愛知県豊橋市で、企業の後継者不足と事業承継が地域経済の課題になっている。
週刊TAKAPI編集部は2026年9月30日、豊橋市産業部商工業振興課に取材し、市内企業の後継者問題や事業承継相談の現状、市の支援策について聞いた。
取材によると、豊橋市は市内に「後継者がいない企業」が何社あるのかについて、市独自の調査は行っていない。
一方、市や金融機関などの関係機関を含む事業承継相談は令和7年度635件。令和5年度513件、令和6年度422件だった。
相談は製造業を中心に、建設業やサービス業などでも多い印象だという。
市担当者は、経営者の高齢化などを踏まえ、後継者問題について「市としては問題が深いなとは思う」との認識を示した。
豊橋市の後継者不足はどれくらい?市は企業数を「把握していない」
まず気になるのが、豊橋市内には後継者がいない会社が何社あるのかという点だ。
編集部が市に確認したところ、市独自では後継者不在企業について全体的な調査を実施しておらず、具体的な企業数や割合については「把握していない」との回答だった。
業種別の後継者不在率についても、市として独自のデータは持っていないという。
そのため現時点では、豊橋市の行政統計だけから「市内企業の○社に1社が後継者不在」と示すことはできない。
豊橋市の事業承継相談は635件 3年度の推移は?
一方、事業承継について実際にどれほど相談が寄せられているのか。
市担当者から回答があった数字は次の通りだ。
令和5年度:513件
令和6年度:422件
令和7年度:635件
令和6年度の422件から令和7年度の635件へ、213件増加している。
増加率を単純計算すると約50.5%増となる。
ただし、この数字については注意が必要だ。
市担当者によると、これは豊橋市役所だけに寄せられた相談件数ではなく、金融機関など関係機関を含めた総計だという。
また、相談件数と企業数は同じではない。
したがって、「豊橋市に後継者不在企業が635社ある」「635社が廃業危機にある」という意味ではない。
後継者不足が目立つ業種は?「製造業が多い」
では、どのような業種から事業承継の相談が寄せられているのか。
市は業種別の後継者不在企業数について統計調査を行っていないものの、担当者は相談の実感として、
「基本的には製造業が多くて、建設、サービス等が多い印象」
と説明した。
豊橋市には製造業をはじめとする多くの事業者が存在する。
後継者問題によって企業が廃業すれば、その会社だけでなく、従業員の雇用や取引先、地域に蓄積された技術やノウハウなどにも影響が及ぶ可能性がある。
事業承継で最も多い相談は「親族承継」
M&A・第三者承継についての相談も
具体的にはどんな相談が多いのか。
市担当者によると、最も多いのが親族承継についての悩みだという。
続いて、
M&A
第三者承継
に関する相談が多いと説明した。
事業承継というと「経営者の子どもが会社を継ぐ」というイメージも強いが、親族に後継者がいなければ、従業員への承継や第三者への事業・株式の譲渡なども選択肢となる。
後継者問題は単純に「跡継ぎを探す」だけではなくなっている。
「後継者がいないから廃業」は豊橋で何社?市独自の統計なし
編集部ではさらに、後継者不足によって実際に廃業した企業が豊橋市内に何社あるのかを確認した。
市担当者によると、この件数についても市独自では把握していない。
企業の廃業状況などについては、帝国データバンクなど民間調査会社から情報を得る場合があるという。
つまり、
「豊橋市内で年間何社が後継者不足を理由に廃業しているのか」
について、市の統計から直接確認できる数字は現時点ではない。
黒字なのに後継者不足で廃業する企業はある?
経営状態が悪化していないにもかかわらず、後継者が見つからないことで事業を続けられなくなるケースも問題となる。
編集部がこうしたケースについて尋ねると、市担当者は、そのような事実が存在すること自体は認識しているとした。
一方、市への相談としては「あまり相談はない」という。
ここには事業承継問題の難しさも見える。
廃業を決断した事業者が必ず行政へ相談するとは限らないため、行政の相談件数だけでは、地域で起きている廃業の全体像を捉えきれない可能性がある。
