【独自検証】北越高死亡事故から4カ月、それでも続く部活遠征の車両事故 遊学館「500キロを顧問1人」、三重・白山高は6人重軽傷

北越高校の部活動遠征中の死亡事故から4カ月後も車両事故が続き、遊学館高校では顧問1人が約500キロを運転、三重県立白山高校では6人が重軽傷を負った問題を検証する週刊TAKAPIの報道アイキャッチ

高校の部活動遠征で、生徒を乗せた車両の事故が相次いでいる。

2026年5月には、福島県の磐越自動車道で北越高校男子ソフトテニス部のマイクロバスが事故を起こし、17歳の男子生徒が死亡した。バスには部員20人と運転手1人が乗っていた。

この事故を受け、文部科学省は全国の教育委員会や私学担当部局に安全確保を通知。6月には国土交通省とともに、学校教育に伴う移動について、担当者任せにせず組織として管理することや、レンタカー・自家用車を使う際の安全確認などを改めて求めた。文部科学省

それから約4カ月。

9月26日には、石川県の遊学館高校と三重県立白山高校で、いずれも教員が運転する部活動遠征中の車両事故が、わずか約20分違いで発生した。

週刊TAKAPIは、事故報道と国・自治体の公開資料を突き合わせ、学校遠征の移動をめぐる安全管理の現状を検証した。

9月26日午前7時30分 遊学館高のマイクロバスが上信越道で事故

26日午前7時30分ごろ、長野県中野市の上信越自動車道上り線で、遊学館高校男子駅伝競走部の生徒9人を乗せたマイクロバスがガードロープなどに衝突した。

運転していたのは34歳の男性教諭で、部の顧問だった。

16歳の男子生徒1人が左まぶたを切る軽傷を負った。生徒らは横浜市で行われる記録会に向かっており、事故後、全員が出場を取りやめた。

顧問は学校側に「雨でバスの後輪がスリップした」と説明しているという。

ただし、これは顧問本人の説明であり、警察が事故原因として確定したものではない。現場は緩い右カーブで、路面は濡れていたとされ、警察が詳しい原因を調べている。

「500キロを顧問1人」 学校側の400キロ目安を超える計画

その後、北國新聞は、この遠征が顧問1人で片道約500キロを運転する計画だったと報じた。

同紙によると、遊学館高校では運転手1人につき1日最大400キロを目安としていたが、今回は生徒が進路にも関わる記録会への出場を希望していたことなどから、学校側が運行計画を了承したという。

駅伝部では、経費上の事情から顧問1人による運転が常態化していたとも報じられている。

ここは重要な点だ。

「400キロ」は法律や国の全国統一基準ではなく、学校側が設けていた運用上の目安とされる。

したがって、約500キロの計画だったことだけをもって、法令違反や国の基準違反だったと断定することはできない。

一方で、学校自身が設定していた目安を超える運行を、どのような安全確認と判断で認めたのかは検証されるべき点となる。

その20分後、三重・白山高校でも遠征バス事故

遊学館高校の事故から約20分後の午前7時50分ごろ。

三重県津市白山町では、県立白山高校野球部の生徒12人を乗せたマイクロバスが、JR名松線の高架橋手前に設置された高さ制限バーに衝突した。

運転していたのは45歳の男性教員。野球部は滋賀県への遠征に向かう途中だった。

その後の発表では、部員6人が重軽傷を負い、このうち1年生3人が頸椎などを骨折する重傷となった。

現場の高さ制限は2メートル。一方、マイクロバスの車高は2メートル58センチだった。

三重テレビによると、車両は運転していた教員の所有で、学校に公用車として登録されており、遠征への使用について保護者の許可も得ていたという。

つまり、白山高校のケースでは、現時点で「無許可の遠征だった」「学校に知らせず運行した」といった事実は確認されていない。

問題は、車両と道路条件を含めた具体的な安全確認が、実際の運行段階でどこまで機能していたのかという点にある。

三重県は事故の2カ月前から「遠征ルール」を見直していた

白山高校の事故が注目されるもう一つの理由がある。

三重県は北越高校の死亡事故を受け、県内の部活動遠征について実態調査を行っていた。

7月22日の知事会見では、校長への事前報告がなかった部が16%、保護者への周知がなかったケースが4.5%あったことを公表。

レンタカーや外部の人物が運転するケースなどについて既存ルールが十分でないとして、9月末を目標に新たな移動ルールを策定する方針を示していた。

その新ルール策定期限を目前にした9月26日、県立白山高校の遠征車両で事故が起きたことになる。

ただし、今回の白山高校事故が県の既存ルールに違反していたことを示す情報は、現時点では確認されていない。

北越高校死亡事故を受け、国は「無理のない移動」を通知

国もすでに動いていた。

文部科学省は5月19日、北越高校の事故を受けて「部活動の遠征等における安全確保について」を全国へ通知した。

通知では、長距離・長時間の移動が必要な遠征について、実施の必要性そのものを検討し、移動距離や運行時間、運転者の負担を考慮した無理のない移動を計画すること、公共交通機関の利用も含めて移動手段を検討するよう求めた。文部科学省

さらに6月30日には文科省と国交省が対策を取りまとめた。

主な内容は、

学校や交通事業者が担当者任せにせず組織として対応すること、レンタカーや自家用車を使用する場合に安全管理チェックシートを活用すること、運転者を学校が直接手配すること、必要な教職員を適切に配置することなどだった。文部科学省

国が問題視したのは、単に「運転が上手いかどうか」ではない。

誰が遠征計画を承認し、誰が運転者を選び、車両や距離、運行時間を誰が確認するのかという組織的な管理そのものだった。

香川県でも「1日500キロ以上」の運行を確認

長距離移動は遊学館高校だけの問題ではない。

北越高校事故後に香川県教育委員会が県立高校29校を調査したところ、2025年度の部活動などによる移動は1万945件に上った。

法令違反に当たる「白バス」運行は確認されなかった一方、深夜走行や1日500キロ以上の走行など、県教委が改善を必要と判断した事例が確認されている。

この結果からも、高校部活動で長距離を車両移動する運用そのものが、一部地域だけの特殊な問題ではないことが分かる。

「事故が全国的に増加」とまでは言えない

一方、注意が必要な点もある。

週刊TAKAPIが確認した範囲では、「部活動遠征中の車両事故」だけを切り分け、全国で件数が増えていることを示す統一的な時系列統計は確認できなかった。

したがって、

「最近、全国で部活動遠征事故が増加している」

と断定することはできない。

確認できるのは、北越高校の死亡事故以降、国が安全確保を全国通知し、自治体が実態調査やルール整備を進める中でも、9月に教員運転の遠征車両事故が複数発生したという事実だ。

問題は「顧問個人」だけなのか

部活動では、顧問が競技指導だけでなく、生徒の引率、宿泊管理、日程調整、保護者対応など幅広い役割を担う。

そこに長距離運転まで加わる場合、事故を「運転した教員個人のミス」だけで整理してよいのかという問題が残る。

遊学館高校では、学校側が設けていたとされる1日400キロの目安を超え、約500キロを顧問1人で運転する計画だった。

白山高校では、学校に登録された教員所有の車両を使い、保護者の許可も得た遠征で事故が起きた。

両事故の原因は異なる。

だからこそ共通して問われるのは、学校が遠征という「生徒の輸送」をどこまで組織的に管理していたのかという点だ。

編集部まとめ

5月の北越高校死亡事故を受け、文部科学省と国土交通省は、部活動を含む学校移動について「担当者任せにしない」安全管理を全国に求めた。

それから約4カ月後、遊学館高校では顧問が運転する駅伝部のマイクロバスが上信越道で事故を起こし、同じ日の約20分後には三重県立白山高校でも教員が運転する野球部の遠征車両が高さ制限バーに衝突した。

事故の態様はそれぞれ異なり、「部活遠征事故が全国的に増えている」と断定できる統計もない。

しかし、事故後に国や自治体が対策を進めてもなお、教員が生徒の輸送を担う現場で事故が起きている事実は残る。

安全対策を顧問個人の注意だけに委ねるのではなく、距離、車両、運転者、運行計画を誰が確認し、誰が最終的に承認するのか。遠征の安全管理を学校組織としてどう担保するのかが改めて問われている。

週刊TAKAPI 編集部/成田

特記事項

この記事は2026年9月29日時点で確認できた文部科学省、三重県などの公開資料と、複数の公開報道を週刊TAKAPIが突き合わせて検証したものです。

遊学館高校について報じられた「片道約500キロ」「顧問1人で運転」「1日最大400キロを学校側の目安としていた」「顧問1人の運転が常態化していた」とする内容は、北國新聞の学校関係者への取材報道に基づきます。

400キロは全国一律の法的上限ではなく、これを超えたことだけで法令違反と判断することはできません。

白山高校の事故についても、現時点で県の規則違反が確認されたとの情報はありません。

また、全国で部活動遠征中の交通事故が統計的に増加していると判断できる公開データは確認できていないため、本稿では「全国的に増加している」とは表現していません。

Q北越高校の事故はいつ起きましたか?
A2026年5月6日、福島県の磐越自動車道で発生しました。男子ソフトテニス部の生徒20人を乗せたマイクロバスが事故を起こし、17歳の男子生徒1人が死亡しました。
Q遊学館高校の事故では誰が運転していましたか?
A男子駅伝競走部の34歳男性顧問です。生徒9人が乗っており、このうち16歳の男子生徒1人が軽傷を負いました。
Q「500キロを顧問1人」は違法なのですか?
A約500キロという距離だけで違法とは判断できません。報じられている「400キロ」は遊学館高校側の運用上の目安で、国の全国一律の法的上限ではありません。
Q三重・白山高校の事故では何が起きましたか?
A9月26日、野球部員12人を乗せたマイクロバスが、津市内の高さ制限2メートルの高架橋手前にあるバーに衝突しました。車高は2メートル58センチで、部員6人が重軽傷を負いました。
Q部活動遠征の事故は全国的に増えているのですか?
A現時点で、部活動遠征中の交通事故だけを対象に全国的な増加を示す統一統計は確認できていません。一方、北越高校の死亡事故後に国や自治体が安全対策を進める中でも、教員運転による遠征車両事故が発生していることは確認できます。

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