると考えられる。
ただし、個々の店舗の閉店理由は公表されていない。動画配信の普及だけを原因と断定するのではなく、店舗ごとの収支や契約、運営会社の戦略を確認する必要がある。
29年間続いた袋井国本店の閉店は、レンタル店の減少というだけではない。地域住民が本や映像作品と偶然出会える場所を、今後どのように維持するのかを考える契機にもなりそうだ。
※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。
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週刊TAKAPI編集部:黒木
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