名古屋市立学校の教職員による児童生徒への不適切な関わりを調べた第三者調査で、児童生徒を膝に乗せる過度なスキンシップや、部活動で生徒の同意を得ずに身体に触れる行為、未成年の卒業生を教員の自宅に住まわせる事例などが確認されていたことが分かった。
名古屋市教育委員会に提出された「市立学校園における児童生徒性暴力等に係る調査報告書」によると、調査対象となった23件について、刑法などの法令や児童生徒性暴力等防止法に定める「児童生徒性暴力等」に該当する行為は認められなかった。
一方、第三者委員は複数の行為を「不適切」と評価。さらに、学校側が把握していた事案が教育委員会まで十分に共有されていなかった実態も明らかになった。
約1万4000人に情報提供を呼びかけ、23件を調査
調査の発端となったのは、全国の複数の教員が児童の盗撮画像などをSNSグループで共有していた事件だ。
報告書によると、事件は2025年3月に学校外のわいせつ事件で逮捕された名古屋市立小学校教諭への捜査を通じて発覚。同年6月にはSNSグループの参加者とされた教員らが相次いで逮捕され、名古屋市は同種・類似事案がほかにもないか第三者による調査を実施した。
2025年8月1日から31日まで、市立学校や幼稚園などで働く教員、事務職員、非常勤職員など約1万4000人を対象に情報提供を呼びかけた。
26人から28件の情報が寄せられ、このうち名古屋市立学校の職員から児童生徒への言動に関する23件、行為者として指摘された21人が調査対象となった。
第三者委員は、23件について刑法、児童買春・児童ポルノ処罰法、性的姿態撮影処罰法、ストーカー規制法などに加え、児童生徒性暴力等防止法上の児童生徒性暴力等に該当する行為は認められなかったとしている。
ただ、そこで調査が終わったわけではない。
小中学生を「膝に乗せる」 グルーミングの可能性を指摘した事例も
調査では、児童生徒への過度な身体接触やスキンシップを指摘する情報が6件あり、行為者として5人が指摘された。
確認されたのは、小学校低学年の児童を膝に乗せたり肩車したりする行為のほか、小学校高学年の児童と手をつないで歩く、頭をなでる、膝に乗せる、中学生を膝に乗せるといった行為だった。
第三者委員は、確認できた行為について性的な目的があったとは断定していない。一方、児童生徒が嫌がっていなかった場合であっても、小学校高学年や中学生を膝に乗せる行為について、発達段階などを踏まえ「不適当」と評価した。
さらに、中学校の女子生徒を膝に乗せていた事例では、その行為をした職員が後に別の未成年者へのわいせつ行為で懲戒免職になっていた。
第三者委員は、この事例について、情報提供された当時の行為もチャイルドグルーミング、いわゆる性的な「手なずけ行動」だった可能性が高いと評価している。
ただし、これは今回の調査で当時の行為そのものを「性暴力」と認定したという意味ではない。報告書も、過度な身体接触をする職員が直ちに性的な目的を持っているとはしていない。
問題視したのは、こうした身体接触が学校内で日常化した場合、性的な目的を持った人物によるグルーミングを通常のスキンシップに見せかけやすくなることだった。
第三者委員は、適切な距離を欠いた状態が常態化すれば、児童生徒への性暴力が「行いやすく発覚しにくい土壌」を生むリスクがあるとして、身体接触やスキンシップについて職員個人の感覚だけに任せないルール作りを求めている。
未成年の卒業生を自宅に住まわせる 市教委が懲戒処分
もう一つ、第三者委員が重く見たのが、教員と卒業生との私的な関係だった。
調査では、卒業生が教員のSNSアカウントを見つけてダイレクトメッセージを送り、その後、メッセージアプリなどを使って継続的に連絡を取っていた事例が確認された。
調査を進めると、その教員が未成年だった卒業生を一定期間、自宅に住まわせていたことが判明した。
第三者委員は教員と卒業生双方への聞き取りを行い、警察とも情報を共有した。その結果、卒業生の家庭環境などから教員が保護の必要性を感じていた事案だったとして、児童生徒性暴力等には該当しないと判断した。
しかし、対応そのものについては別の評価をしている。
第三者委員は、児童生徒の健全育成の観点から是認できず、教育公務員としての信用失墜行為として懲戒処分の対象になり得ると判断。最終報告に先立って聞き取り結果を名古屋市教育委員会へ提供した。
報告書によると、その後、市教委が事実確認を行い、実際に懲戒処分を実施した。関係した生徒のプライバシー保護を理由に、報告書では処分日や職員の所属、氏名などは明らかにされていない。
つまり、23件について「児童生徒性暴力等に該当する行為は認められなかった」という調査結果と、職員の行為に問題がなかったという評価は同じではない。
部活動では同意なく身体に触れる事例
部活動をめぐっても5件、4人について情報提供があった。
選手の背中や臀部に触れる、ストレッチやフォームチェックとして身体に触れるほか、大会などの帰りに異性の生徒を自家用車に乗せて駅まで送ったり、生徒を運動用品店や遊びに連れて行ったりする行為が確認された。
第三者委員は、確認できた行為について、わいせつな意図や性的目的があったとまでは判断していない。
一方、中学生へのストレッチに伴う身体接触や、生徒本人の同意を得ずに行われたフォームチェックについては不適切と評価した。
報告書は、部活動には指導者と生徒との上下関係、外部の目が入りにくい閉鎖性、長期間にわたる継続的な関係という特徴があり、これらが性暴力発生のリスク要因になり得るとも指摘している。
校長らが把握した17件、市教委への報告確認は6件
調査では個々の教員の行為だけでなく、学校から教育委員会への情報共有にも課題が浮かんだ。
調査対象23件のうち17件、行為者ベースで15人については、問題となった行為の当時、同僚や保護者などから校長ら管理職に報告されていた。
しかし、その17件のうち、教育委員会事務局への報告が確認できたのは6件、6人だった。
第三者委員は、すべての事案について市教委への報告が必要だったとはしていない。不適切な行為がなかったと確認されたケースなども含まれるためだ。
それでも、児童生徒性暴力等が疑われる事案では初動段階から学校と教育委員会が一体となった対応が必要だとして、情報共有のルール、報告・通報窓口、情報管理、警察などへの通告、通報者保護の仕組みを明確にするよう求めた。
部活動をめぐる事例では、保護者から申立てを受けた当時の校長が市教委に情報を共有せず、後任校長にも経緯や調査結果が分かる資料を引き継いでいなかったとみられるケースも確認された。
女子生徒の排泄介助、退職後に問題集を送ったケースも
このほか、中学校の特別支援学級で、男性職員が女子生徒の排泄介助として下着の交換などに関わっていたケースも確認された。
性的な関心に基づく行為とは評価されなかったものの、第三者委員は、中学生の女子生徒に異性の教員が下着交換などの介助をすることは避けるべきだと指摘。障害のある生徒なら許されるとの判断があったのであれば、人権への配慮を欠くとして不適切と評価した。
また、任期満了後の元常勤講師が特定の女子生徒に問題集などを送った事例も確認された。元講師は在職中、病気休暇中に複数の生徒のタブレットへ不適切なメッセージを送っていたことも確認されている。
一方、元講師とは連絡が取れず、行為の目的までは解明できなかった。
「性善説のみに依存しない」学校へ
報告書が最後に踏み込んだのは、個々の教員の問題を超えた学校組織そのもののあり方だった。
第三者委員は、学校の不祥事防止について、教員の倫理観を前提とした「性善説」に依拠した仕組みが多いと指摘。悪意を持つ人物に対しては脆弱になり得るとして、「性悪説・性弱説」に基づいた制度設計や体制整備の必要性にも言及した。
一方で、教員同士の過度な監視を求めているわけではないとも明記している。
求めたのは、身体接触に関する基準、疑わしい事案が発生した際の対応フロー、情報共有のルール、物理的に不正を起こしにくくする仕組みとともに、職員同士が違和感を率直に指摘できる学校組織をつくることだった。
今回調査された23件から児童生徒性暴力等に該当する行為は認められなかった。その一方で、児童生徒との距離の取り方や部活動での身体接触、私的な関係、学校から教育委員会への情報共有など、性暴力に至る前の段階で見直すべき問題が複数示された形だ。
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担当記者:週刊TAKAPI編集部

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