二次被害・再被害の防止を明記 家事支援、カウンセリング、市営住宅、就労相談にもつなぐ
豊橋市で、犯罪被害に遭った本人や家族、遺族を地域全体で支えるための新たな条例が10月1日に施行される。
豊橋市議会は9月18日、「豊橋市犯罪被害者等支援条例」を原案可決した。議案は総務委員会に付託されていた。市が9月定例会に提出した39件のうち、条例案は6件で、犯罪被害者支援条例は議案第86号として提出された。
今回の条例は、犯罪被害者等基本法を踏まえ、市、市民、事業者、関係機関が連携し、犯罪被害を受けた人が再び平穏な生活を送れるよう支える仕組みを明文化するものだ。
市は、犯罪被害者が事件そのものによる被害だけでなく、その後の経済的困窮や社会的孤立、周囲の言動などによる二次被害に直面する場合があるとして、継続的な支援が必要としている。
「二次被害」「再被害」を防ぐ 市民や事業者にも役割
条例では基本理念として、犯罪被害者等が「二次被害及び再被害」を受けないよう配慮すること、必要な支援を公正かつ迅速に提供すること、市や市民、事業者、関係機関が連携して取り組むことを掲げた。
市には、関係機関との役割分担を踏まえた支援施策を策定・実施する責務を規定した。
市民についても、犯罪被害者支援の必要性への理解を深め、二次被害を生じさせないよう配慮するとともに、被害者を地域社会で孤立させないよう努めることを求めている。
事業者には二次被害や再被害への配慮に加え、雇用する犯罪被害者等の就業への配慮も盛り込まれた。
単に行政サービスを定めるだけでなく、被害後の生活を市民や職場を含む地域社会全体で支える考え方を条例上に位置付けた形だ。
新たに「見舞金制度」 既存支援にもつなぐ
条例で市が実施するとした施策は、「相談・情報の提供」「経済的負担の軽減」「日常生活の支援」「精神的被害の軽減・回復」「居住・就労の支援」「広報・啓発」「人材育成」の7分野に及ぶ。
このうち、今回新たな取り組みとして示されているのが犯罪被害者等への見舞金制度だ。
6月24日に市が総務委員会へ示した資料によると、市は新たに見舞金制度の創設に取り組む一方、既存の福祉サービスなどを活用し、家事代行などの日常生活支援、専門家によるカウンセリング、市営住宅の一時的提供、就労相談などへ犯罪被害者を円滑につなぐとしている。
つまり今回の条例は、一からすべての支援制度を新設するだけではなく、既存制度を犯罪被害者の生活再建につなぐための枠組みを整える側面も持っている。
市はこれまでも総合的な対応窓口を設け、関係部局と連携したワンストップでの相談対応を行ってきたとしており、新条例によってこうした取り組みを条例上の施策として位置付ける。
DVやストーカーも支援対象になり得る
支援対象の考え方も幅広い。
6月の市資料では「犯罪等」について、刑法などにより刑罰を科される行為だけでなく、「犯罪」の構成要件を満たしていない段階のDV、児童虐待、ストーカーなど、心身に有害な影響を及ぼす行為も含むとしている。
ただし、すべての施策が同じ対象範囲になるわけではない。
例えば、新設する見舞金については別に要綱を定め、「人の生命又は身体を害する罪に当たる行為」などを対象とする考え方が示されている。過失による行為などは対象から除くとしており、相談支援などと見舞金では対象となる範囲が異なる。
条例だけを読んで「すべての犯罪被害について見舞金が支給される」と受け取るのは正確ではない。実際の給付要件などは、条例とあわせて定められる制度の詳細を確認する必要がある。
愛知県内ではすでに25市町村が条例制定
豊橋市の資料によると、2026年4月1日時点で、愛知県内では21市3町1村の計25市町村が犯罪被害者支援に関する条例を制定していた。
東三河では豊川市がすでに条例を施行しており、豊橋市も今回これに続く。
国も地方自治体に対して、犯罪被害者支援条例の制定や、関係機関と連携した途切れない支援体制の整備を求めている。
パブリックコメントは「提出0件」
条例制定に先立ち、豊橋市は7月6日から8月5日まで、「豊橋市犯罪被害者等支援条例(仮称)の考え方」についてパブリックコメントを実施した。
市が公表した結果では、提出された意見は0件だった。
ただし、豊橋市のパブリックコメント制度は政策への賛否を問う投票ではなく、市が政策を決定する過程で市民から意見を募る制度だ。そのため、0件という結果だけから条例への市民の賛否や関心の程度を判断することはできない。
一方、条例は市民にも犯罪被害者を地域で孤立させないことなどを求めている。制度を実効性あるものにするには、条例制定後に市がどのように内容や相談窓口を周知するかも重要になる。
条例制定が「支援の入口」になるか
犯罪被害は、事件の捜査や裁判が終われば生活への影響まで終わるとは限らない。
仕事を休まざるを得ない、転居が必要になる、精神的な支援を求める、家事や育児が困難になるなど、被害後の生活にはさまざまな問題が生じ得る。
豊橋市が今回定めた条例は、そうした支援を行政だけの問題とせず、市民や事業者、関係機関を含めて支える基本的な枠組みを示した。
今後焦点となるのは、10月1日の施行後、見舞金制度の具体的な給付額や対象要件、申請方法、既存の福祉制度との連携が実際にどう運用されるのかだ。
条例があるだけで被害者支援が完結するわけではない。必要な人が必要な時に制度へたどり着けるか。施行後の運用まで継続して確認する必要がある。
担当記者:黒木

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