急拡大を続けてきたうなぎ専門チェーン「鰻の成瀬」に、大きな転換期が訪れている。
2026年4月時点では、約400店舗まで拡大した店舗網が約270店舗まで減少したと報じられていた。さらに足元では「164店舗」まで減ったとする情報も出ており、仮に同一基準で比較すれば、半年ほどで約100店舗減った計算になる。
ただし、週刊TAKAPIが確認した範囲では、運営会社が「270店舗から164店舗へ減少した」と公式発表した一次資料は確認できていない。このため、164店舗という数字については、集計時点や対象店舗の定義を含めて注意して見る必要がある。
一方で運営側は縮小一辺倒ではない。2026年7月には新ブランド「二代目ひつまぶしの成瀬」を立ち上げ、東京・板橋と千葉で同時展開。看板商品の「上ひつまぶし 一本」は税込2,690円に設定した。
「鰻の成瀬」は、大量出店からブランド再構築の段階に入ったのか。
約400店まで急拡大した「鰻の成瀬」
「鰻の成瀬」は、「うまい鰻を腹いっぱい!」などを掲げ、従来は高級料理という印象が強かったうなぎを比較的利用しやすい価格帯で提供することで急成長した。
ITmedia ビジネスオンラインは2026年4月、同チェーンについて約400店舗まで急拡大した後、約270店舗まで減少したと報じている。
急成長を支えた大きな要素の一つがフランチャイズ展開だ。
専門店でありながら店舗展開を加速させ、一時は全国各地で「鰻の成瀬」の看板を見る状況となった。
しかし、急拡大の後には閉店やFC撤退の動きも表面化している。
実際にFC事業から撤退した運営会社も
閉店については具体的な事例も確認できる。
神奈川県で「鰻の成瀬」を運営していたレイズ&カンパニーは2026年3月、藤沢店と大和店を3月31日で閉店し、鰻の成瀬のフランチャイズ事業から撤退すると自社サイトで発表した。
つまり、単純な店舗移転やブランド変更だけではなく、FCオーナー側が事業そのものから撤退するケースも実際に起きている。
ただし、個別店舗の閉店理由はそれぞれ異なる可能性があり、「鰻の成瀬全体が不振だから閉店した」と一括して判断することはできない。
なぜうなぎ専門店はリピーター獲得が難しいのか
鰻業態特有の課題もある。
ITmediaが紹介したぐるなびの2024年調査では、うなぎを食べる頻度について最も多かった回答は「半年に1回くらい」38.6%、次いで「年に1回くらい」25.5%だった。
ラーメン、牛丼、ハンバーガーなどと比較すると、うなぎは日常的な外食として利用される頻度が低くなりやすい。
急速に店舗を増やした場合、オープン直後の「一度食べてみたい」という需要を獲得できても、その後にどれだけ再来店につなげられるかが重要になる。
実際、「鰻の成瀬」自身も2026年6月から毎月最後の土曜日を「土曜の丑の日」とする施策を全国店舗で開始。「年に数回」ではなく、月に一度うなぎを食べる習慣を提案している。
これは裏返せば、「特別な日に食べるもの」から「日常的に食べるもの」へ需要を変えていくことが、ブランドにとって重要なテーマになっているとも読み取れる。
閉店が続く中で投入した新業態「二代目ひつまぶしの成瀬」
そして注目されるのが、新たなブランド展開だ。
運営会社は2026年7月7日、「二代目ひつまぶしの成瀬」の板橋店と千葉店を同時オープンした。
新ブランドは、昭和44年創業の老舗うなぎ店「三代目うな東」監修。名古屋で受け継がれてきたひつまぶし文化を全国へ広げるブランドとして打ち出している。
従来の「鰻の成瀬」と同じ看板を増やすのではなく、「ひつまぶし」という別の切り口を前面に出したブランドを展開し始めた点は大きな変化だ。
看板メニューは「上ひつまぶし」2,690円
「二代目ひつまぶしの成瀬」で中心となるのが、上ひつまぶし 一本・税込2,690円だ。
お吸い物と漬物が付き、まずそのまま、次に薬味、さらにだし汁を加えた出汁茶漬けという、ひつまぶしならではの食べ方を楽しめる。
メニューはこのほか、
- 特上ひつまぶし 一本半 3,690円
- 白焼ひつまぶし 一本 2,790円
- 上うな重 一本 2,690円
- 三切丼 1,790円
- 上うな丼 五切 2,590円
などを用意している。
従来のうな重だけでなく、ひつまぶし、白焼、丼、一品料理まで選択肢を広げている。
「店舗数を増やす」から「ブランドを増やす」戦略へ?
ここからは週刊TAKAPI編集部の考察となる。
一連の動きを見ると、「鰻の成瀬」は単純に店舗数を再び増加させるだけではなく、ブランドと利用シーンを細分化する方向へ戦略を変えつつある可能性がある。
すでに「鰻と酒 成瀬」という業態も展開しており、東京・堀切菖蒲園店、田無店などでは、うなぎ料理と酒を組み合わせた店舗を展開している。
さらに「二代目ひつまぶしの成瀬」を投入した。
つまり、
うな重専門店
↓
うなぎ+酒
↓
ひつまぶし専門ブランド
という形で、同じ「うなぎ」という食材から異なる来店目的を作ろうとしているようにも見える。
2026年は「鰻の成瀬 第二章」
運営会社自身も2026年7月、元プロ野球選手の斎藤佑樹氏をCOO(Chief Omotenashi Officer)に起用し、「鰻の成瀬 第二章」のスタートと位置付けている。
また、7月にはグランドメニューも刷新した。
公式サイトでは現在も新商品の投入や新ブランドに関する発表が続いている。
したがって、店舗数の減少だけをもって「鰻の成瀬が終わった」と見るのは早い。
むしろ注目すべきなのは、急速な多店舗展開による成長モデルから、既存店の収益性やリピート需要、新業態を組み合わせたモデルへ転換できるのかという点だろう。
「270店→164店」が事実なら約39%減
仮に「270店舗」と「164店舗」が同じ基準で集計された数字だった場合、減少幅は106店舗。
割合では約39%減となる。
外食チェーンとして無視できない規模だ。
一方、店舗の整理と同時に、新業態の立ち上げやメニュー刷新、「土曜の丑の日」による来店頻度向上策なども進められている。
急拡大で全国区となった「鰻の成瀬」が、今度は「数」ではなく、どのように客を再来店させるかという次の段階へ移れるのか。
税込2,690円の「上ひつまぶし」を看板に据えた「二代目ひつまぶしの成瀬」は、その成否を占う新たな試金石となりそうだ。
編集部注記
本記事の店舗数について、2026年4月時点の「約270店舗」は報道で確認しています。一方、「164店舗」については、週刊TAKAPIが確認した時点で運営会社による同一基準の公式発表を確認できていません。このため「半年で約100店舗減少」という比較については、店舗検索への掲載状況や集計基準の違いが含まれる可能性があります。
編集部考察について
本記事の考察部分は、企業の公式発表、店舗情報、報道、外食市場の動向などを基に週刊TAKAPI編集部が独自に分析したものです。企業の経営判断や個別店舗の閉店理由を断定するものではなく、一部に推測を含みます。最新の店舗情報・価格等は公式発表をご確認ください。
週刊TAKAPI編集部:黒木
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