名古屋市で10月1日から、家庭から出された資源・ごみの持ち去り行為に対する罰則規定の運用が始まった。
初日の現場では、資源集積所からアルミ缶を持ち去ろうとした女性を市職員が確認し、勧告書を交付。女性は持ち去ろうとした缶を元に戻し、「もうやらない」などと話した。
名古屋市では、アルミ缶の持ち去りだけでも年間少なくとも5000万円の歳入減が生じていると推計している。市は違反を繰り返すケースに対し、勧告や命令を経て、最終的には50万円以下の罰金を科す仕組みを導入し、対策を強化している。
持ち去り禁止は4月から 10月に罰則規定を施行
名古屋市で資源・ごみの持ち去りそのものが禁止されたのは2026年4月1日。
10月1日からは、違反を繰り返した場合の罰則規定が施行された。
対象はアルミ缶だけではない。
市が収集する家庭ごみや資源、集団回収の対象となる資源など、原則として幅広い品目が持ち去り禁止の対象となる。
一方、地域活動として正式に認められた集団回収などは規制の対象外となる。
初日に女性へ勧告 「もうやらない」
罰則規定が始まった10月1日、市職員はアルミ缶の持ち去りが繰り返されていたとされる集積所で警戒にあたっていた。
そこへ自転車で現れた女性が、集積所に置かれていたアルミ缶の入った袋を持ち去ろうとしたという。
職員が声をかけると、女性は缶を元の場所へ戻した。
市側は翻訳機器なども使って制度を説明し、女性に勧告書を交付した。
女性は「もうやらない」「お金がないから」などと話し、何度も頭を下げたという。
市によると、この女性には以前にも複数回指導した経緯があるとされている。
自転車には大量のアルミ缶 それでも対応できない理由
女性が乗っていた自転車には、今回持ち去ろうとしたものとは別に、大量のアルミ缶が積まれていた。
しかし、市職員がその場で持ち去りを確認したもの以外については、どこから持ってきたのかを裏付ける証拠がない。
そのため、市側は自転車に積まれていたアルミ缶すべてをその場で戻させることはできなかった。
新たに罰則を設けても、実際の運用では「誰が、どこから、何を持ち去ったのか」を現場で確認することが重要になる。
制度の実効性は、違反行為をどこまで確実に把握できるかにも左右される。
車を使った持ち去りも 市職員が追跡
別の現場では、車を使った持ち去り行為への対応も行われた。
市職員が持ち去りの現場を確認したとの情報を受け、別の班が対象車両を追ったが、停止させる前に現場から離れたという。
市は今後、持ち去りが発生しやすい曜日や時間帯、地域を分析し、重点的なパトロールを実施する方針。
罰則の新設だけではなく、現場で違反を確認する体制をどこまで構築できるかが課題となる。
1回で「50万円」ではない
今回の制度で注意が必要なのは、アルミ缶などを1回持ち去っただけで、直ちに50万円の罰金が科されるわけではない点だ。
市は持ち去りを確認した場合、まず勧告を行う。
その後も違反が続けば命令を出し、それでも従わない場合には氏名などの公表や警察への告発を行う。
命令に違反した場合、50万円以下の罰金が科される可能性がある。
つまり、今回初日に女性へ渡されたのは罰金ではなく「勧告書」だ。
アルミ缶だけで年間5000万円以上の歳入減
市が規制を強化した背景には、資源の持ち去りによる経済的な損失がある。
名古屋市は、アルミ缶の持ち去りだけでも、2024年4月から2025年3月までの1年間で少なくとも5000万円の歳入減が発生したと推計している。
市が回収したアルミ缶などは資源として売却され、市の収入になる。
回収前に持ち去られれば、本来市に入るはずだった売却収入が失われる。
金属価格の上昇などを背景に、アルミ缶だけでなく、不燃ごみや粗大ごみなど売却価値のある資源を狙った持ち去りも問題となっている。
古紙だけだった規制を資源・ごみ全般へ
名古屋市では、古紙については以前から持ち去りに対する規制が設けられていた。
今回の制度では対象を拡大し、家庭から出される幅広い資源・ごみを持ち去り禁止の対象とした。
命令違反に対する罰則も強化され、50万円以下の罰金を科すことができる仕組みとなった。
一方、市議会では、持ち去った資源の売却で生活費を得ている生活困窮者などへの対応も論点となっている。
持ち去り対策の実効性と、背景にある生活困窮の問題をどう切り分けて対応するかも今後の課題となる。
編集部まとめ
名古屋市で始まった資源・ごみの持ち去り対策は、単純に「持ち去ったら50万円」という制度ではない。
市職員が違反を確認し、勧告、命令と段階を踏んだ上で、命令違反に対して50万円以下の罰金が科される可能性がある。
初日には女性への勧告が行われた一方、大量のアルミ缶を積んでいても、持ち去りを確認できなければ対応できないという運用上の難しさも浮かんだ。
アルミ缶だけでも年間少なくとも5000万円とされる歳入減を、今回の罰則強化と重点パトロールでどこまで抑えられるのか。
制度が始まった今後は、罰則の重さだけでなく、現場での実効性が問われる。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
この記事は2026年10月5日夕方時点で確認できた名古屋市の条例、公式資料、市議会で示された内容、10月1日の現場対応に関する情報を基に構成しています。
持ち去り行為を1回確認しただけで直ちに50万円の罰金が科される制度ではありません。勧告、命令などの段階を経て、命令に違反した場合に氏名公表や警察への告発、50万円以下の罰金の対象となります。
また、現場で勧告を受けた女性について、国籍を公式に確認できる情報は確認できていないため、本記事では国籍を記載していません。

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