愛知、岐阜、三重、静岡には、地元では誰もが知っているのに、県境を越えると一気に知名度が下がる――そんな「ローカルチェーン」が数多く存在する。
しかし、現在では全国各地に店舗を構えるチェーンの中にも、もともとは一地域の店から始まったブランドは少なくない。
そこで今回は、愛知・岐阜・三重・静岡を中心に展開するローカルチェーンの中から、今後さらに広域へ進出し「全国区」になる可能性を感じさせる店を週刊TAKAPI編集部がピックアップした。
なお、ランキングは現在の店舗数だけではなく、商品力、地域ブランド、他地域でも通用しそうな業態、出店のしやすさなどを総合的に見た編集部の考察であり、各社が全国展開を表明していることを意味するものではない。
1.五味八珍|「浜松餃子×中華ファミレス」は県外でも通用するか
静岡県を代表するローカルチェーンの一つが五味八珍だ。
浜松市に本部を置き、中華ファミリーレストランを展開。公式の会社案内では、静岡県を中心に愛知県、山梨県などにも直営店を持ち、FC店舗も展開している。
さらに五味八珍は単なる飲食店ではない。
自社工場で餃子や麺などを製造し、通信販売や食材販売も手掛ける「製造+外食」の体制を持っている。
全国区候補として注目する理由
最大の武器はやはり「浜松餃子」だろう。
全国的に知名度のあるご当地グルメと、家族で利用できる中華ファミレスという組み合わせは非常に分かりやすい。
ラーメン、チャーハン、餃子など、中華料理は地域による嗜好差も比較的小さく、県外進出との相性も悪くない。
静岡県内で築いた店舗運営力をどこまで他地域へ持ち込めるのか。
「静岡の五味八珍」から「全国の五味八珍」へ進む余地があるチェーンとして注目したい。
2.クックマート|東三河から浜松へ拡大する「スーパー界のローカルスター」
飲食店以外で注目したいのが、クックマートだ。
2026年9月時点の公式店舗一覧では、豊川市4店、豊橋市4店、静岡県湖西市1店、浜松市4店の計13店舗を確認できる。
つまり現在の商圏は、行政上の県境というよりも、東三河から浜松にかけての生活圏に沿うように広がっている。
なぜクックマートが面白いのか
クックマートの特徴は、食品を並べるだけのスーパーではなく、惣菜、寿司、ベーカリー、生鮮品など「店そのものを楽しませる」方向性を強く打ち出していることだ。
全国のスーパー業界では、大手による規模の競争が進む一方、地域スーパーには「その店へ行く理由」が求められている。
その点でクックマートには、
「スーパーなのにブランドそのものにファンが付く」
という面白さがある。
ただし全国展開には物流網、生鮮品の仕入れ、人材確保など外食以上に高いハードルがある。
そのため一気に全国へ行くというより、浜松から静岡県中部、あるいは愛知県西部へ――という隣接商圏への拡大型になるのかが今後の注目点だ。
3.魚魚丸|愛知発「ちょっと良い回転寿司」は全国で戦えるか
愛知県を中心に展開する回転寿司チェーン魚魚丸(ととまる)も有力候補だ。
大手回転寿司チェーンと比べると地域色が強く、寿司の品質や店内調理などを前面に出している。
100円寿司とは違うポジション
回転寿司市場では、大手4社の存在感が極めて大きい。
そこで真正面から低価格競争をするのではなく、
「少し高くても、少し良い寿司を食べたい」
という需要を取れるかがポイントになる。
愛知県内で培ったブランド力を東海圏外まで持っていければ、全国的な知名度を獲得する可能性がある。
4.鐘庵|「桜えびかき揚げ」という圧倒的に分かりやすい武器
静岡発のそばチェーン鐘庵(しょうあん)も興味深い。
看板商品は、静岡らしさを前面に出した桜えびのかき揚げ。
公式サイトではFC加盟店も募集しており、2026年9月には新富士駅内にグループ店舗「SHOWAN EXPRESS」がオープンしている。
全国チェーン化との相性がいい理由
鐘庵の強さは、
「静岡=桜えび」
という説明の必要がほとんどない商品を持っていることだ。
そば・うどんは日常食として利用頻度が高く、専門的なご当地料理より商圏を広げやすい。
「桜えびかき揚げ+そば」という独自ポジションを維持したままFC展開が進めば、一段上の規模へ成長する可能性がある。
5.ラーメン福|名古屋市民のソウルフードは県外へ出るのか
愛知県のラーメン好きなら知っている人も多いラーメン福。
大量のもやしが乗った独特のビジュアルは、一度見れば覚えやすい。
全国には無数のラーメンチェーンがあるが、ラーメン福には「名古屋で長く愛されてきた」というストーリーがある。
一方で、全国展開には味以上に店舗オペレーションや物流、人材確保が重要になる。
むしろ現在の地域密着型だからこそブランド価値が高いとも考えられ、全国展開するかどうか自体が注目ポイントといえる。
6.岐阜タンメン|すでに東海を飛び出し始めた有力候補
「岐阜」という地名そのものをブランドにしているのが岐阜タンメンだ。
最大の特徴は店名の分かりやすさ。
初めて見る人でも、
「岐阜のご当地ラーメンなのか?」
と興味を持ちやすい。
商品もタンメンを軸にしているため専門性が明確で、SNSとの相性も良い。
今後さらに出店地域が広がれば、「地方名を冠した全国チェーン」になる可能性を持つブランドとして注目できる。
7.赤から|「名古屋発」からさらに全国定番へ
愛知発の外食ブランドでは赤からも外せない。
赤から鍋と鶏セセリ焼きを軸に独自カテゴリーを築いてきた。
すでにローカルチェーンの枠を大きく越えているため、「これから全国区になる店」というより、全国区への移行に成功した東海発チェーンの事例として見るべき存在だろう。
最大の強みは「赤から鍋」という商品名そのものがブランド化している点だ。
店舗だけでなく家庭用商品との接点を持てるのも強い。
8.あみやき亭|東海の焼肉チェーンから全国ブランドへ
愛知県春日井市に本社を置くあみやき亭。
こちらも企業規模ではすでに「小さなローカルチェーン」と呼べない存在だ。
焼肉という全国共通の巨大市場を対象にでき、郊外ロードサイドとの相性も良い。
一方で焼肉市場には牛角、焼肉きんぐなど強力な競合が存在する。
東海圏で築いた知名度を全国的なブランド認知へ変えられるかがポイントになる。
9.ステーキのあさくま|老舗・愛知ブランドが再び存在感
愛知発祥の老舗レストランステーキのあさくま。
ステーキだけでなく、コーンスープやサラダバーなどを含めて「あさくま」という体験を作ってきたブランドだ。
新興チェーンとは違い、長い歴史と知名度を持つ。
そのため「新たに全国区になる」というより、老舗ローカルブランドが再成長して全国で存在感を高められるかという観点で注目したい。
10.ぎゅーとら|三重県民に愛されるスーパーは県境を越えるか
三重県のローカルスーパーを語るうえで欠かせないのがぎゅーとらだ。
食品スーパーは飲食チェーンと違い、全国展開することだけが成功ではない。
地元生産者との関係、物流、生鮮食品の調達、地域ごとの食文化などが競争力になるためだ。
だからこそ、ぎゅーとらについては「全国100店舗」というより、三重で圧倒的に強いブランドが隣接県へ商圏を広げるのかという視点で追う方が面白い。
なぜ東海地方から全国チェーンが生まれやすいのか
今回挙げた店を見ていくと、共通する特徴がある。
第一にロードサイド型ビジネスとの相性だ。
愛知、岐阜、三重、静岡では自動車で店舗を利用する生活スタイルが広く定着しており、広い駐車場を備えた郊外店舗の運営ノウハウを蓄積しやすい。
これは他の地方都市へ進出するときにも活用できる。
第二に「地域食」が強い。
浜松餃子、桜えび、名古屋めしなど、全国の消費者へ説明しやすい食文化が存在する。
そして第三が、東京で流行してから地方へ広げるのではなく、地方で支持を固めてから商圏を広げるモデルだ。
これはコメダ珈琲店など東海発ブランドにも見られる成長パターンである。
編集部が特に注目するのは「五味八珍」「クックマート」「鐘庵」
今回の10ブランドの中でも、週刊TAKAPI編集部が今後を追いたいのは五味八珍、クックマート、鐘庵の3ブランドだ。
五味八珍には「浜松餃子」、鐘庵には「桜えびかき揚げ」という県外客にも伝わりやすい商品がある。
一方、クックマートは少し事情が違う。
2026年9月時点で公式サイトに掲載されている13店舗は、豊川・豊橋・湖西・浜松に集中している。
つまり、まだ極めて限定された地域で展開しているにもかかわらず、独特の店舗づくりで存在感を示している。
東三河・遠州という地域で磨いたモデルを別の商圏でも再現できるのか。
ここが成功すれば、東海地方のスーパー業界でかなり面白い存在になる。
「全国展開しない」ことがブランド価値になる店もある
ただし、店舗数が増えれば成功とは限らない。
静岡県の「炭焼きレストランさわやか」のように、出店地域を限定することそのものがブランド価値につながるケースもある。
「あそこへ行かなければ食べられない」。
これは非常に強い観光資源になる。
ローカルチェーンにとって重要なのは、必ずしも47都道府県への進出ではない。
地域で圧倒的なブランドになるのか。それとも地域で培った強さを武器に県境を越えるのか。
東海4県には、その分岐点に立つ企業がまだ数多くありそうだ。
※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。
各種ご相談、情報提供、現地写真・動画、関係者からの証言などをお持ちの方は、メール(info@108takapi.jp)、各種SNSのDM、または公式LINEまでお寄せください。週刊TAKAPI編集部が内容を確認のうえ、取材・報道の参考とさせていただきます。
週刊TAKAPI編集部:黒木
サイト訪問者数

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。