兵庫県立氷上高校の女子バレーボール部を長年率いてきた教員が、再び停職6カ月の懲戒処分を受けた。
兵庫県教育委員会が9月24日に発表した内容を伝えた関西テレビによると、処分されたのは県立氷上高校の教員で、女子バレー部監督の川釣修嗣氏(59)。2022年から2024年にかけ、実際には購入していない備品について、日頃から取引のあった業者に領収書を発行してもらい、それをもとに生徒会費へ請求し、計102万円を不正に受け取っていたとされる。(FNNプライムオンライン)
川釣氏が停職6カ月となるのは、今年3月に続いて2度目だ。
ただ、今回の問題を「処分された教員が、その後再び不正を行った」と捉えると、時系列を誤る。
今回問題となった行為は2022~2024年。つまり、今年3月の最初の懲戒処分より前に起きていた。
では、3月の処分に至る調査段階で、県教委は今回の生徒会費102万円をめぐる問題を把握していたのか。
把握していたのであれば、なぜ今回別途処分されたのか。
把握していなかったのであれば、前回の調査はどこまで行われていたのか。
今回の問題には、停職6カ月という処分だけでは見えてこない検証すべき点が残されている。
購入していない備品の領収書 生徒会費から計102万円
県教委の発表内容を伝えた関西テレビによると、川釣氏は2022年から2024年にかけて、生徒会費計102万円を不正に受け取っていたとされる。
その方法として報じられているのが領収書だ。
日頃から取引のあった業者に、実際には購入していない備品の領収書を発行してもらい、その領収書をもとに生徒会費へ請求していたという。
県教委は9月24日、川釣氏を停職6カ月の懲戒処分とした。(FNNプライムオンライン)
ここで確認する必要があるのは、「102万円」という金額だけではない。
生徒会費から金銭が支出される際、学校ではどのような確認が行われていたのか。
領収書を確認するのは誰だったのか。
領収書に記載された備品が実際に納入されたかを確認する仕組みはあったのか。
支出に管理職などの決裁が必要だったのか。
年度ごとの会計確認では何を確認していたのか。
現時点で確認できた公表情報だけでは、こうした具体的な支出手続きまでは分からない。
だからこそ、102万円がどのような手続きを経て支出されたのかという点は、今後の検証対象になる。
今年3月にも停職6カ月 別の金銭問題
今回の処分を考えるうえで外せないのが、今年3月の懲戒処分だ。
3月24日の県教委発表を伝えた共同通信によると、川釣氏は2020~2024年度、部員寮に寝泊まりする当番教員に支給される手当について、実際には当番に入らない教員に受給させていた。
さらに虚偽の報告書を提出し、県スポーツ協会から強化指定された部に支給される補助金20万円を不正に受給したとされる。
県教委は川釣氏を停職6カ月としたほか、校長や教頭、過去の管理職を含む計5人についても、指導・監督が不十分だったとして戒告処分とした。(熊日新聞)
重要なのは、この3月の発表時点では、宿日直手当について県教委が具体的な受給額を明らかにしていなかったことだ。
9月24日の報道では「5年間で少なくとも228万円」とされているが、3月24日の共同通信報道では金額非公表とされている。(FNNプライムオンライン)
したがって、3月時点ですでに228万円という金額まで認定・公表されていたかのように扱うのは正確ではない。
二つの問題は同じ時期に存在していた
ここで二つの処分を時系列で並べる。
前回問題になった宿日直手当は2020~2024年度。
今回問題になった生徒会費は2022~2024年。
つまり、二つの問題は一部の期間で重なっている。(FNNプライムオンライン)
そして2026年3月に最初の停職6カ月。
9月24日には別件について、さらに停職6カ月。
関西テレビは、今回の処分について、前回の停職期間が終わるタイミングでの追加処分だったと報じている。(FNNプライムオンライン)
ここから一つの重要な問いが生まれる。
3月の時点で「102万円問題」を把握していたのか
「なぜ前回調査で発見できなかったのか」。
そう断定するのはまだ早い。
県教委が3月の処分時点ですでに今回の生徒会費問題を把握し、別途調査や処分手続きを進めていた可能性が、現在確認できている資料だけでは排除できないからだ。
確認すべきなのは、より基本的な事実である。
県教委は3月24日の処分時点で、生徒会費102万円をめぐる問題を把握していたのか。
把握していたのであれば、なぜ3月の処分と今回の処分が分かれたのか。
把握していなかったのであれば、3月の調査では女子バレー部のどの範囲まで会計を確認したのか。
生徒会費は調査対象だったのか。
過去の領収書、請求書、納品記録などを確認したのか。
取引業者への聞き取りは行ったのか。
今回の問題は、いつ、何をきっかけとして新たに判明したのか。
ここを明らかにしなければ、「停職6カ月を追加した」という結果だけでは問題の全体像は見えてこない。
少なくとも2016年から県代表監督 兵庫県の公式資料にも名前
川釣氏は、一高校の部活動だけで指導してきた人物ではない。
兵庫県が2016年に公表した国民体育大会の資料には、バレーボール少年女子について、
「川釣修嗣 少年女子 監督 県立氷上高等学校(教)」
との記載がある。
同資料では、当時氷上高校3年だった川釣真緒選手と「親子で出場」としても紹介されている。(兵庫県教育委員会)
翌2017年9月21日に兵庫県が公表した「第72回国民体育大会『愛顔つなぐえひめ国体』」の兵庫県選手団名簿でも、川釣氏は少年女子バレーボールの監督、所属は「県立氷上高等学校(教)」と記録されている。(兵庫県教育委員会)
さらにSAGA2024国スポの兵庫県少年女子選手団でも、監督として川釣氏、所属として兵庫県立氷上高等学校が記載されている。(兵庫バレー)
少なくとも複数年にわたり、兵庫県代表の少年女子チームを率いる立場にあったことが公表資料から確認できる。
長年強豪校を率いてきた指導者
2019年の丹波新聞による人物紹介では、当時52歳だった川釣氏について、氷上高校の女子バレー部を「全国屈指の強豪高校を率いて14年」と紹介している。
記事によると、日ノ本学園、福崎高校を経て39歳で氷上高校に赴任。2012年には春の高校バレーで準優勝したとされる。(丹波市)
9月24日の県教委発表を伝えた関西テレビも、現在まで女子バレー部を20年間指導していると報じている。(FNNプライムオンライン)
こうした経歴は、今回の行為そのものを証明する材料ではない。
しかし、学校だけでなく県代表チームでも長年指導的立場を担ってきた人物だったという点は、県教委や学校がどのような監督・会計管理を行っていたのかを考えるうえで無関係ではない。
領収書を発行した業者 県教委はどこまで調査したのか
もう一つ確認が必要なのが、領収書を発行したとされる業者だ。
関西テレビによれば、川釣氏は「日頃から取引があった業者」に、購入していない備品について領収書を発行してもらったとされる。(FNNプライムオンライン)
ならば、確認すべき点がある。
領収書は何回発行されたのか。
業者側はどのような説明をしているのか。
県教委は業者から事情を聴いたのか。
学校と業者との取引関係について調査したのか。
現在も取引は続いているのか。
ただし、現段階で業者の法的責任や関与の程度を判断できる資料は確認できていない。
「共謀」「加担」などと断定するのではなく、県教委がどのような事実を確認したのかを明らかにする必要がある。
「生徒会費」という金の性質
今回問題になった102万円は「生徒会費」とされている。
だからこそ、その資金の性質についても確認が必要だ。
生徒会費の原資は何なのか。
保護者などから集めた金銭が含まれているのか。
女子バレー部に配分された予算だったのか。
102万円は何に使われたのか。
全額が返還されたのか。
学校や生徒側に最終的な金銭的損失は残っているのか。
こうした点についても、現在確認できる報道だけでは全容が分からない。
「102万円」という数字だけではなく、その金がどこから来て、どこへ行ったのかまで確認して初めて、生徒会費をめぐる問題の全体像が見えてくる。
県教委「教育に対する信頼を損なう結果」
関西テレビによると、兵庫県教委は今回の処分について、関係者に迷惑と心配をかけ、教育への信頼を損なう結果になったことを反省しているとの趣旨のコメントを出した。
また、顧問教員として生徒会費を目的や規定に従って厳正に執行すべきだったにもかかわらず、認識と確認が不十分だったことを重く受け止めているとしている。(FNNプライムオンライン)
しかし、今回確認する必要があるのは、処分された教員本人の「認識と確認」だけではない。
学校側にはどのような確認制度があったのか。
そして3月には、管理職を含む5人について指導・監督が不十分だったとして戒告処分まで行われている。(熊日新聞)
その時点で県教委は学校の管理体制をどこまで検証したのか。
ここも今回の処分と切り離せない論点だ。
「二度目の停職」で終わらせていいのか
今回のニュースを表面的に追えば、「女子バレー部監督が今年2度目の停職6カ月」となる。
しかし時系列を並べれば、もう少し複雑だ。
2020~2024年度には、前回問題となった宿日直手当をめぐる行為。
2022~2024年には、今回問題となった生徒会費102万円をめぐる行為。
2026年3月24日、最初の停職6カ月。
そして9月24日、別件についてさらに停職6カ月。
二つの問題が起きた時期は一部重なっている。
だから問われるべきなのは、単に「なぜ同じ教員が2度処分されたのか」ではない。
3月の処分時点で、県教委は今回の生徒会費問題をどこまで把握していたのか。
今回の問題は、いつ、どのような経緯で判明したのか。
生徒会費から102万円が支出される過程で、学校側にはどのようなチェックが存在したのか。
前回、管理職まで処分した県教委は、学校の会計管理についてどこまで調査したのか。
一人の教員を処分することと、不適切な会計処理を防ぐ仕組みを検証することは別の問題である。
週刊TAKAPIは今後、兵庫県教育委員会などに対し、3月時点での把握状況、今回の問題が判明した経緯、生徒会費の支出・決裁方法、102万円の使途と返還状況、領収書を発行した業者への調査、前回調査の範囲、再発防止策などについて確認を進める。
このニュースのポイント
※この記事は2026年9月24日時点で確認できた兵庫県の過去の公表資料、競技団体資料、県教委発表を伝えた報道などを突合して構成しています。9月24日の今回処分については、兵庫県教委公式サイト上で詳細な処分資料を確認でき次第、内容を追加検証します。
担当記者:編集部
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